第2話:連休一日目(リュウジ視点)
「お兄ちゃん!そろそろ起きて!」
「んん?」
ニーナの声がする。
どうやら朝のようだ。
だがたしか今日は休日だったはずだ。
ならば結論は一つ。
寝よう…
「おにい~ちゃん!」
ニーナが俺を揺さぶってくる。
「もうちょっとだけ…」
そう言って布団にくるまる。
「もう何時だと思っているの、休みの日だからといって寝てばかりじゃだめだよ。」
そう言って、ニーナが俺をしかりつける。
もはやどっちが兄でどっちが妹かわかったもんじゃない。
「わかったわかった、後5…」
「え?5分?まぁそれくらいならいいけど…」
「5年…」
「長いよ!卒業しちゃうよ!起きてよ~!」
観念して俺は起き上がる。
「おはよう、ニーナ。」
「おはよう、お兄ちゃん。」
果たして俺たちはあと何回このやり取りをできるのだろうか。
ニーナが誰かを好きになることはあるのだろうか。
そして俺はその時祝福できるのだろうか。
「お兄ちゃん?どうしたの?」
ニーナは不思議そうに俺を見ている。
「いや、なんでもない。」
「朝ごはんできているよ、一緒に食べよう。」
「あぁ…」
いつか来る義妹との別れを考えながら、俺はベッドから出た。
ダイニングに行くと、もう既にニーナが料理を用意し座っていた。
おいしそうな匂いが鼻腔をくすぐる。
「それでは、いただきます。」
「いただきます。」
今日のメニューは、スクランブルエッグにサラダにコーンスープにパンか。
食堂でも同じようなものがでてくるが、ニーナの味付けの方が好きだ。
まずはスクランブルエッグから口をつける。
卵の塩コショウがいい塩梅できいているし、バターの味が後味として残る。
うん、やっぱりおいしい。
パンも焼きたてでふんわりしている。
「ごちそうさま。」
しまった、思わず無言で食べきってしまった。
「お粗末様でした。食後のコーヒーはいる?」
「あぁ、よろしく。」
もう準備してあったらしく、ニーナはすぐにコーヒーを持ってきてくれる。
コーヒーも俺好みで淹れてくれている。
「幸せだな…」
よくできた義妹だ。至れり尽くせりである。
「大げさだなぁ…」
そう言いつつも満更ではないようだ。
「お兄ちゃんは今日は予定あるの?」
「うーん、特には?」
課外授業が終わり、5日間の連休が始まったがいかんせん予定はない。
帰省するには、早すぎるしかといって観光地はどこも混むからな。
「学生らしく勉学に励むさ!」
「…そういって、サボってすぐ昼寝したりだらだら遊びにいったりしてるじゃん。」
「…」
「お兄ちゃんはやればできるのに…」
「そうだな…」
魔法の才能だけはあったから、俺は今ここにいる。
ニーナやホノカがいなかったら、どうなっていたかわからないが。
「用事がないなら、お兄ちゃん。王都まで遊びに行こうよ。」
「ん?王都?学内じゃだめなのか?」
国を挙げて魔法使いを養成する学園なせいか、学園内もさながら一種の都市として機能するほどの規模になっている。
だから、たいていのものは揃うはずだが。
「実はサラちゃんと約束してて、王都のスイーツ店に行く予定なんだよね。
あとせっかくだし、服とか見て回ろうかなって。」
「荷物持ちってことか?」
「だめ…かな?」
「しかたないな…」
「ありがとう!お兄ちゃん!」
やれやれという風を取り繕っているが、久しぶりに義妹と遊びに行くのも悪くない。
ニーナはあまり自分からわがままも言わないしな。
叶えてあげるのが義兄の務めだ。
「じゃあ、一時間後寮の前で集合ね!」
「おう!」
ニーナは部屋から出ていった。




