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半熟のスクランブルエッグが良かったなぁと思ったが、土地が変われば食事も変わるものだ。
何もせず上げ膳据え膳なんてぜいたくなかなかできない。
リッコはありがたくぺろりと平らげた。
ちょっと脂が強かった。
少し胸やけするのを柑橘のジュースで中和して、考えるのはこれからのこと。
「……ソイ。教えて? 手始めに、風の便りの魔法から」
紅茶のカップを持ち上げていたソイは一瞬目を見開いたが、その後、ふふ。と笑ってうなずいた。
それはそれはうれしそうな──彼のことをよく知る執事の目から見ると、彼が魔法使いになってから初めて見せる、心の底から幸せそうな笑顔だった。
* * *
「慣れないうちは集中するために目を閉じたほうが良い。
それから力の流れを意識してごらん」
リッコはソイの前に姿勢を正して立ち、両目を閉じた。
体内を循環する魔力の流れを意識して右のこめかみから右腕、右脚、左脚──そこから左腕に上がるイメージがどうしても上手くいかず、渋面を作って目を開ける。
「力がうまく流れてくれないの」
「リッコちゃん。循環させるのは順序がある。
まず右のこめかみ、右腕、左脚、右脚、左腕、左のこめかみ。
その場合はヘソで交差させる。
ただし、力の循環が必要なのは精霊を体内に入れる際だけなんだ。
それ以外は右のこめかみから左の踵まで一直線でいい。
君に足りないのは理論だけだ。
風に撫でられるようなイメージで試してみてくれ」
イメージトレーニングは何度もやってきたけれど、流す順番が違っていたとは思ってもみなかった。




