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人はいつか死ぬ。だから主人公たち、頼むからハーレムエンドになってくれ! ~悪役貴族に転生した俺の全員生存計画~  作者: 水無口 晶紀人
魔法実技大会:5月編

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第5話:新たな趣味、新たな決意、そして…新たな師匠

「悪いな、ホノカ。結局俺の買い物に付き合わせてしまって…」

「ううん、私も欲しい本とか見つかったし大丈夫だよー」


 俺とホノカはあの後王都の本屋や市場で買い物をしていた。

 たいていのものは学園で一通りそろうのだが、食材に関していえば王都の市場の方が品ぞろえがいい。

 そしてこの世界はぱっと見は中世ヨーロッパ風の世界観なのに、食材や調味料は現代寄りのものが多い。

 生活を便利にする魔道具も含めて、思ったより快適に過ごせている。

 買い物は一通り終わり、今は俺が気になった大衆酒場(昼間は食堂を営んでいるらしい。)にいる。


「ロイ君…課外授業の時と、今朝のお礼にはならないと思うけど…

 今回は私が持つよ。」

「…いいのか?」

 こういうのは男が払うものでは?

「お願い…払わせて、私のために。」

 ホノカは真剣な目で言った。俺は気にしてないが、ホノカにとっては譲れないものらしい。


「わかった…」

 せめて安いものを頼んで、ホノカの財布に負担をかけないようにしよう。

 あまり高いものを奢ってもらうと、今度はこっちが罪悪感に押しつぶされる。

 メニューはイラスト付きだったので、値段を見つつよさそうなものを注文した。


「楽しみだな。」

「料理といえば、市場で色々食材とか調味料買ってたけど…

 ロイ君って自分で料理するの?」

 ホノカが俺の買った大きな包みを見て言う。

 だいぶ買い込んだからな。気になるのだろう。


「あぁ、料理は俺の数少ない趣味の一つだ。」

「え!?そうなんだ!?知らなかったよ。」

『僕にそんな趣味ないけど!?』

 ロイに抗議される。たしかに記憶の限りだとゲーム内でロイが料理しているシーンはない。

 ロイ自身がそんなに日常パートで出番ないし、仕方がない。


「あぁ。せっかくの休みが続くし、料理でも作っておこうと思って。」

 この後帰ったら、さっそく仕込んでおきたい。

 この量なら1回作れば、数日は食事の心配をしなくてすむ。


「へぇ、何を作るの?」

 ホノカが興味津々に身を乗り出し聞いてくる。そんなに気になるのだろうか。

 だが、この世界であの料理は通じるのだろうか。

 この世界の主食はパンだし。確証がない以上、答えたくない。

「秘密だ…」

「えぇ!?なんで!?」

『なんで!?』

 すまないホノカ、この世界にあの料理があるかがわからないから答えにくいんだ。

 料理名聞いて何それ?ってなった場合、説明するのが難しい。

 …こういう時は露骨に話題を逸らそう。


「それよりもさ、ホノカさっき本買ってたよな!?何て本買ったんだ?」

 表紙や大きさ的に小説のようだが、どういう本なのかは気になる。

「えっとね、最近流行っているあの小説だよ!」

 ホノカは鞄から買った本を取り出し、俺に見せてくれる。

 男女が手を取り合っているイラストの表紙のようだが、いかんせん俺はまだこの世界の文字が読めない。

 とはいえ、この世界の流行りというのは知っておきたい。


「どんな内容なんだ?」

「ロイ君知らないの!?最近は劇場で演劇もやっているんだよ!?『ロミーとジェリー』」

 ホノカが信じられないものを見たような表情を浮かべている。

『ロミーとジェリー』?

 何その前世で聞いたことありそうなタイトル、喜劇なの?悲劇なの?

 タイトルだけでは内容が想像もつかない。


「すまない、知らない…」

「私もちゃんと読んだことはないんだけど、敵対している家同士の男女が喧嘩しながらもお互い惹かれ合い、そして運命と戦っていく、涙あり笑いありのラブロマンス小説だよ。」

