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【第一章完結】人はいつか死ぬ。だから主人公たち、頼むからハーレムエンドになってくれ! ~悪役貴族に転生した俺の全員生存計画~  作者: 水無口 晶紀人
みんなとの出会いと課外授業:4月編

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第31話:ゲームとの矛盾点

「ほう?この私と戦うというのですか。」

「あぁ…」


 ジャドは既に勝ち誇った笑みを浮かべていた。

 実のところ俺にはジャドが何故ここにいるのかわかっていない。

 そもそもハーレムルートにジャドは出てこない。

 ゲーム内のジャドの出番はほぼミズキルートのみで、

 ジャドに襲われたミズキをリュウジが助けることで、二人の仲が深まるという話だ。

 だが、ハーレムルートでは出番が一切ない。

 シナリオのルート分岐もリュウジのグループ選択で分岐し、ミズキルートはリュウジ・ミズキ・ロイのグループを組んだ際に発生する。

 そのせいで今回の課外授業で俺はジャドをマークしていなかった。


 だが現状ジャドは俺の目の前にいるし、ミズキを襲おうとした。

 リュウジをミズキ、ホノカ、ニーナ、サラをハーレムルートに分岐するようにグループを組ませたのにかかわらずだ。

 ゲームで言うなら何かしらの隠しフラグを踏んでしまったのか、知らないうちに俺がシナリオの不整合を発生させてしまった結果なのか。

 それとも何か別の意思が働いているのか。

 だがわかっていることはただ一つーー

 このゲームにおいて、リュウジとヒロイン達がだれも死なない道はハーレムルートしかない。


 俺はこのゲームが大好きだ。

 このゲームのバランスが壊れているとしても。

 各ヒロインの個別ルートに入ると、別のヒロインがロイと付き合い始めてしまうような理不尽な仕様だとしても。

 その上ロイと付き合ったヒロインは死んでしまうような滅茶苦茶なシナリオだとしても。

 そして、ロイはバッドエンド以外のシナリオでは死んでしまう仕様だとしても。

 俺はこのゲームが生前大好きだった。みんなのことが大好きだった。『いつしぬ』の世界が大好きだった。

 だから俺はハーレムルートを諦めるわけにはいかない。


 ジャド、お前も本来は俺が愛すべきキャラの一人なんだろうが申し訳ない…

 リュウジのハーレムルートの糧となってくれ。


『いくぞ、ロイ。』

『わかったよ、もう魔力はないんだから気を付けてね。』

『影装甲装着<<パージオン>>』

 俺は鎧をまとい、ジャドに殴りかかる。

 短期決戦で決着をつけるしかない。


「ドラゴンに追われて満身創痍なのに、よくもまぁそんなに動けますね。」

 ジャドは大剣をふるい、迎撃してくる。

 俺はあえて避けず、左手で大剣を受ける。

 剣を受けた瞬間衝撃は走ったが、鎧で防がれ痛くなかった。

 俺はそのまま影剣でジャドを斬りつける…

 が、ジャドになにもダメージを与えられなかった。

 そのまま腹を蹴られ距離を取られる。


「あなたの剣は人に害するようにはできてないようですねぇ。

 ミズキ様のような魔法使いだったら、斬れば一時的に魔法の使用を阻害できるのでしょうが。

 ほとんど魔力を有していない私には通用しませんよ!」


 なるほどロイの魔法にはそういう弱点があるのか……

『今度から物体も切りつけられるように剣を生成してくれ……』

『そんなこと言っている場合なの!?』


 軽口を叩いてないと恐怖で膝が笑ってしまうんだよ。

 ロイの魔法があってよかった。そうじゃないと恐怖で動けずとっくに死んでいる。

 いや、ロイが常にいてくれたおかげで俺は戦うことができる。


『作戦変更だ…』

 魔法が通じないなら、物理で殴ればいい。

 俺は鎧でジャドの大剣を受けつつ、本能のままに殴る。

 鎧をまとっている分相手も衝撃が強いのだろう、殴るたびにジャドがのけぞる。

 ジャドにとっては理不尽だろうが、このまま鎧の性能を利用してごり押して倒す!


「これで勝てると思うのかね?」

 ジャドは苦し紛れなのか、俺を挑発してきた。

 こちらももう時間がない。

「うるさい!」

 俺は渾身の力を入れて、ジャドを殴り吹き飛ばした。

 魔力を使い過ぎたのか、頭がクラクラするがこれで決着はついただろう。

 あとはこいつをどうするかだ……


「ははは、やはり強いんですねぇ。」

 ジャドは懲りずに起き上がってきた。

 未だに人を殴るのはためらいがあったせいか、気絶するまでにはいたらなかったらしい。


「まだやるのか?実力の差は歴然だと思うが。」

 こちらも限界が近いが、引くわけにはいかない……

「たしかに正面から渡り合ったら、あなたには勝てないことがわかりました。

 ですが…」

 次の瞬間俺はダンプカーに轢かれたような、恐ろしい衝撃が体を襲った。

 体が木に打ち付けられ、鎧が消滅する。

 一体何を今されたんだ…?


