第4話:ホノカと王都に…
「なぁ一日くらいいいだろ?俺たちと遊ぼうぜ。」
「えっと…」
寮の入り口で男子が女子に話しかけている。
聞こえてきた会話の内容を聞く限り、ナンパか?
こういうのはどこの世界でもあるんだな…
果たして誰がナンパされているのだろうか。
野次馬気分で近づいてみる。
ピンク色の髪、よそ行きの清楚な私服。
ホノカじゃん…やっぱモテるんだな。
「ごめんなさい…今日は用事がありますので。」
「俺たちも付き合うよ!一緒にやった方が楽しいし!」
「学園来たばかりでしょ?俺たちがいい所教えてあげるよ!」
どうやら、学園の先輩方にナンパされているようだ。
しかも結構食い下がっていて、ホノカも困っていそうだ。
『どうするの?助けないの?』
ロイはホノカの心配をしているようだ。
『う~む。』
助けに入るのは簡単だが、それをやっていいかどうかは問題だ。
シナリオに準拠するために手助けするのはいいが、自分から積極的に関わってシナリオが変わるなんてことあったら困るし。
『もう少し様子を見よう。こういうのはリュウジの役割だ。』
俺が介入しなかったらどうなるのかも気になるし。
『このままホノカが連れていかれたら、リュウジとくっつかなくなって困るんじゃないの?
別の未来の可能性が生まれることはないの?』
『それは大丈夫なんじゃないか?』
『そうなの?』
『そこは保証する。』
ホノカは誰にでも優しいが、実はガードはめっちゃ堅い。
あの牙城を崩せるのは、それこそ幼なじみのリュウジくらいじゃないだろうか。
ホノカ自身完璧主義の傾向がある分、気の知れた相手は大事である。
それにしてもこいつらまだナンパを諦めないのか…
あの手この手でホノカと一緒にいようとしている。
ホノカも優しすぎるせいで、突き放しきれないようだ。
「なぁ?ちょっとくらいいいだろ?」
「きゃっ!」
そういってナンパしていた男の一人がホノカの腕をつかむ。
『これはさすがにまずいんじゃない?』
『あぁ…』
俺は助け船を出すことにする。
「先輩達、熱くなりすぎですよ。」
「あぁ?だれだてめぇ?」
「えっと…」
柄が悪い挨拶をされる。
前世だったらビビりちらかしているが、俺は彼らを止めないといけない。
じゃないと、ナンパしている先輩たちが危ない。
この世界身体能力強化の魔法があるせいで、男女のフィジカル差なんてものはほぼない。
そしてホノカは作中で強化系の魔法が得意なのである。
現時点では発展途上ではあるが、そこら辺のモブにはまず負けない。
下手にホノカに危害を加えようとすると、先輩たちの方が病院送りになる。
ホノカにそんなことさせたくないし、犠牲者がでるのも罪悪感がある。
なんとしても穏便にすませたいが、どうすればいいんだこれ。
「あれ?ロイ君?」
「や、やぁ。ホノカ…」
ホノカが俺に気づく。
途端に表情が明るくなる。
「来てくれたんだね!待ってたよ~!」
「え?」
『何か約束してたっけ?』
いや、俺も知らない…
「今日は王都に行く予定だったよね!一緒に行こう!」
急にホノカが言い出した。
「えっと、ホノカさん?」
「楽しみにしてたんだ~!向こうに着いたらなにする!?」
そう言いつつ、めっちゃホノカがこっちを見てウインクを連打していた。
かわいい…
じゃなくて、そういうことか。
「あぁ、ごめん。待たせたな…」
しかたないので、乗ることにする。
「ううん!今来たところだよ!だから先輩達ごめんなさい!」
そう言って俺の背中を押して、寮から連れ出す。
先輩達はぽかんとした顔で、俺達を見ていた。
「いやぁ、助かったよ。あの人達しつこくって。」
そう言って、ホノカがホッとした表情を浮かべる。
「人気者も大変なんだな。」
「そんなんじゃないよー。ああいう人は苦手だし…」
誰にでも優しいというのは大変なんだな。
「また助けられちゃったね…」
「まぁ、これくらいなら大丈夫だ。」
「ありがとう。」
ホノカは申し訳なさそうに笑っていた。
気にすることなんてないのに。
「何事もなくてよかったよ、じゃあ俺はこれで。」
ナンパ男達をホノカから逃がすこともできたし、これで目的は達した。
いいことした気持ちに浸りながら、図書館を目指そう。
「ロイ君、ちょっと待って?」
そういって、俺の服の袖をつまむ。
「どうした?ホノカ?」
「…」
いつも饒舌に色々話してくれるホノカが、無言になる。
何か気に障るようなことをしてしまったのだろうか…
「ロイ君…」
「はい…」
「この後予定あるかな?」
「え…?」
「私とこのまま王都まで一緒に行ってくれないかな?」
予想もしてなかった提案にどきりとしてしまう。
どういうことだ?なんで俺と?
このままホノカと一緒にいてもいいのか?
そういう考えが頭をぐるぐるする。
どうすればいいんだろうか。
…まずはホノカの考えを知らないとダメだな。
「一人じゃダメか…?」
どうして俺と?と聞きたかったが、聞く勇気が持てなかった。
望む答えを聞けたところでどうしようもない。
「このままだと、さっきみたいになりそうだから…」
「あぁ…」
「こういうのロイ君くらいしか頼めないし…」
つまり弾避けということか…
危ない危ないちょっと勘違いしそうになった。
やはりホノカにはリュウジしかいないな。
「それにこの前助けてもらったお礼できてないし、今日させてほしいかな。」
「えっと…ちょっと待ってくれ。」
ロイのために図書館に行く予定自体はあるが、こちらの予定はずらせるし王都の本屋に行くという代替案も使える。
問題はリュウジが今日どこで何をするかだ。
必死に記憶を遡らせる。リュウジは今日なにをするんだ?
『連休も始まったばかりだし、王都に行くのもいいんじゃないかな?せっかく誘ってもらったんだし。』
連休?…そうだ。
連休一日目はゲーム内だと、リュウジはニーナとサラと一緒に王都に行くんだった。
ゲーム的には王都に行けるようになる大事なイベントだが、どうする?
ホノカと一緒に歩いているところをリュウジに見られるのはよろしくないのではないだろうか。
「ダメかな?それとも用事ある?」
返答に困っていると、ホノカが不安そうな表情でこちらを見つめていた。
ずるいだろ…そんな表情されたら断れないじゃないか…
俺はゲーム内のイベントを必死に回想する。
確かリュウジ達はブティックに行って、ケーキ屋でお茶して、軽く露店を見て帰るだったか。
会わないなら大丈夫か?王都は広いし、出会わないというのはそこまで難しくない。
よし…ホノカのために、覚悟を決めよう。
「わかった…行こう…」
「いいの?ありがとう…」
ホノカはホッと胸をなでおろしていた。
そんなに断られるのが嫌だったのか?律儀な子だ。
「ただし、ブティックとケーキ屋と露店の方にはいかない方向で頼む…」
「?よくわからないけど、わかったよ!
それじゃあ、行こう!」
そう言ってホノカは俺の手を引く。
『悪いが、図書館はまた今度で頼む。』
『うん、もちろんいいよ!楽しもう!』
そのまま俺達は魔列車に乗って、王都に向かった。
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