「それだけ聞くとおもしろそうだな。」

「でしょう!?特に女の子の間で人気なんだよ~

 私も友達から教えてもらって、せっかくだから今日から読んでみようって!」

 ホノカは本をぎゅっと抱きしめていた。

 友達からお勧めされたから読んでみようと思うのが、ホノカらしいな。


「やっぱり、好きなのか?そういうラブロマンス。」

「うん!やっぱりこういう困難を越えた愛って憧れちゃうよね。」

 当たり前かもしれないが、ゲームのホノカと一緒だな。男子に告白よくされているし、女子から恋愛相談も絶えないらしい。

 自分でもこういう恋愛してみたいという憧れもあるんだろう。


「ミズキちゃんもこの小説読んだって言ってたよ。」

「そうなのか。」

 ミズキも読書家だから読んでいるのか、恋愛小説も読むなんてなんかかわいいな。

「なんかあまりにも現実離れしすぎた内容でとてもおもしろかったって。」

 前言撤回、感想がかわいくなさすぎる。どういう気持ちで小説読んでいるんだミズキは。


「お待たせしました。」

 ウェイトレスが料理を運んでくる。

 イラスト同様ミートソースのパスタが机に置かれた。

「それでは、いただきます。」

「いただきます。」


 フォークでパスタを巻き取り、口に運ぶ。

 うん、トマトの酸味とひき肉の旨味がよく合っていておいしい。

「騎士団の人たちにこの店をお勧めしてもらったんだけど、おいしいね。」

「そうだったのか。うん、いいお店だ。」

 ホノカは将来騎士団長を目指しているから、そういう情報も入ってきやすいのかもしれない。

 かわいいし話しやすいし、ついホノカに教えたくなる人達が多いのだろう。


 騎士団か…そういう伝手もあるとしたら、やはりホノカに頼むが正解か。

 あまりゲームのヒロインに貸しを作るのはよくないのだろうが、いかんせんこの世界の人脈がない。


 ホノカを利用するようで、少し罪悪感があるが…

「ホノカ、すまない。頼みたいことがあるんだが…」

「いいよ!私にできることなら言ってね!」


 ホノカは目を輝かせ、身を乗り出して俺の話を聞こうとしてくれている。

 本当に人助けとか頼られるのが好きなんだな。

 ここまで乗り気なら甘えさせてもらおう。


「ホノカ、人を紹介してほしいんだ。」

 ホノカが一瞬固まる。

 そして、俺の顔をずっと見つめてきた。

 なぜか妙な緊張感がする。


 俺はこの前の課外授業で痛感してしまった。

 今の俺の実力ではこの先が不安過ぎる。

 全てがゲームのシナリオ通りに動くとは限らないことが分かった以上、自力で強くなっていくしかない。

 闇の精霊の力を頼れば能力自体は問題ないかもしれないが、それでは前世でやりこんだゲームの記憶が飛んでしまうかもしれない。

 結局それでリュウジ達をハーレムルートに導けなくなったら本末転倒である。

 そのため不確かな力に頼らず、実力を身につけるしかない。

 魔力の鍛え方はわからないが、剣術や体術は今から鍛えていけば改善できるかもしれない。

 ホノカにはそのため指導してくれる人を紹介してもらおうということだ。


「えぇと…私じゃダメかな?」

 ホノカは人差し指で髪を巻きながら、複雑そうな表情を浮かべている。

 全然食事が進んでいない。

 確かにホノカも将来騎士になるために、日々努力していることは知っている。

 だが、ホノカはゲームのヒロインだ。リュウジ以外の男子が近づくのはあまりよろしくないだろうし。

 ロイならなおさら近づかないほうがいいはずだ。シナリオの影響度がわからない。

 つまり別の人がいいだろう。


「悪いがホノカ、別の人で頼む。」

「そうなんだ…」

 ホノカが目を伏せている。その仕草を見ただけで罪悪感がふつふつと湧き上がる。

 心を鬼にするしかない。


「どんな女の子がいいのかな?」

 ホノカは悲しそうな表情を浮かべ聞いてきた。フォークを持つ手が震えている。

 でもなんで女の子限定なんだ?別に教えてくれるなら性別は問わないぞ。


「いや男でもいいんだが。強い人がいい。」

「男の子でもいいの!?」

 ホノカが目を丸くしている。そんなに変なのだろうか?


「ダメか…?」

「ダメじゃないんだけど…えっとなんて言えばいいんだろう。

 意外だなと思ってしまって。嫌とかそういうわけじゃないんだけど。複雑というか…」

 ホノカが目を合わせてくれなくなってしまった、やはり無茶な要求だったか。

 そうだよな…ホノカの人柄で築き上げた人間関係だ。

 それを使わせてくれなんて虫がよすぎるか。

 しかし、作中でホノカ以上に顔が広い子はいない。ここはもっとお願いしてみるしかない。


「お願いだホノカ、俺は強くなりたい。学園内に俺に剣を教えてくれる人を紹介してくれないか。」

 俺はホノカに頭を下げた。机に額をくっつけ、誠心誠意。

「えぇと…剣を教えてくれる人?」

「あぁ…頼む、お礼だってする。」

 みんなを幸せにするために、そして俺自身を守るために強くなるしかない。


「そうだったんだ…うん、わかった。ロイ君お願いだから顔を上げて。」

 顔を上げたら、こっちをじっと見つめていた。

 ホノカは一息ついて胸をなでおろす。


「えっとね、まず申し訳ないんだけど…

 学園は魔法使いを育成する学校だから剣を指導できる人がいないんだよ…」

「そうなのか…」

 ゲーム内で、ホノカもロイも剣を普通に使っているから気づかなかった。

 どうしよう…

「学園を卒業して、そのまま士官学校とかに入ればちゃんと学べるんだけど」

 学園卒業は数年後、そんな悠長に待ってはいられない…

 というかゲームのシナリオは、学園での生活しか描かれていない。


「すまない、ホノカ。今覚えたいんだ。なんなら今日からでも。」

 すぐ身につくものではないとわかるが、1日でも早く強くなりたい。

 ホノカはその言葉を聞いて、目を閉じていた。

 真剣に考えてくれているらしい。

 しばらくして目を見開き、そして…

「やっぱり私じゃダメ…かな?多分学園で一、二番目に剣を扱える自信はあるよ。」

 ホノカは悲しげに俺を見つめる。心なしか震えているようにも見える。

 まるで捨てられた子犬のように、俺を見ている。


 ずるいな…こんなの断れるわけがない…

 俺だってホノカが好きだ。できることだったら一緒にいたい。

 ゲームの設定上結ばれるわけにはいかないだけで。

「わかった…これからよろしく頼む。」

「うん、明日の朝から一緒にトレーニングするでいいかな?」

「あぁ…」

 ホノカはすっかり笑顔を浮かべていた。

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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