第15話:VSミズキ・オーヒュードル(前編)
「よく逃げずにここまで来ましたね、シャッテンスカー君。」
自信満々にミズキが闘技場で笑っている。
それにしてもよく家名の方で呼んで噛まないな、感心する。
「待たせて悪かったな、ただ一つ聞きたいことがあるんだが…
なんでこんなに闘技場満員なんだ?」
観客席は学生でいっぱいだった。
『これ何人いるんだろうね…』
ロイも歓声に気圧されている。
「六大貴族の闇の名家と水の名家の現当主と次期当主の決闘ですから、注目度が高いのでしょう。」
「それともまさか、わたしと二人っきりがよかったと?」
ミズキがいたずらっぽく笑う。一々しぐさがかわいいな。
二人っきりだと言葉巧みに負かされていたかもしれない。
『これ本当に大丈夫?もし無様に負けたら家名にも傷がつきそうなんだけど…』
『気持ちはわかるが、負けることを考えて戦うと勝率下がるぞ?』
あくまで前世でやった対戦ゲーム知識だが、そう言っておく。
「お兄ちゃん、サラちゃんポップコーン買ってきたよ。」
「飲み物もあるからねー!」
「ありがとう…ホノカ、ニーナ。」
「ロイがんばれよー!」
と他の4人は楽しく決闘に観戦にきてた。
リュウジもちゃんと応援してくれている。
この決闘ちゃんと興行化されているのか…
いつの間にか入学早々学園に経済に貢献してたらしい。
そういえば勝手に中世ヨーロッパ風の世界観と思っていたが、ポップコーンはあるのか…
ケーキやプリンとかアイスもあったし今更かもしれないが。
ちょっとこの世界での生活が楽しみになってきた。
「人気者ですね、シャッテンスカー君」
ミズキは心理戦なのか、ただの好奇心なのか、俺に話しかけてくる。
「君ほどではないと思う。」
リュウジ、ホノカ、ニーナ、サラは俺の応援をしに来ているようだが。
他はミズキを応援している学生が多い。特に男子から熱狂的な声が聞こえる。
「ありがたいことにここ数日でクラスメイトや上級生の方々から交際の要求が後を絶えません。」
「へぇ、いい人はいたのか?」
ミズキはゲーム開始時点では色恋沙汰には興味がないのは俺は知っている。
「残念ながらあまり興味を惹かれる殿方はおりませんでしたね。」
「それは残念だな。」
「あなたはどうですか?シャッテンスカー君。」
「楽しんでもらえるようがんばるよ。」
俺は見栄を張り不敵な笑みをミズキに向けた
「それでは対戦者両名は名乗りを上げてください。」
審判を務める先生から、そう告げられる。
「オーヒュードル家次期当主ミズキ参ります。」
「シャッテンスカー家当主ロイスロットいきます。」
ちなみにこの名乗りの描写ではあるが、これ以降ゲーム上では見たことない。
「両者正々堂々と勝負をーーーはじめ!」
という言葉と同時に自分の顔の横に何かが飛んで行った。
頬から血が流れている。
「次は外しませんよ?早く構えてください。」
ミズキは自信満々にほくそ笑む。
ゲーム同様自分の能力に圧倒的自信を持っているようだ。
『これ大丈夫なの本当に!?』
『まずいな、普通に怖い…』
おそらく水の弾丸が高速で飛んできたのだろう、当たったらひとたまりもない。
『あんなに自信満々だったのに!?どうすんのさ!?』
『しかたないだろ!この戦闘元はノベルゲームパートだったんだぞ!?急にFPS視点で戦えって言う方が無理があるだろ!?』
『何言っているのかわかんないよ!?』
足ががくがく震える、恐怖で頭が回らない。
正直なところ舐めていた、よく考えたらただの元サラリーマンが太刀打ちできるものじゃない。
それにゲームでも決闘して、どっちが勝ったかくらいな描写しかなかったんだからわかりようもない。
「魔法使わないのですか?そろそろ終わらせますよ。」
俺の心情を見透かしたようにミズキは言う。
「思案中だもう1分待ってくれ。」
「わかりました、このまま終わってもつまらないですし。」
ミズキの性格なら了承してくれるだろうとは思っていたが、なんとかなったな…
相手の能力を引き出させた上で、なおそれを上回る実力で叩き潰す。
希代の水魔法の神童と言われる所以である。
とはいえ、これで時間は稼げた。
『ロイ、あの魔法を使ってくれ…』
『あの魔法って?』
『あの魔法の鎧みたいなやつ!』
『影装甲?たしかにあれなら多少のダメージは抑えられると思うけど、それで勝てるの?』
『まかせろ、俺を誰だと思っている。』
ようは被弾したら、大けがする下手すりゃ死ぬという状況さえクリアすれば問題ない。
このゲームをやりこみ、全キャラクターの能力や使える魔法をすべて頭に入れている俺ならーー
負ける道理なんてない
『影装甲装着<<パージオン>>』
『これならいけるよ!』
さぁ反撃開始だ。




