第18話:ミズキの決闘から一夜明けて
『昨日はだいぶ魔法を行使したけど、体調は大丈夫そう?』
『あぁ、特にはなにもなかったよ。』
ミズキの決闘から一日が経った。
決闘後のシナリオにはなかったミズキとの会話。
やはりこの世界にきてもミズキはミズキだったな…
可憐で丁寧な物腰だから、皮肉交じりの冗談を欠かせない。
昨日の会話で何やら勘違いさせてしまったが、リュウジと触れ合うことですぐ俺への興味は薄れていくだろう。
「もしかして、シャッテンスカー君。わたしに気でもあるのですか?」
昨日ミズキに言われたことが脳裏に残る。
当たり前だ、好きじゃなければこんなめんどくさいことをしない。
前世ではリュウジを通して全員と恋人になり、どういう未来を歩むのかを俺は見ている。
俺からしたらヒロイン全員元カノみたいなものである。
例えこの世界では俺しかそれを知らないとしても、俺は彼女達のことが大好きだ。
『結局グループはだれとも組んでないみたいだけど、大丈夫なの?
リュウジ達と離れる形になって。』
『大丈夫だ、ここまでは計画通りに進んでいる。』
俺はロイだけでなく自分に言い聞かせる。
ハーレムルートを行くことで、リュウジもヒロイン達も誰も死ぬことはない。
例え大好きな彼女たちがリュウジと結ばれるとしても…
そして最終的にロイがリュウジ達に殺されることになったとしても…
みんなを救うにはこの方法しかない。
「おはよう!ロイ君。」
「おはよう、ホノカ。」
もう何回目だろうか、ホノカと一緒に通学路を歩く。
この世界にきて密かな楽しみの一つになってきている。
ホノカがリュウジと仲良くなったらこういう時間もなくなるのだろうが。
「昨日の決闘すごかったね、あのかっこいい鎧!」
「あぁ、日ごろの努力が実ったようだ。」
『頑張ったのは僕だけどね?』
『…知ってる。』
そもそもロイの魔法がなかったら、勝負にすらならなかったし。
違うな。ロイの魔法があったからこそ勝てただけだ。中身が俺じゃなくても誰でも勝てただろう。
それくらいロイの魔法はすごかったと思う。
「うん、昔から勉強熱心だったもんね!」
ホノカはどこか懐かしそうな目をしていた。
「後は応援のおかげだな、ありがとう。そのおかげで勝てたよ。」
「別になにもしてないよ!?ロイくんがすごかっただけじゃないかな!」
正直応援がどこまで作用していたかはわからないが、ゲームの仕様だとホノカがリュウジを誘って応援してくれたおかげで勝ったともいえる。
「いやそのおかげで勝てたと言っても過言ではない、感謝してる。」
「…そこまでいうなら、今度ご飯でも連れて行ってもらおうかな?」
「え?いやそれは…」
別に奢るのは構わないが、交流が増えるのはよろしくない。
「ダメかな…?」
「…ダメじゃないが、女子と食事はさすがに恥ずかしいし緊張する。」
「ミズキちゃんとは一緒にお茶してたのに?」
昨日の今日でもう知られてるのか…
どうやらこの学園にプライバシーという概念はないのかもしれない。
「…また今度だな。」
ミズキとのお茶について弁明しようとしたけど、適当な言い訳がでてこない。
ここはホノカに折れておこう。
今度がいつとは言ってないし、うやむやにしておけばなんとかなるかもしれないし。
「なんかロイ君変わったね?」
「そうかな?」
実際中身が変わっているからな。
「うん、前より人と関わるようになったし、色んな表情するようになったと思う。」
ホノカは優しく微笑んでいる。
言ってくれることがうれしいが、疑問が一つ…
『どれだけ人と関わらずに生きてきたら、こんな感想になるんだよ?』
『しかたないだろ!?魔法の研究で一生懸命だったんだから!』
仙人でも目指していたのかこいつは。
「昔の方がクールでかっこよかったってのはないか?」
俺の作中のロイのイメージを伝えてみる、まだ方向修正は可能なはずだ。
「え?変なの。今の方が話しやすいと思うけど?」
「そんなもんか?」
「うん、そんなもんだよ。」
そのまま無言でホノカと通学路を歩く。
どうにかして、ホノカを傷つけずかつ仲良くなりすぎない方法はないものだろうか。
そうこうする間に学園についてしまった。
「じゃあ、また後で!」
「あぁ、またな。」
「ロイ君。」
「なんだ?優しいところは昔から変わってないよ。」
ホノカはそういって立ち去って行った。
それはなんというか…
『複雑だな。』
『そうだね。』
俺たちも教室へ向かった。




