百花屋の人々
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「大丈夫ですか?お婆ちゃんがえらい心配していましたよ」
「ありがとうね。あの人には心配させてしまって」
店の女性。佳代子さんは申し訳なさそうな表情を浮かべる。
「いえ、いえ。いつも家の神社で使っている装束を扱っている身としては心配して当然ですよ」
百花屋は、シノトが生まれる前から狐空家とは親交があり、神社で使われている装束は百花屋で作ってもらった物である。
というのも笛吹きの狐で着ている衣装はここの出であったりする。
そのため
「お、狐ん所の孫じゃないか。大きくなったな。本当に」
店の奥から武骨な顔だが人当たりいい笑顔が特徴の男が出てきた。
「あんた。いいのかい出てきて」
「なあに、バカ息子に任せてある。心配すんな」
「えっと。精一さんは元気にやっているんですか?」
「阿多棒よ。誰の子だと思っているんだ?」
精一とは、ここにいる夫婦の息子の名前だ。
シノトとは十くらい年が離れている。
「そうでしたね」
おもわず苦笑する。
「えっと。親方。この織物は、」
及び腰の男が突然現れた。
「なんだ。そんなの見ればわかるだろうがいつもの場所だ。頼んだぞ」
「へ、へい。わ、わかりました」
「あの人は?」
「最近になって働き始めた奴だ。仕事はちゃんとするが、あの及び腰がな」
確かに人から見ても及び腰だ。
「あ。ところで、最近になっておかしい事が起こっていると聞いたんですが。教えていただけませんでしょうか?何とか力になりますよ」
切り出した途端。親方の表情は真剣になる。そして、ゆっくりとであったが事の次第を話し始めた。
それから数十分後。
シノトは百花屋を出た。
「やっぱり、おかしい。何でこんな事になったんだ?」
親方の話は、疑問に道溢れていた。
話によるといつの頃か店に頼んでおいた浴衣に穴が空いていると苦情がきたらしい。その時は、謝罪して直すということで話がついて一件落着した。しかし、それからというもの同じような事が何回か起こるようになっていった。そして、店の周りには柄の悪い男達が徘徊し始め客が来なくなったという。そして現在に至った。
「親方達の腕は折り紙つきだ。そんな大量に穴が空くなんて事はない。それに…」
シノトが気になったのは百花屋をうろちょろしていた男達だ。
シノトが会った時も多人数で囲んで百花屋に入れさせないようにしようとしていた。
(何で、あんな事を……)
シノトは、思考を中断した。
(誰か見てる……。やっぱり…)
気配を感じ周囲を見るとさっき自分を囲もうとして返り討ちにあった男達がこちらを窺っている。
(さてと、どう出るか)
気づいていないと装って歩いていたが、何もしないで見ているだけであった。
(様子見か。さて、今日は…これで…)
シノトの足が止まった。
男達が百花屋に入って行くのを見たのだ。そして、シノトの耳には店の中の会話が入ってきた。
シノトは、向きを変え、再び百花屋へと足を運び出した。
「な、なんだ。お前らは!」
「おい、おっさん。てめえ、ふざけた真似してくれたじゃねぇか」
「何の事だ」
「惚けんな!さっきこの店から出たガキ。俺達はあいつに痛い目にあったんだ」
「あのガキを俺達にけしかけたのてめえだろ!」
「いいがかりだ。あの子とは何年ぶりかの再会なんだ!そんな事を頼める事なんてできるか」
「知り合いなら連絡ぐらいはできるよなあ。言い訳言ってんじゃねえぞ!」
男達は、店に上がり込もうとする。そして、男は親方に殴り掛かろうと親方の胸ぐらを掴んだ。
「この!くらぇ!!イデデデデデーーー!!!!」
殴ろうとしていた手を自分より小さい手が捻っていた。
「本人のいない所で随分と言いたい放題してくれましたね」
そこには男の手首を捻り続けるシノトの姿があった。




