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笛の音色

久しぶりの技の登場です。

戦闘の部分が表現できているか不安ですが、楽しんでいただけると嬉しいです。

桜蘭屋を出た桔梗と美穂は暫く歩き続けた。しかし、道中二人はあまり会話ということをしなかった。

無言で歩き続ける二人。


「珠依さん」

「はい。来ていますね」


聞き取れないほどの声で話し合う。

(ついて来ていますね。やはりあの店が)

桜蘭屋を出てから尾行されているため桔梗はあの店主の仕業だろうと確信した。

そして自然と自分の腰に差した愛刀に視線がいく。

「天塚さん」

「はい。いつでも」

美穂の意思を確認。

「出てきて下さい!いるのはわかっています!」


「へ、随分と気の強い奴だな」

ゾロゾロと男達が現れていく。

その人数 十人。

「やはり、この事件の首謀者は」

桔梗の視線の先には桜蘭屋の店員の制服を着た男達がいた。

「今さら知ったところでお前達に何ができるってんだ!」

「これから商品になる奴らが何言っているんだよ!」

「やはり行方不明になった人達は!?」

「お前達もすぐにあの女達と同じところに連れってやるよ!」

全員が抜刀した。

桔梗と美穂も身構え、動いた。


その瞬間、辺りに笛の音色が鳴った。


全員がその場で動きを止めた。

男達は笛の音色を聞いて顔を青ざめたものになっていく。


対して桔梗と美穂の二人は何故かその音色は心地好く聞こえ、安心感を抱いていた。

(来た)

桔梗は内心で呟いていた。

やがて笛の音色は彼女達の方へと近づいていく。


「いやはや。か弱い少女二人に武器をむけてよってたかってとは、許せませんね」


笛の音色が消えた後から声がその場に響く。

全員が声のする方をむく。

声の主は街灯のてっぺんで器用に立っていた。

声の主は、街灯に照らされた黄色と白が混じった美しい髪をなびかせ、巫女装束に似た服を着こなし、頭の上には耳、後ろには尻尾。そして、顔には狐の面。

声の主はその場にいる者全員の注目を浴びていた。


「お前は!?」

「お前達でも私を知っているのではないかな」

静かに響き渡る声。

「何者だ!」

「やれやれ。私を知らないとは、新聞というものはよく読むべきですよ」

跳躍し、桔梗達二人を庇う位置に着地。

「では、改めて名乗らせていただこう。私は、お前達を裁く者。だが、世間では私のことはこう呼んでいる。〝笛吹きの狐〟」

役者の台詞のごとく自らを名乗った。


「何!?貴様が」

男達の間で動揺が起こる。


「手を引いてくだされば見逃してあげますが」

「こっちには目の前に金のなる木があるんだ。引けるか」

「そうですか。仕方がありません」

背中の腰に差していたお祓い棒に手を伸ばす。

「でやぁぁ!!」

隙と見たのか一人が斬りかかってきた。

笛吹きの狐は慌てることなく横に移動しながら刃を避け、すれ違い様に男の首に手刀を振り下ろす。

「ぐぁ!?」

男はうめき声をあげその場に倒れた。

「さて。覚悟はいいですかな?」

お祓い棒を先辺りを掴み抜いた。

抜きでた刀身が街灯の明かりに反射して一際輝く。

(さて、覚悟してもらおう)


「なぜ。私達を」

背後から桔梗が聞いてきた。彼女もいつでも動けるように抜刀していた。


「何。女性をよってたかってする奴らが許せないだけですよ」

静かに言う。


(本当に何を言っているんだろう?彼女に)

面の下ではシノトは苦笑していた。


(さて、やりますか)

得物を持ち直し、地を蹴った。


「はぁ!」

一人が袈裟懸けに来る。

シノトは走り抜けると同時に男の剣を受け、そのまま男の力にまかせ自分の刀を男の剣の軌道に乗せる。しかし、シノト自身はその場で回転しながら移動。そして、背後に回り男の背中に一撃。

男はうめき声をあげて気絶した。

その後。一斉に来た。

シノトは慌てることなく、男達に突っ込んでいった。

はたから見たら無謀だ、と言うだろう。

だが、シノトはその刃が振るわれる中を普通に歩くように進んで行き相手を倒していった。しかも驚くべきことにシノトは右手に持っているだけで男達の刃を受けて、斬ったりしていた。持ち直すこともなく。そして、シノトと男達が完全にすれ違った時には男達は誰一人として立っている者はいなかった。


「四季創剣流 春の型 〝桜花爛漫〟」


小さく呟き、刀を払い鞘へと戻した。



そんなありえない光景を目の当たりにした少女二人に

「大丈夫ですかな?」

優しく声を掛ける。

「殺したのですか」

「女性の前では殺生はしたくないのですよ」

全員、気絶させた。

シノトが振るったのは峰打ちだったからだ。

「では、これにて」

「待ってください。どうして私達を助けてくれるのですか」

「言ったでしょう。私は、女性をよってたかってする奴らが許せないだけです、と。それでは、またお会いしましょう。美しい闇夜で」

深く一礼すると笛吹きの狐は闇の中へと消えていった。

その後ろ姿を少女達は、ただ、ただ、見続けていたのだった。

しかし、それと同時に


(強い。私もいつか)

(私もあんな風になれるでしょうか。あの人のように)


胸の奥でそんな感情が沸き起こっていた。


桜蘭屋。

欲次郎はニヤニヤと不気味に笑っていた。

「これで、あの小娘どもが揃えば、取引は成立だ!」

欲次郎がこれから来る自分の分け前のことを考え、心を弾ませていた。

「残念ですが。あなたの思い通りには行きませんよ」

突然、バサッ!という音とも現れた。

「だ!誰だ!?貴様は!?」

「欲に眩んだ男を裁く者だ」

「貴様!?笛吹きの!?」

「お前に送る笛の音などない」

ドガッ!という打撃音が店の中で響き渡った。


「彼女達の痛み、苦しみを知るがいい」

シノトは吐き捨てるように言うと店の奥へと足を踏み入れた。


その数分後。風紀組が到着。そして、店に入って見ると気絶した桜蘭屋の主欲次郎とその仲間。行方不明となっていた女性少女達がいた。

彼女達はこう証言した。


「狐の面を着けた者に救われた」と。


それを遠くで見ていたシノトは

「仕上げにかかるか」

屋根の上を跳んでいくのだった。


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