第25話:課外授業1日目の夜(リュウジ視点)
「リュウジ!来るよ!」
「おう!」
俺達は10体以上のハウンドウルフと対峙していた。
どうやら奴らの巣のど真ん中に来てしまったらしい。
6体のハウンドウルフがこちらに襲いかかってきた!
「ホノカ頼む!」
「シャイニングシールド!」
文字通り光り輝く盾がホノカの左腕に出現する。
あまりにもまぶしいその盾は目を奪われる。
襲いかかってきたハウンドウルフもホノカの方に吸い寄せられていく。
「はぁ!」
盾で攻撃を防ぎつつ、右手のレイピアで一体のハウンドウルフを貫いていく。
「上出来です。ホノカさん。」
「風の精霊よ…」
ホノカが引き付けている間にミズキとサラが後方で魔法を放つ。
一匹また一匹とハウンドウルフが倒れていく。
この3人でだいたいの敵は何とかなるのではないだろうか。
「カグヅチ君!」
ミズキ、サラ、ニーナの後衛側に3匹が回り込んでいた。
ミズキに言われるまで気づかなかった。思いのほか賢いな。
俺は慌てて3人の方に駆け寄るが向こうの方が速い。
「ロックトーテム!」
ニーナが土魔法でハウンドウルフの動きを妨害しつつそこをミズキが水魔法で絡めとる、それでも一匹は突っ込んできている。
ハウンドウルフはサラに飛びかかろうとしていた。
「くそ!」
俺は両手から炎を噴射して、加速し無理やりサラの前に立つ。
左手を思いっきり噛まれる。滅茶苦茶痛いがこの距離なら。
「爆ぜろ!」
右手に炎をまとってハウンドウルフを殴り、燃やす。
これで近くのハウンドウルフはいなくなった、残りは逃げたらしい。
このパーティーで俺の役割は遊撃だ。
ホノカのように硬くはないし、後衛組のように遠距離で魔法を飛ばせない。
自分の体に接していないと炎が出ないが、機動力はあるためこういう役割になっている。
「お兄ちゃん!怪我してる!すぐ治療するね!」
ニーナは俺に駆け寄り、治癒魔法をかけてくれた。
傷口はすぐに癒えていく。
神官を目指しているだけあって、ニーナの回復魔法はピカイチだ。
「…リュウジ、ごめん。」
サラが申し訳なさそうな顔をしている。
「いや、俺がもう少し早く動けていればこんなことにはならなかった。
むしろ危険な目にあわせてすまない。」
「でも…」
「そうですよ、サラさん。
カグヅチ君がわたしより先に気づいて動いていればこんなことにはなってませんでした。
気に病むことはありません。」
「そうだな…」
悔しいが、ミズキの言う通りだ。
「まぁ…わたしももう少しうまくやれば、そもそも近づけさせることもありませんでした。
同じようなことは起こさせません。」
ミズキも思うことがあったのか、そう付け足した。
「まぁまぁ、何事もなかったしよかったよ!」
ホノカは笑顔で言った。
「俺はケガしたんだけど?!」
「すぐ治してもらったんだし、ノーカン!ノーカン!」
ポジティブすぎる考えな気がするが、おかげでパーティーの雰囲気は和んだ。
「気を取り直して進もうか!」
「おう!」「えぇ。」「うん!」「…」
ホノカの掛け声にそれぞれ違った返事をして、俺達は進もうとしたがーー
先ほど逃げたであろうハウンドウルフが戻ってきた。
中には明らかに体が大きく、二本の角が生えた個体もいる。
「あれってヘルハウンドウルフ…」
ニーナの言葉で思い出す。
ハウンドウルフが変異し自然と群れのリーダーとなってしまう個体。
なかなか危険な相手に出会ってしまったらしい。
「なかなか上出来ですね。」
ミズキが皮肉交じりに言う。笑みを浮かべているが、目が笑っていない。
「やるしかねぇか…」
俺は覚悟を決めた。
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「まさかヘルハウンドウルフがでるなんてねー」
「無事に倒せてよかったぜ…」
あの後何とかヘルハウンドウルフも倒して、第3チェックポイントにたどり着いた。
