第11話:人は成長するものである。
「ロイスロット殿、少々お時間よろしいですかぁ?」
放課後一人の小太りの男性生徒に声をかけられる。
それにしても誰だこの人?ゲームでは記憶にないぞ?
「俺になんか用か?」
「しっ、ここでは目立ちまする。少し場所を変えたいのですが、よろしいですかぁ?」
『なんか怪しいね…』
『ロイの知り合いじゃないのか?』
『さすがにしゃべり方が特徴的過ぎて、会ったことあるなら忘れないと思うよ…』
俺の記憶にないということは『いつしぬ』の主要キャラではないし、何のイベントだこれ…
「まぁ、特に用事はないし、話を聞くだけならいいが。」
「うれしいでございますなぁ、さぁ行きましょうぞ。」
謎の男子生徒に連れられ、空き教室へと案内された。
「申し遅れました、ハッセン家のスケーブでございます。以後お見知りおきを。」
「はぁ、よろしく。ところで話ってなんだ?」
「お話が早くて助かります。ロイスロット様にはこちらを…」
スケーブから何枚か紙を渡される、なんか書いてあるが読めない…
「えぇと、なんだこれは…」
「ロイスロット殿にはスリーサイズを書いていただきたいのです。」
「え?俺の?」
まさかこの世界ではクラスメイトのスリーサイズまで教えあうのか。貴族同士服でもプレゼントしあう習慣でもあるのか?
「なんでだよ!」
スケーブからつっこまれる。
「え?」
「すみません、つい本音が…」
喋り方を忘れるくらいツッコミたいことだったようだ。
「えぇとですねぇ、私が知りたいのはホノカさん、ニーナさん、ミズキさん、サラさんのスリーサイズです。
厳密には知りたいのは私ではなく、一部クラスの男子生徒ですが。」
「…そもそもなんでそのメンバーなんだ。」
当たり前だが、ゲーム上ではこんな話なかったはずだ。
「もちろん他の女子の情報も集めておりますが、なにせ先ほどの方々は六大貴族の方ですからねぇ…
さらにとびきりの美人と来たもんです、知りたがる男子もいるでしょう。」
「なるほど、だがホノカやニーナだったら、俺じゃなくてリュウジに頼んだ方が早そうだが。」
「…昼休みにリュウジさんと食事行った際に、ニーナさんのスリーサイズ聞こうとしたら、危ない目にあいまして…」
あぁ、だいぶ思い出してきた。
ゲームだと今日リュウジは昼休みに、他の男子クラスメイトと食堂に行った。
食事中にモブの一人が、そういう質問していたはずだ。
そこでリュウジが怒って、初めて学園でミズキと会話するイベントだったはずだ。
なかなか賑やかですねとか、妹さん思いなんですね等ーーー
遠回しな皮肉を交えるミズキ。
言葉そのまま受け取って、笑顔でお礼を言ってしまうリュウジ。
自分の皮肉に意を介さないリュウジの言動に、ミズキが興味を持つというそういうシナリオだったはずだ。
で、そのリュウジとミズキが話すきっかけを作ったモブが俺の目の前にいると。
「ですので、ロイスロット殿にお願いしたいと思いまして。」
「別に俺も仲がいいわけでもないし、聞き出せるとは思えないが…」
「おやおやおかしいですねぇ?今日はロイスロット殿はホノカさん、ニーナさん、サラさんとお食事をされていたはずですが?」
「え?」
俺は今日リュウジに会わないようにわざと別の第二食堂にいって、スケーブはリュウジと同じ第一食堂にいたはずだ。
なのに何故俺が3人と食事をとったのを知っているんだ?
「ハッセン家は商売で成り上がった身です、私の情報網を舐めないでいただきたいですねぇ。」
俺の心を読んだかのように、スケーブは説明してくる。
「なるほど、それで俺に白羽の矢が立ったと…」
だとしたら、嫌な立ち方だ。
「そういうことですねぇ、できれば協力していただきたいのです。」
「そこまでする義理はないはずだが、それにクラスメイトの男子が知りたがっているってことは、情報は共有されるってことだろ?」
「まぁそうなりますねぇ、実のところ私自身その情報には興味ないのですが…
クラスの男子どもが知りたがっておりますから。」
「興味ないのか?」
「むしろ私が興味あるのはあらゆる情報が手に入ること、そしてその情報を知りたい人に教えることで手に入れる信頼ですねぇ。
学園にいる間はできる商売は限られますが、今は卒業後を見越して先に信頼を得ておきたいのです。」
「そのため、ロイスロット殿には協力してほしいのです。モテない男子たちへの慈善活動とでも思ってくださればと。。」
と言いつつスケーブは下品な笑顔を浮かべている。
「仮に協力するとしても、全員分集まるとは思えないが…」
「でしたら、先ほどのメンバーのうち一人のスリーサイズを私に持ってくださるというのはどうでしょうか?」
「俺へのメリットが何もない気がするが?」
むしろ信頼を失いかねない。
「先ほど言った通り、私は様々な情報を仕入れることができます。
もしかしたらロイスロット殿が欲しい情報を持っていたり、手に入れてくることがあるのかもしれません。」
「それに、ロイスロット殿が教えてくれなくても今月中には身体検査がありますので、その時には全員分のスリーサイズが手に入ります。」
「ん?だとしたら、俺が情報を手に入れる必要はなくないか?」
純粋な疑問を持ったので、スケーブに質問しておく。
「情報は一日でも早く手に入った方がいいのですよ、鮮度と確実性が大事なのです。
しかもロイスロット殿が情報を仕入れてくれるならば、能力としても信頼はおけます。
ビジネスですよロイスロット殿、馴れ合いではなくお互いのための。」
胡散臭い理論をスケーブは力説する。
「まぁ気が向いたらな…」
俺はお茶を濁しておくことにした。
「えぇ、頼むだけなら無料ですから。」
俺は教室を出ることにした。
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『ロイ、スリーサイズってどうやったら教えてくれると思う?』
『いや本当に受けるつもりなの!?本気!?』
翌日の朝通学路でロイと会話しながら登校していた。
正直なところやりこんでいるだけあって、『いつしぬ』のヒロインのスリーサイズの情報は全部頭に入っている。
とはいえ教える義理もないし、他人に教えるのは気が引ける。
『正直悩んでいる…』
『悩むも何も断る一択だと思うけど…』
俺が悩んでいるのはそもそもなんで、プレイヤーたちは彼女たちのスリーサイズを知れたのかということだ。
ゲームだとキャラ設定としてよくあることといえばそうだが、昨日のスケーブの会話を聞く限りおそらく俺たちプレイヤーが彼女たちのスリーサイズを知っているのは、
スケーブが手に入った情報がゲームの設定資料に書かれている状態ということではないだろうか。
つまり俺がこのままゲームで知りえた彼女たちのスリーサイズをスケーブに教えた場合、将来的にスケーブが仕入れる情報を先に手に入れてしまうという一種のパラドックスが発生するのでは?
