第23話:課外授業一日目(リュウジ視点)
「よし!チェックポイントについたぞ!」
「お兄ちゃん待ってよー」
俺達のグループは予定通り最初のチェックポイントに着いた。
さっそく教師にスタンプをもらう。
道中のモンスターはサラやミズキの魔法ですぐ倒せたし、順調な滑り出しだ。
「早速次のチェックポイントに行こうぜ!」
せっかくロイと勝負をすることになったんだ、やるなら勝ちたい。
「少し休憩したほうがいいんじゃないかな…
サラちゃんやニーナちゃんは疲れてるだろうし。」
「はぁ…全くせっかちな殿方は嫌われますよ、カグヅチ君?」
ホノカとミズキが呆れた表情で俺を見ていた。
「サラちゃん、はいお水。」
「…ありがとう。」
チェックポイントには色々なものが支給されており、休憩スポットにもなっているようだ。
「だけど、ロイと今勝負しているんだぜ?
だったら早めに移動しておいた方がいいんじゃないか?」
「はぁ…カグヅチ君はもしかしておバカさんですか?」
「え?なんだよ?そうしないとロイに勝てないだろ!?」
ミズキはやれやれという表情を浮かべている。
「まずこの課外授業は明日まで続きます。
最初から飛ばしますと後半強いモンスターに出会った場合、対応できない可能性があります。
大事なのは序盤は抑えて、後半に力を出せるようにペース配分をすることです。
ここで無理やり動くのは下策です。」
「それにこういうフィールドワークは初めての子も多いし、
この課外授業の目的は成績よりも一年生同士の交流がメインなんだと思うな。
こうやってチェックポイントで情報交換もできると思うし。」
二人の意見は一致しているようだった。
なるほど、ミズキもホノカの意見ももっともだ。
俺はいけるだろうが、たしかにニーナやサラはこのペースで動くと明日は力を発揮できないかもしれない。
「そもそもシャッテンスカー君との勝負が成立した時点で、わたし達の目的をほぼ達成してます。
勝っても負けても彼と食事をすることになることは決定しております。
結果など大した問題ではありません。
もちろん…負けるつもりはありませんが。」
「まぁそうだよねー
ロイ君の場合奢られるよりも奢る方が気兼ねなく行けると思うし、あまり高いところだと遠慮されるかもしれないけど…」
「そういうことです。」
うん?どういうことだ?
二人の言っていることがわからなかった。
もしかして、この二人ーー
ロイと戦って勝ちたいんじゃなくて、単純に一緒に飯を食べたかっただけなのか。
「…普通にロイを飯に誘えばよくね?それくらいはしてくれそうだが。」
一応この前学食に誘えば来てくれた。調子悪かったのかすぐいなくなったけど。
「…それだとわたしがシャッテンスカー君と一緒にご飯を食べたいみたいじゃないですか?
それに食事に誘うってことはわたしがシャッテンスカー君に気があるみたいですし…」
「違うのか?」
勝負事で賭けをして実質食事する機会を作るのと、直接食事に誘うのも同じな気がするんだが。
「…彼の魔法には興味がありますが、どちらかというなら彼がわたしに気があるのではないですか。」
「さいですか…」
どう考えても俺にはミズキがロイと一緒にご飯食べたいとしか受け取れなかったが…
本人がそう言うならそう言うことにしておこう。
よくわからないが、本人的には違うみたいだ。
ロイとミズキが会話をしているのを最近よく見るが、ミズキの方から話しかけている気がするんだが…
余計なことは言わないでおこう。
「ホノカは別に誘えばロイだってくるだろ?」
最近ホノカとロイは一緒に登校しているとは聞く。
俺もロイもホノカも学園前から顔なじみだが、ロイも昔はホノカとはよく話していたはずだ。
あくまでホノカからのまた聞きの情報だが。
ホノカが昔からロイを放っておけなくて構い過ぎているとも言えるが…
ここ数年はロイの話も聞いてなかったな。
俺は学園で再会するまではロイとほとんど会ってなかったし。
「どうだろう?ロイ君はもしかしたら断るんじゃないかな。」
「そうか?1番ホノカと話してそうだけどな」
「話しかけたら話してくれるし、嫌われてないとは思うんだけど…
なんか意図的に距離を置かれている気がするんだよね…」
ホノカは少し悲しい表情をしていた。
ホノカが言いたいことは少しわかる、関わらないわけじゃないんだが…
ロイからは何かしら距離を感じる。
「だからいい機会だと思うんだよね、1回一緒にご飯に行ったらそれ以降も行きやすくなると思うし。」
「…そうだな。」
意外としたたかなことを考えているらしい。
ホノカは昔から困っている人を放っておかないタイプだったな…
学園に来る前から俺にもニーナにも色々よくしてくれたが、ロイに対する接し方は何か違う気もする。
さっきの話を聞く限り、困ってなさそうでも声をかけたりしているようだ。
この前の決闘もロイの応援に行こうと誘われたわけだし。
まだわからないがもしかしたらホノカはロイに対して、別の感情を抱いているのかもしれない。
すべてが昔と同じようにはいかないよな…
俺とニーナとホノカで遊んでいたあの頃とは色々変わった。
幼なじみの成長を寂しく思う気持ちもあるが、大事な友人だと思う気持ちは変わらない。
「お兄ちゃん、お待たせ。」
ニーナとサラが戻ってきたようだ。
「もういいのか?」
「うん、ちょっと休んだら大丈夫だよ。」
二人の表情を見るに、もう大丈夫そうではある。
だが、先は長い。念には念を入れて休んでおこう。
「悪い。ちょっとのどかわいてきたから、やっぱもう少し休んでいいか?」
「え?別にいいけど、急がなくて大丈夫なの?」
「まだ最初だからな、いいだろ?」
そう言って俺はホノカとミズキに目配せする。
「えぇ。」「そうだね!」
ホノカもミズキも賛同してくれた。
「ロイとパフェを食べたい…」
調子が戻ってきたのか、サラがぽつりとつぶやく。
「大丈夫、勝ちにいくさ。」
負けるつもりはないが、これからのことを考えると先は長い。
今回の勝負で勝ったとしても負けたとしても、課外授業が終わった後もロイとはまたどこかで競い合える。
俺達はもうしばらく休むことにした。




