6-9
「えっと……」
今リッコは絹百パーセントのガウンだけ羽織って後は素肌だ。
頑張って着替えをするか迷った一瞬の間を受けてソイが答えた。
「すまない。出直すよ。だが少々急ぎだ。二十分くらいで構わないかな」
「分かったわ。ありがとう」
荷物は取り上げられなかったので、一泊分の着替えはあった。
膝下丈のイチョウ色の長袖ワンピースを着込むと、残った時間で髪をとかして薄く化粧をほどこす。
これらも旅行用の小瓶に入っているものを使っていて、あと二回分くらいしか残っていない。
ここへの滞在が長引くと困ることだらけだ。
会社は──ケイオンの開発から手を引くだろうか。本当に?
早く家に帰りたい。
早く極東へ帰って、そしてナナカに会うのだ。
ようやく仲直りできたのに──。
そこまで考えて、また泣いてしまいそうな目元を指先で押さえた。
二回目のノックが聞こえて、彼女は叩かれたドアを開けた。
「何が聞きたいの?」
「君が『風の便り』の魔法を使えるかどうかだ。
非常事態に備えてね」
「その魔法、みんな使わせたがるのね──答えはノーよ。
あたしには使えないわ」
微笑にわずかにかげを落としたソイは小首を傾げて尋ねる。
「風使いとしては残念だな。
手順を教えたら、使ってくれるかい?」




