先回り
街中の建物の上を颯爽と駆けてゆく。
「さあ。最後の仕上げだ」
目的地に向かっているシノトは気合いを入れる。
「うん?」
目的地に近づいていくにつれ
「この魔力、この匂いは・・・」
シノトの鼻と魔力の気配を察する五感が何かを感じ、嗅いだ。
そしてそれは目的地に着いた瞬間に確信に変わることになる。
「これはすごいな」
シノトの目の前には今の季節とは真逆の雪景色が広がっていた。
といっても雪景色になっているのはその建物の敷地内にある学院の校庭程ある訓練所だけだ。
(一面が雪。これは・・・)
彼はある人を思い浮かべた。
「あなたも同じ〝目的〟だったみたいね」
そしてシノトの想像は的中した。
訓練所の中心。彫刻の如くそびえ立つ氷の塊。そのそばに立つ白銀の髪を持つ彼女。
如月・雪奈がシノトを見ていた。
「はて。同じ目的とは?」
「こいつのことを言っているのよ」
そう言って彼女が後ろにそびえ立つ氷の塊を示す。
氷の塊は透明でガラスのように向こう側が見える程。そんなに見えるために〝それ〟は目立っていた。
「彼は」
「当分はこのまま。ま。懲りたよね。彼も」
二人で氷の中心を見る。
そこには、氷の中に閉じ込めら、身動き一つもできない清日根の姿があった。
「大したことはなかったわ。思っていたよりも。あなたが来ても余裕でやれたでしょうね」
「やはり、あなたが」
「そう!」
笑顔で返答する雪奈。
清日根を倒したのは彼女のようだ。
「これは思う切ったことをなさりましたね。私としては驚きで一杯ですよ」
「あなたは私のことをどう見ているのかしら」
「容姿端麗。剣術、魔法はトップクラス。学院を束ねる生徒会長。」
「随分な好評ね」
「ですが、明るく、おちゃらけたところがたまに傷」
「おちゃらけた、は余計よ!」
ここに来て不機嫌になる。しかしその表情は可愛らしさがあった。
「からかってくれるわね。あなたのような男は初めてだわ」
「初の男、ですか。それは光栄ですね」
「そして。どうしても〝戦ってみたい〟相手でもあるわ」
突然シノトを囲むように雪が盛り上がり彼を閉じ込めた。
だが。数秒も経たない内に閉じ込めていた雪はスライスされたようにバラバラになって崩れた。
「不意討ちとは生徒会長の名が泣きますよ」
「驚くこともないのは残念だわ」
「期待に答えらず申し訳ございません」
優雅に一礼。
「いいわよ。でも、あなたも一応剣警隊では指名手配の身。風紀組は彼らと連携をとる身としてはあなたを逃がすわけにはいかないわ」
(成る程。逃がさないための不意討ちだったわけか)
(今の不意討ちをかわすなんて。しかもあんなに落ち着いて。想像以上の冷静さ)
雪奈はシノトの冷静さに舌を巻いた。
お互いに譲らない攻防が続く。
雪景色を生み出す雪奈に対してシノトこと笛吹き狐はお祓い棒を駆使しているが未だに何も仕掛けることはない。
(さてと。生徒会長はどうしようか)
「考えている暇はないわよ!」
雪奈が雪玉を十数個も生成し、シューティングゲームの如く飛ばす。
お祓い棒を前に出し、雪玉を叩き、受ける。
(さて。どうしよう)
雪玉を叩きながらシノトは考えるのだった。