疲れは残っていたが、せっかくなので第4チェックポイントに向かう途中の場所でキャンプをすることにした。
「みんなご飯できたよ~」
ニーナが鍋からよそい始めていた。今日はスープのようだ。
「ニーナちゃんの料理楽しみだなー」
「ホノカさん手伝ってくれてありがとうございます。」
「別に大したことしてないよー、食材とか切っただけだし」
「ミズキは何か手伝ったのか?」
俺は椅子に座って、本を読んでいるミズキに聞いてみた。
「…カグヅチ君、人にはそれぞれ役割というものがあります。必要な時に必要な力を発揮すればいいのです。」
「つまり?」
「今回はわたしは役に立ちません。」
「俺と同様なにもしてないってことか。」
俺も普段家事はニーナに任せっきりで、何もできる自信はない。
ミズキもお嬢様という感じだから同様なのだろう。
「残念ながらそうですね。」
「まぁまぁミズキさんはお水を用意してくれましたし」
そうやってニーナはミズキをフォローする。
「俺も火を起こしたんだけどな…」
「お兄ちゃんは日ごろからもっとちゃんとしたほうがいいよ?」
ミズキと扱いが違ってお兄ちゃんは悲しいぜ。
「サラはずっとニーナと一緒にいたけど、何か手伝ってたのか?」
「…おいしかった。」
どうやら味見係だったらしい。
そうやって言い合っている間に準備が整ったようだ。
「「「いただきまーす。」」」
みんなで食事をするというのはいいものだな。
「ニーナちゃんの料理おいしい!すごいよ!」
「本当ですね…」
ホノカはともかく、ミズキの舌にもあったらしい。
褒められているのは義妹だが、何か自分のことのように誇らしい。
「えへへ、チェックポイントで食材買えたからね。
そこでお野菜と簡単な調味料を買って、お肉は道中で倒したウサギさんを使ってるよ。」
「それでここまでの料理を作れるなんてすばらしいですね。」
ミズキが手放しで褒めている、よほど気に入ったのだろう。
毎日のように食べているが、ニーナの料理はおいしいからな。
「サラちゃんもいっぱい作ったから、食べてね。」
「うん…」
サラは黙々と食べていた。小動物みたいでかわいいな。
ただこうやってみんなで食べるのはとても楽しいが、物足りなくも感じるな。
「ロイ君も一緒にいられたらよかったのにね」
ホノカが俺と同じことを考えていたようだ。
5人までのグループでなかったら、あるいは道中で出会えていれば…
残念ながらロイはここにはいない。
「私達よりもかなり早い時間で第3チェックポイントを通過していたみたいですね。」
どうやらロイと俺達は第3チェックポイントが同じだったらしく、教師に聞いたら通過した時間まで教えてくれた。
ロイは歴代最速クラスのスピードで通過しているらしい。
「シャッテンスカー君の実力を考えれば、不可能ではないと思いますが…
まさかここまで差が開くとは思ってませんでした…」
ミズキですら予想外のスピードでロイは進んでいるらしい。
ミズキとの決闘を観戦したが、それだけであいつの実力のすごさはわかった。
単純な魔法ならミズキも相当だが、おそらくロイは現時点でオリジナルスペルを開発しているのだろう。
あの未知の鎧がそれを象徴していた。
「数年前から急に魔法の研究に熱心になってたからね、努力の成果じゃないかな。」
「ホノカさんは昔からシャッテンスカー君と知り合いだったんですか?」
「うん、リュウジやニーナちゃんだけじゃなくてロイ君も幼なじみかな。」
「そうなんですね、わたしは社交パーティーで何回か挨拶したくらいですから、少しうらやましいですね。」
「昔は誘ったら遊んでくれたんだけどね、数年前から魔法の研究で顔も合わせることがなかったよ。」
俺は社交界デビューが遅れたせいで、ロイと実際会ったのは数回しかないが、
昔はホノカはロイとも仲が良かったらしい。期間的に入れ違いになったのか。
