後日
「びぇっくしょん!!」
シノトは教室で盛大にくしゃみした。
「大丈夫ですか?」
桔梗はそんな彼を心配する。
「大丈夫ですよ」
「健気ですねぇ」
アキトがからかいの交じった物言いで言う。
「何か」
睨みをきかせた目をアキトに向ける。
「いえ何も」」
(おっかねぇ。シノト。お前、尻に敷かれるな)
アキトは友人の将来に苦笑を浮かべてしまうのだった。
そんな友人のことに気づくことなくシノトは昨夜のことを思い出していた。
(生徒会長。やり過ぎだよ)
昨夜。シノトは雪奈に勝利したのは良かったが、雪奈の魔法で起こった冬の季節のために寮に戻った時には風邪気味になってしまったのだ。
支部の清日根はあの後、雪奈が剣警隊に突き出したのだった。氷に閉じ込められた状態のまま。
そして桜蘭屋は、人身売買の実態が暴かれ、店は現在内偵調査の真っ最中だ。そして後ろ盾だった清日根も逮捕された。
新聞ではそういうことになっている。記事には笛吹き狐のことが書かれていたとか、ないとか。
「ハックション!」
「大丈夫ですか?」
「どうしたんだ。シノト」
「夏風邪だと思う」
嘘。原因は生徒会長の雪のせいによる立派な風邪。
「夏だっていうのに運がねえな」
「はは。そうだね」
「ですが、どうして狐空さん。風邪なんてひいたんでしょう」
桔梗の当たり前の疑問。しかし。その言葉にシノトはビクリッ!とした。
「窓開けたまま寝ちゃったんですよ」
乾いた笑みを浮かべて答える。
「もう。気をつけてくださいね」
叱る桔梗。
その絵図を見ていたアキトは。
(なんだこいつら。夫婦か)
どう見てもドジった夫を注意する妻の光景だった。
こいつら。結婚しちまえよ。
アキトは思ってしまった。それほどにシノト達の様子は外部からはそう見えていた。
変わって生徒会室。
「会長。どうしたんですか?」
「ああもう。悔しいー!!」
室内で雪奈の声が響き渡る。
「何がそんなに悔しいんですか?」
「ううう」
言えるわけがない。笛吹き狐と勝負して敗けたのだと。
「絶対に捕まえてやるーーー!!」
今日は一段と雪奈の声が高らかに響き渡るのだった。
はたまた別の教室。
「ふぅ〜ん」
新聞の一面を眺め、彼は面白がっていた。
「どうも。最近は賑やかになってきたよね」
そして、机に立て掛けてある一振りの剣を撫でる。
「お前もそう思わないかい?」
剣へと語り掛けるその声は優しく、しかしどこか鋭さがある。
そして再び新聞に目を落とす。
新聞の一面は笛吹き狐についてだった。
「狐狩りかあ。日本でやる日がくるなんて思ってもみなかったよ」