『なんで…ドラゴンがまたここに…』

 ロイの言葉で気づく。先ほど巻いたドラゴンがジャドの後ろにいた。

 いやドラゴンがここにいるのはまだいい、なぜ先に俺の方を襲ったんだ?


「何が起こったかわからない、そんな顔をしておりますねぇ。」

 ジャドは憎たらしい笑みを浮かべている。

 そして懐から、何か玉のようなものを取り出した。


「このドラゴンスフィアによって、ドラゴンを操る力を手に入れたんですよ。

 この森にドラゴンがいるのではない、私がドラゴンを呼び寄せたんです。」


 ジャドはドラゴンスフィアを掲げ、ドラゴンがそれに合わせて咆哮する。

 ゲームで明らかに序盤にしては場違いに強いドラゴンがいたが、ジャドが操っていたのか。

 初めて知ったぞ……

 作中でもそんな描写なかったし、設定資料集にも書いてなかった。

 ちゃんとそういう情報書いておいてくれないと、この世界に転生した奴が困るだろ……

 そんなこと言っている場合ではない、状況はとてもまずい。


『ロイ、まだ影装甲は使えるか?』

『やっているんだけど、もう魔力がほとんど残ってないみたいだ……』

『そうか…』

 鎧のおかげで助かったが、今のドラゴンの攻撃で鎧を維持する魔力がなくなったようだ。

 …万事休すだな。


 この状況でジャドとドラゴンを相手にして、生き残れる未来が思いつかない。

「ようやく、そういう表情をするようになったんですねぇ。」

 ニヤニヤ笑いながらジャドがこちらに向かって歩いてくる。

「ドラゴンに殴らせて即死させたらおもしろくないですからね。

 私が直々になぶって殺して差し上げます。」


「…なるほど、ずいぶんいい性格をしているらしいな。」

 俺はジャドを見上げて笑った。

 ジャドからは笑みが消えた。

「その余裕どこまで持ちますかね!」

 そう言ってジャドが俺を蹴る。

 痛みで、一瞬息ができなかった。

 だが耐えないと……


「ほらほらさっきまでの威勢はどうしたんです!」

 本能的な反射で急所はなんとか防いでいるが、防いでいるだけだ。

 このままでは、本当に嬲り殺される。

 痛みのあまり声すら出せなくなってしまった。


「これでは、もう面白くありませんね。」

 ジャドは冷めた目で俺を見下ろす。

『ロイ…』

「死になさい。」

 ジャドは大剣で俺を斬りつけてきた。

 俺はそれをーー

 左腕で受けた。


「なっ!?」

 ジャドが驚きの声を上げる。

 そりゃそうだろう、俺の左腕にだけ鎧がまとわれているのだから。

 残りの魔力を使った部分的な影装甲。チャンスは一回だけだ。

 だから……この一回で決める!


 俺は唯一残しておいた、魔法スクロールを右手に持ち、ジャドの体にあてがう。

「お前!?」

 ジャドの表情が変わる。

 だがもう遅い。

「爆ぜろ…」

 ジャドは爆風で吹き飛んだ。

 初級魔法とはいえ、零距離でぶち当てられたらひとたまりもないだろう。

 だから頼む…これで勝たせてくれ。


 だが、俺の願いはむなしくジャドは立ち上がった。

「なかなかいい手を使いますね。シャッテンスカー。」

 怒りに満ちた表情で俺を睨む。

「もう許さない!絶対に殺してやる!」


 そういってドラゴンスフィアを掲げる。

 出し惜しみなしでドラゴンに俺を殺させるようだ。


『うまくいったようだったけど、ダメだったのかな…』

 ロイは諦めた声を上げた。

『いや……』

「いけ!ドラゴン!その男を殺せ!」

 ドラゴンが咆哮を上げる。

『これでいいんだ。』

 だが――

 ドラゴンは動かなかった。

「なにをしている!早くこの男を殺せ!」

 ジャドが叫ぶ。どうやら気づいてないらしい。


「ジャド、お前が持っているものをよく見てみな?」

「ん?これは…」

「貴様なにをした!?」

 ジャドは狼狽する。


 そう、俺が魔法スクロールで狙ったのはジャドじゃない。

 あいつがもっていたドラゴンスフィアに向けて零距離で魔法を撃った。

 おかげで遠目からでもわかるほど、ヒビが入っていた。

 そしてドラゴンは俺の方ではなく、ジャドの方を見ている。

 魔法アイテムで無理やり拘束していたが、ヒビが入った影響で効果が切れたのであろう。

 ドラゴンは俺の方ではなく、ジャドを睨みつけていた。

 その目には明らかな怒りが宿っている。


「来るな…来るな…いうこと聞け!」

 ドラゴンの巨大な顎が開きーー

 ジャドの悲鳴は一瞬にして聞こえなくなってしまった。


「全く…敵に大事なアイテムは見せびらかすなよな……」

 俺は悪態をついたが、問題は解決したわけじゃない。

 ドラゴンがこちらを睨んでいる。


 さて、ここからどうしようか。

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