百花屋でのいざこざ
シノトは風呂敷に包まれた着物を持って街中を歩いていた。
「用意しておくなんて準備がいいな。お婆ちゃんは」
あの後、祖母は善は急げと言うかのように着物を出して「お願いね」とにこやかにシノトに渡したのだ。
その手際に流石、と舌を巻いた。
暫く街を歩いていくと目的の百花屋が見えた。
古い古民家ではあるが老舗らしい雰囲気を出している。
入り口には百花屋というのれんが印象的だ。
その姿に懐かしいと思った。
しかし
(なるほどね。お婆ちゃんの言ったとおり)
店を見たシノトは納得した。百花屋の周囲には人相の悪い男達が店に近すぎず遠すぎずの距離で店の所に立っていた。
(あれじゃあお客さんは来ないな)
男達がいるため入りたくても入れない。
妨害してはいないが睨みをきかせている。〝見えない壁〟を百花屋に作ったと言ってもいい。
「さてと、飛び込んで見ますか」
シノトは笑みを浮かべる。
「あの中へ」
百花屋に向けて足を動かした。
「おい。ガキ。これ以上は近づくんじゃねえ」
さっそくシノトの前に男が行く手を遮る。
「この店に用事なんですが」
「悪いが俺達はこの店に頼まれた者だ」
「頼まれた人がどうして僕の行く手を遮るんですか?」
「お前が怪しいと判断したからに決まっているからだろうが」
証拠もないが身勝手な考えだ。
そんな事をしている間にシノトは囲まれかけていた。
(どうしても行かせたくないんだな)
「おい。わかったらさっさと・・・」
男の言葉はそれ以上出なかった。なぜなら、シノトがジャンプして男を飛び越えたからだ。
「なっ」「てめえっ!」「待ちやがれぇ!」
男達がシノトを止めようとする。
(百花屋の護衛を装ってるつもりみたいだけど・・・・)
一人が形振りかまわず殴りにくる。
シノトは余裕に避ける。
(これじゃあただの喧嘩早い連中だな)
避けると同時に拳を打ち込む。
その後男達はシノトに襲い掛かった。
シノトは、時に拳、時に蹴り、時に手刀。で男達を撃退していった。
(秋の型なんて使ったら痛いじゃあすまないよねえ)
撃退しながらシノトはそんな事を思った。
倒された男達はシノトを睨みながらその場を逃げていった。
(宣戦布告かな)
男達を見ながらシノトはそんな事を思った。
全てが片付いた後、シノトはようやく百花屋ののれんをくぐるのだった。
「ごめんください」
「いらっしゃい。あら、もしかしてシノト君?」
店の奥から女性がシノトを出迎えた。
この百花屋の主人の奥さんだ。
「はい。お久しぶりです」
「まあ!大きくなったわね。お母さんそっくり」
「ええっ!」
「雰囲気と顔立ちがね」
シノトはその言葉に複雑な思いを感じたのだった。
「僕は男ですが」
「大丈夫よ。顔はいい方だから」
店の奥さんは優しい笑みを浮かべて言う。
シノトはもう苦笑するしかなかった。