「おはよー!、ロイ君!」
ホノカが後ろから挨拶してくる。
「おはようホノカ。」
「うん、もうだいぶ桜散ってきたねー」
「そうだな…」
「今日も一緒に登校していい?」
「もちろん。」
特に断る理由がない。
若干の後ろめたさを感じるくらいだ。
「なにかあったの?」
俺の表情から何かを察したようだ。
「あ、いや…」
「私にできることなら言ってね?」
心苦しいがちょっと聞いてみるか。
「ホノカ、誕生日は7月22日だったよな?」
「え?そうだけど、覚えててくれたんだ…うれしい。」
ホノカはうつむいた。
「忘れるわけないだろ。」
「じゃあ、私の誕生日パーティーのことは覚えている?」
え?なにそれ、知らない…ゲームでロイとホノカの過去なんて描写されてない。
思い当たるのはリュウジと一緒に星を見たシーンか?でもそれリュウジとの思い出だしな。
『ロイ、知ってる?』
『うーん、そんな昔のこと覚えてないかな。』
それもそうか、ここは正直にいこう。
「ごめん、覚えてない…」
「そ、そうだよねー 大丈夫だよー」
ホノカは笑いながら顔を背ける。
深く追求してもどうしようもないので本題に入ることにする。
「ところでホノカさん。」
「どうしたの?ロイ君?」
「スリーサイズはいくつくらいなの?」
「え…?」
聞こえなかったのだろうか、ちょっと早口気味に言ってしまったしな。
「スリーサイズ は どれくらいなんだい?」
「聞こえてるよ!?」
ホノカはびっくりしたような表情で言った。
「どうして!?服でもプレゼントしてくれるの!?」
「…まぁそんなところだ。」
ホノカににらまれて、俺は目をそらす。
「ロイ君、女の子にそんなこと聞いちゃだめだよ。気にしている人だっているんだし、セクハラだよ。」
「はい…」
「他の娘には聞いてないよね?」
「ん?まぁホノカにしか聞く予定はないが。」
「ふーん?」
ニーナに聞いても引かれるし、そもそもリュウジが怒るだろうし。
言っては何だがホノカとニーナと比較して、控えめなミズキとサラのスリーサイズ知りたい男子はいなさそう。
となると消去法でホノカに聞くしかない。
「そうなんだ…わかったよ。今回だけだからね?」
覚悟を決めた表情をして、俺の耳元でささやく。
「上から8~~~~~㎝だよ」
ホノカは顔を真っ赤にして言う。
「誰にも言ったらだめだからね?」
「あぁ…」
「ごめん!やっぱり私先に行くね!今日も1日がんばろうね!」
そう言って、ホノカは走って行ってしまった。
『本当に聞き出すなんて最低だね…』
『まぁ収穫はあったんだからよしだ。』
『どういうこと?』
『この世界センチやメートル法を採用しているんだ!』
そういえばこの世界の単位について考えたことがなかったが、スリーサイズと聞いてもしかしたらと思ったが、ちゃんとメートル法が採用されているらしい
『俺はそのためにわざと聞き出したんだよ!他意はない!』
『ふーん、だったらホノカじゃなくて僕に聞けばよかったんじゃない?単位がどうかなんて聞いた方が早いでしょ?
そういう理由をかこつけて、ホノカからそういう情報聞き出したいだけだったんじゃない?』
『…』
速攻で看破された、ちなみに後で確認したところ単位は日本のものとほぼ同じらしい…ゲーム会社が日本だしそれはそうか。
『ちなみにどうするの?その情報売るの?』
『ホノカには誰もいうなって言われたしなぁ…』
『そうだよね、さすがに情報は渡さないよね?』
『いや?嘘の情報を渡す。』
『え!?』
『スケーブは誰かの情報を手に入れたら、紙にスリーサイズを書いてくれって言ったんだぞ?正しいスリーサイズを書かなくてもいいだろ。
というわけで、教えてもらった情報を下方修正して提出する。』
『それでいいのかな…』
こうして、俺が情報を流した半月後に実際の身体測定でホノカのスリーサイズの情報が出回る。
ホノカさんの成長半端ないと男子の中で噂されるがそれはまた別の話。




