第30話:ヒロインとの約束とハーレムルート
「ミズキ…怪我はないか?」
俺はミズキを抱きかかえながら、ジャドから逃げる。
背後に耳を澄ましてみるが、今のところ追ってくる足音は聞こえない。
「えぇ、賭けではありましたが本当に助けが来るとは思いませんでした。」
「あぁ、ミズキが水を上空に2回打ち上げてくれたおかげで、見つけることができた…
よくやってくれた。」
森の中にジャドがいると気づき、ミズキに危険が及ぶかもしれないと思って引き返した。
その判断ができたからこそ間に合った…
「そのせいで、もう魔力が尽きてしまっていて。」
「残りの魔力で、よくあんな合図を思いついたな…」
俺の言葉にミズキは嬉しそうにほほ笑んだ。
「シャッテンスカー君が前にジャドには気をつけろっていう忠告をしてくれていましたから、それに賭ける以外思いつきませんでした。」
この前のちょっとした会話でその結論にいたっていたのか。
分の悪い賭けな気もするが、残る手立てがそれしか残っていなかったのだろう。
その信頼に応えることができたようでなによりだ。
俺はアイテムポーチからポーションを取り出し、ミズキに渡す。
「飲んでおいてくれ、魔力は回復しないだろうが体力はある程度戻るはずだ。」
「ありがとうございます…」
なんとか森の入り口近くまでミズキを連れてこられた。
魔力を使って移動していたおかげか、ジャドはまだ追いついてきていない。
「ミズキ悪いがチェックポイントまでは一人で戻ってくれ。
魔法のスクロールとかポーションも渡しておくから、一人でも何とかなると思う。
ジャドは俺が止める。」
「ですが…」
魔力が尽きている状態で残ってもできることはないが、一人で俺を置いて逃げるのは抵抗があるだろう。
皮肉めいた言葉が多いが、ミズキは素直じゃないだけで優しいからな。
「お願いだミズキ、先生たちを呼んできてくれ。」
俺はミズキの目を見てお願いする。
「シャッテンスカー君は大丈夫ですよね?」
「…あぁ、大丈夫だ。」
正直俺も魔力はだいぶ消耗している。
気だるい感じが止まらない。
「お願いだミズキ、無事に戻って先生たちを呼んできてくれ…。
ジャドの狙いはお前だ、だからこそ近くにいるのはよくない。」
「…わかりました。絶対に死なないでくださいね…」
「もちろんだ、戻ったら魔法談義でもしよう。」
この前話した時、ロイの魔法について知りたがっていたからな。
その時は俺が答えられなかったが、ロイに代わりに説明してもらおう。
「また後で、シャッテンスカー君。」
「あぁ、またな。」
ミズキは走り出そうとする。
いけない、もう一点忘れていた。
「ミズキ。」
俺はミズキを呼び止める。
「なんでしょう。」
「リュウジ達にはジャドの話はしないでくれ。そのままグループに合流してくれ。」
「なぜです?」
「今は言えない、いつか話す。」
「…いつかは話してくれるんですね?」
「あぁ…」
そのいつかが来るのかがわからないが。
「…わかりました、それでは。」
ミズキは俺の言葉を深堀りせずに、走り出す。
そして後ろからまた別の足音が聞こえる。
ジャドがもうやってきたようだ。
「探しましたよ、ロイスロット・シャッテンスカー!
私のミズキはどこです?」
ジャドは邪悪な笑みを浮かべていた。
「さぁな。」
「死にたくなければ、教えなさい。」
俺はジャドと向き合った。
ジャドをこのまま放置したら、いずれリュウジがジャドと戦うことになるだろう。
それだとハーレムルートではなく、ミズキの個別ルートに入ってしまう。
それだけは避けなければならない。
だったらどうするかーー
リュウジがジャドを認知することなく、ここで俺がジャドを倒してしまえばいい。
正直、俺もまともに戦える状態ではない。
それでも、ここで引くわけにはいかない。
「知りたいなら、俺を倒してからにしろ。」
俺はジャドの前に立ちふさがった。




