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魔法の杖のテスター 〜それは憧れから始まったことなの。魔法使いの彼女への〜  作者: 夜朝
第6章 会えない二人、新しい出会い

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6-24

「しかし……困ったな」


「交渉しづらくなっちゃった?」


「いや。それよりも──リッコちゃんがね。

 そんなに極東に帰りたいかい?

 私の元で魔法使いになる修行は続けたくないかな?」


「やだ! それは続けたいわ。

 ナナカみたいにドアをつないでよ。

 土日だけソイのところに戻ってくるわ」


 簡単に考えているリッコと異なり、ソイの表情は重い。

 彼は首を左右に振ると彼女を真っ直ぐに見据えて告げた。


「本物の魔法使いになるのなら一人前になるまでは兼業はお勧めしないよリッコちゃん。

 私のところで本腰を入れて修練するといい。

 今はまだ私の言っていることが分からないだろうけれど、いずれ私の話を聞いておいてよかったと思う日がくるよ」


「ソイ……」


 しかしリッコも簡単には引き下がらない。

 極東に戻りたいのは何もさぼりたがっているせいではないのだから。

 彼女はソイと同じく真っ直ぐな視線で彼を見上げた。


「あたし、あの業務を途中ですっぽかすのイヤだわ。

 すごくね、面白そうだったの」


「なるほどね……しくじったことにして、君を一旦、帰らせようか。

 本来なら『逃しはしない』と言いたいところだが。

 私のところへ帰ってきてくれるなら、それに越したことはない。

 待つことになっても、いつまででも待てるよ」


「ソイ! ありがと!」


 『いつまででも』と言ってくれた。

 それはこの師弟の契りが本物の証だから。

 感極まったリッコはソイに抱きついて感謝をあらわにするのだった。


 一方ソイのほうはといえば、なかなか強情な弟子に先行きの不安を感じつつも、素直な感謝が微笑ましくて彼女の肩をぽんと叩いたのだった。


 * * *


「ところでミスタージェスタ?

 内密に救い出すって簡単に言ったけれど、相手は魔法使いの中でも最高峰の一人よ?

 常人が何人いても太刀打ちできるものじゃないわ」


 ナナカは杖を持ったまま腕を組んだ。

 渋面を作って否定的な見解を告げる。


 ジェスタは少し口の端を引き上げた。


「だからあなた達を呼んだんだ。ナナカ、オード。

 協力者になってくれるのだろう?

 リッコと(えにし)の深い魔法使い」


「七老人に勝てるかしら……」


「勝つ必要はない。こっそり連れ出してほしいだけだ。

 ──それでも不安なのだろうと思って、こちらからも隠し玉を用意した」


 ジェスタが親指で隣にいる青年を指し示す。

 ハヤタは自分に視線が集中するのを感じて動きを止めた。


「は? 俺?」


「めずらしい火属性なんだろう。

 連れて行くだけの価値はありそうだ。

 リッコのいないところで心配して発火を繰り返すよりも、何かしら行動していたほうが健康的だと思うしな」


「なるほど。利用しても良いのか? ハヤタ」


「オード、答え分かって聞いてんだろ。もちろんYesさ!」


 にかっとうれしそうに笑って握り込んだ指の関節を鳴らすハヤタ。

 赤い光が薄くハヤタの肌にまとわりつく。

 盛り上がり過ぎたようでまた熱が上がってきたのを察知して、彼がリッコ印の護符を握りしめた。

 するとハヤタの目には見えないが、水の青い光が火の赤い光を追いやって打ち消していく。


 それを見てナナカはリッコの腕前に感心するのだった。


「じゃあ……ええと、ハヤタね?

 当日の服はなるべく化学繊維はやめて自然素材のものを着用願えるかしら。

 それと、魔法に慣れてないと転送酔いするかもしれないから、前もって酔い止めの薬を飲んでおいていただける?

 車酔いと同じものと考えていただいて構わないわ」


「注意事項があるもんだな。分かった。準備しとくぜ」


 あごに当てていた手を同じ高さで拳に握ったハヤタは真剣な眼差しで口元だけ笑みを浮かべた。

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― 新着の感想 ―
リッコの一時帰還、ソイは意外にも認めてくれましたね。また戻ってくると信じてのことなのでしょうが……。 一方で、リッコを助け出すために、ナナカ、オード、そしてハヤタも。火属性と熱い気持ちで、ハヤタにも…
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