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Viva la Vida| 男装彼女の素性について  作者: みやつゆ
第07章 護衛任務 山岳冒険編(ヴィクトル編)
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第065話 仕留める * レイモンド村〈リュカ〉

リュカ目線。

物理的な動きを感じる。

人か、獣か。


大切なミネアとの最期の別れをしている時に、無粋なものだ。

一瞬で気持ちが切り替わった。


気配を殺して音に近づくと、遠くから段々こちらに近づいているように草むらを駆ける音がした。

風が走る音ではない。

何の音だ。

更に身構え耳を澄ます。


野生で暮らした期間が長かったため、耳は普通の人より鍛えられいるはず。小さな物音でも的確に物の動きを捉える事がことが出来るのだ。

ロクシアから教わり鍛えられた洞察力。

自然界で、耳や目が利かなければ命取りになるからだ。


地面を蹴る微かな音。この足取りは、肉食獣。

そして、少し重い蹄の音。野生ではない、人が操る馬か。


目を瞑ってその輪郭を想像する。

肉食獣に、追われた人、といったところか。


すぐさまその音の方向に向かった。明かりなど不要だ。もう全て見えるのでランプはその場に置いて音のする方に駆け出した。

やられる前にやり返すくらいでなければ、生きてはいけないのだ。


こんな日に他人が食い殺されるのは寝覚めが悪いし、この肉食獣も足音から察するに重量級だ。

村が襲われるのは、もっとも避けなければならない事態。


走りながら目を凝らす。この周囲の木々の隙間、丘の下、生い茂る麓。

まだ両者の影は何処にも見えない。なので、少しとどまり、音から小さな動きを目で見ているように手繰り寄せる。

あっちの方がからか。


足元に落ちていた頑丈な棒きれを掴み、短剣で先端を尖らせた。

先手を打つため、物音を立てずに自らその方角へ向う。


足を擦るように小走りし、耳を頼りに対象物の動きを計る。

状況を確認するため大きな木に、全身を駆使してよじ登る。

案外、この民族衣装は足に自由が利き、動きやすい。逆にいつもの服よりも勝手がいいようで、今は若干重さのある胸当てをしていない所為か、自由で息もしやすい。

木から木へ軽々移ると、微かに動く二つの生き物を発見し、目を凝らした。


少し拓けた草むらの中に、この地域であまり見かけない大物の肉食獣が喉元を鳴らし、馬を見据えている。

あんなものがこの周辺にいるとは……。あれでは備蓄用の穀物どころか、村人まで丸飲みされそうだ。


暫く黙って状況を見極めた。

一進一退。馬に乗る者は、剣を抜き威嚇しながら馬を操っている。

馬に乗るのは自分と同じ年くらいの女だろうか?

黒くて長い髪に、大きな馬には似合わない痩身。馬を操る技量はなかなかのようだが、剣は不得意なようだ。

馬も村では見たこともないくらい、相当大きなものだが、肉食獣は更にそれの3倍ほどはある。機動力には長けているが、馬から致命傷を与えるほどの攻撃は難しいと思われた。

そのまま見ていてもいずれ、馬の女に勝算はないだろう。とりあえず木から木へ伝い走り、その元へ向った。


息を殺し、状況を推し量る。真下で繰り広げられる生と死の駆け引き。

獣は、馬に乗る者を睨み、息を吸い込んだ。

来る!

後ろ脚が力強く地を蹴り、今にも馬に飛びかからんと肉食獣は両前足を上げた時。


……今か!


先程の棒切れを握りしめ、幹を力強く蹴って、獣の顔面を目掛けて飛び降りた。

「うぉぉぉ!!」

鼻柱を叩き潰す勢いで棒で殴りつけると、肉食獣は悲鳴を上げた。

一分一秒を争うように、馬に乗る者に向って叫んだ。

「長剣を貸せ!!」

馬に乗った者も、唖然としながらも一歩下がりつつ、素早く自分の持っていた剣を投げてくれた。


剣を巧く受け取り、手早く持ち方を変え、地面を強く蹴り、素早く暴れ狂う肉食獣の体に飛び乗った。

すかさず、首の辺りに剣を両手で刺し込むと、この世の物とは思えない断末魔のような悲鳴が森中を駆け巡った。

「ギャアアアァ!!」

暴れながら、血飛沫が舞う。ものすごい力だ。

それが段々と鈍くなるまで振り落とされないよう剣を更に深く回しながら突き刺す。

更に、最期の力を出して暴れる獣に、もう一度剣を引き抜き素早く眉間を刺した。

力尽きた獣が横倒しになる瞬間に獣から飛び下りた。

手の甲で、顔にかかった血を拭きとって血を浴びた服を見て溜息をついた。


「すまん、ミネア……村人の安全には変えられんだろ…」


馬に乗った者は、声を発することなくこっちを見つめていることに気付いた。

事切れたことを確認し剣を獣から抜き取ってシュッと素振りをし血を飛ばしてからその者に差し出した。

「これは返しておく。夜は不用意に出歩かないことだ。二度目はないと思え」

馬の者は、茫然と黙ってそれを受け取って腰に差した。

……とりあえず女の恰好のまま出歩くのもと気が引ける。

まさか人に会うなど思いもよらなかったと来た道を帰ろうとした時。

「……待って…」と、か細い声で呼び止められた。

声からすると女かと思ったが、男か。

「なんだ」

振り返ると青白い顔で呟く。

「あの…助けて頂いて、ありがと…」と告げた瞬間、その人は落馬したのだ。


「………。」


体を揺さぶったが全く動く気配がない。

非常に顔色が悪いが、脈はあるようだ。顔の状態からすると、満足な食事が出来ていないらしい。


遭難したのか。

この場に置いておくと、恐らく食われるだろうな。


……面倒だが、やむを得んな。




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