「だからこれからはまた一緒に遊びたいな。」
「…そうですね、シャッテンスカー君の魔法は目を見張るものがありますし。」
あいつはすごい。この数年間で相当努力をしてきたんだろう。
「だからこそ、俺はあいつに勝ちたい。」
「それは今回の課外授業でですか?それとも今後の話ですか?」
「もちろん今回もだ!そしてこれからもな!」
「あはは、熱血だね。リュウジそんなんだっけ。」
たしかに、なぜ俺はロイをここまで意識しているのだろうか。
消去法で後継ぎ候補になった俺と、元から選ばれし貴族のロイ。
魔法の才能にしても現時点で雲泥の差がある。
だが俺にとっては関係ない。ロイとは友人であり良きライバルでありたい。
何か心の奥にある渇望が俺を駆り立てていた。
「何かここから逆転できる方法はないかな?」
「どうだろう。さすがにロイ君が先行しているし、なかなか難しいんじゃないかな。」
「…近道?」
サラがぽつりとつぶやく。
「そんなものあるのかな?」
ニーナの意見ももっともだ、あったとしても見つける時間がない。
「ミズキはなにもないのか?」
ミズキに頼りたくはないが、解決方法を思いつきそうなのもミズキしか思い浮かばない。
「はぁ…ないわけではないのですが…」
「あるの!?さすがミズキちゃん!」
「教えてくれないか、頼む。」
ミズキは考えるそぶりをして、ため息をついた。
「わたしの護衛であるジャドが学園の卒業生ですので、
あらかじめどのルートがいいかは聞かされているんです。もちろん近道も。」
あまりにも唐突な情報過ぎて、一同驚く。
「なんで教えてくれなかったんだよ!?」
「なんでって…フェアじゃないじゃないですか。
わたしが事前に情報を仕入れて、それを利用してシャッテンスカー君に勝ってもおもしろくないでしょう。」
ミズキはあくまで当日得た知識で戦いたかったらしい。
「でもその情報はすごいよ!もしかしたら逆転できるかも!」
ホノカも乗り気だった。
「はぁ…こうなっては仕方ありません…その方法でいきましょう。」
ミズキも諦めたらしい。
「いいのか…?」
「自分で言ったことでしょう?グループのためです。」
ミズキは顔を背けて言った。
「だったら今日は早く寝て、明日に備えようぜ!」
勝利への希望が芽生えた、だったら今は休もう。
「ところでお兄ちゃん…」
「ん?」
ニーナが俺に申し訳なさそうな表情で問いかけてきた。
「今回テントが二張りしか用意できなかったんだけど、どうしよう…」
なんですと…
うちのグループは男1、女4のパーティーだ。
5人を2つに分けるなら必然と2:3になるだろう。
つまり誰かが俺と一緒のテントに寝るということか…
となると…
「ニーナ…俺と一緒に寝ないか?」
「えぇ!?」
いやだって血は繋がっていないとはいえ家族だし。
この歳で一緒に寝たことないけど、家族だし!
それを免罪符にしてしまおう。
「ダメか…?」
「ダメじゃないけど、でも…」
もう一押しで行けるか?よし…
「ダメに決まってるでしょ!」
ホノカに怒られた。
「しかたないですね…こうしましょう…
わたしとホノカさんで1つ、ニーナさんとサラさんで一つ使いましょう
カグヅチ君は野宿でお願いします。」
「さんせーい!」
「さすがに無理があるだろ!?」
テントはモンスター除けの効果がある、さすがに野宿は死の危険が伴い過ぎる。
「冗談ですよ、手狭にはなりますが女性陣で一つ使いましょう。
カグヅチ君は一人さみしい夜をお過ごしください。」
そう言って、女性陣はテントを用意していく。
というか片方のテントちゃんと大きいじゃん…
「ニーナ行こう。」
「うん、お休みお兄ちゃん」
「じゃあまた明日ー寝坊しないようにねー」
そういって女子4人はテントに入っていく。
「はぁ…」
俺も一人でテントに入っていく。快適であるが寂しさも一緒にやってきた。
ロイ、なんでお前はここにいないんだ。




