6-15
リッコは風が右のこめかみを撫でるのを想像した。
すると、本当に風に撫でられるのを感じて驚いて身をすくめた。
風はまず右の頭から頬へ、その後で胸と腹を斜めに触れて、最後に左足を巻いて走り去っていった。
リッコは風を追いかける。
何か唱える言葉が欲しかったが、心の中で自己流の呪文を思い浮かべるにとどめた。
「ああ……力の量は充分だね。
質も素晴らしいよ。
後は使い方だけかな。
それもこれだけ勘が良ければすぐに身につくさ。
心配要らない」
「あたし、できてた?」
「おや、分からなかったのかい?
あんなに安定していたのに」
「あたしいつも分からないの。
精霊が呼べていることも、呼べた精霊が杖に入っていかないことも、全然」
「はは。ちょっと座ってごらん。
ここからは座学の時間だ」
暖炉の前のロッキングチェアを勧められて難色を示すリッコ。
彼女は背もたれについた手で椅子を揺らしながら唇を尖らせた。
「実践の方が好きだわ」
「そら。そのせいで行き詰まっているのだということに気付きたまえ」
「勉強はキライ。どうせ聞いても分からないわよ」
「大丈夫さ。聞いても分からないのは教え方が悪いだけだよ。
私も教師の資格があるわけではないが──君が納得するまで、何時間でも付き合うと誓うよ」
「じゃあまずひとつお願い」




