助太刀は笛とともに
雪奈は、倒れた。
それは何の前触れもなく倒れた。
雪奈は、今自分に起きた事に最初は困惑していたが直ぐ様理解した。
(これが、奴らの手口だったのね・・)
雪奈は、自分の体が痺れてうまく動かせないという事を感じていた。
「動くことができないだろ」
男が雪奈に近く。
雪奈は、痺れた体を何とか動かし男を見る。
しかし、見上げる形になっていた。
男は、雪奈の手に握られている刀を蹴り彼女の手が届かないようにする。
(やってくれるわね)
万事休す。
まさにそんな状況だった。
「じゃあ。これはいただこう」
そう言って雪奈の腰に手をやり例の御守りを取り出す。
「これがあれば・・・・」
そして、御守りの口を結んでいる紐を解き中身を出す。
中身を見た男は驚愕した。
「おい!お前、まさか」
(ええ。そうよ。その中には別の物とすり替えさせてもらったわ)
痺れて動けないが雪奈はしてやったりと少し笑っていた。
「やってくれたな」
そう言動には怒りがにじみ出ていた。
そして、男は、胸ぐらを掴んだ。
雪奈の体が宙に浮く。
「ならば、お前を材料に持ってきてもらおうか」
その言葉は、雪奈を人質として使うと言っていた。
「う・・く、・・」
その時。
この場に場違いな事が起きた。
(これは、笛の音?)
雪奈は自分の耳に入ってくる音を聞いた。
そして、その音が聞こえているのは雪奈だけではなかった。
男達もこの音を聞いていた。
(この笛は、まさか!)
男は、音を聞いて戦慄した。
そして、顔から冷や汗が垂れた。
男は、そして、雪奈を含めてこの笛の音が何を意味するか知っていた。
笛の音は、自然とこの場を支配する。
笛の音はゆっくりとだがこの場に近いている。
そして。
それは、現れた。
笛を吹き、狐の面をつけ、巫女装束に似た服を着こなして。
「そこまでだ」
場を支配したと宣言するかのようにその者の声は響いた。
笛吹き狐。
誰もが知る、怪人が今この場に現れたのだった。
「貴様。」
「また会ったな」
男は、殺気を飛ばしながら睨む。
しかし、それを何でもないというふうに受け流す。
(良かった。間に合って)
シノトは、雪奈がまだ無事なのを見て少し安堵した。
「女の子に対する接し方がなっていないな」
「なんだと」
「だから…」
笛吹き狐の言葉の先が続く前に
男は突然、腹に強い衝撃を受けた。
「そろそろ離してあげなさい、と言いたいのだよ」
そこには、雪奈を抱き止める笛吹き狐の姿があった。
いつの間に!
男が驚愕するのは無理もない事だった。
男は、驚愕した。
さっきまで距離が開いていたというのに、そんなものは関係ないとでもいうかのように笛吹き狐は男に一撃を入れて雪奈を助けたのだから。
(助けてくれた)
雪奈は、自分が危機から脱した事を感じた。
雪奈は辛うじて動く目で彼を見た。
狐の面によって見えない素顔。
しかし、肌からそして、見えない顔から彼の気迫、見えない力というものを感じていた。
(すごいわ。もし、彼の正体だとするなら)
「しかし、いいのか。彼女を守りながら相手するのは、」
雪奈の思考を断ち切らせる男の声が聞こえてきた。
雪奈もそう思った。
今まったく動く事ができない雪奈はただの足手まといにほかならなかった。
「問題ない」
しかし、笛吹き狐は言った。
「なんだと」
「問題ない、と言った。聞こえないのか」
何でもないと言うように言った。
その場にいる者達に動揺が走った。
雪奈でさえ驚いていた。
「なら。見せてもらおうか!」
男が叫ぶ。
そして、それが合図となり男の仲間が襲いかかった。
それと同時に笛吹き狐も動いた。
最初にきた男の一撃をかわすと直ぐ様首筋に手刀をいれたそして、雪奈を抱えた。
「!」
雪奈は突然の事に驚いた。もし、体全体が痺れていなければ悲鳴をあげていただろう。
そんな雪奈をよそに男達は襲い掛かってくる。
しかし、笛吹き狐はそんな男達にまったく動揺せず雪奈を抱え、見事な動きで避けていった。
そして、蹴りをいれていった。
相手の腹、または首、頭。その蹴りは的確に命中していた。
雪奈を抱えている事など何ら問題ないと言うかのように。
「く、」
「さあ。どうする」
笛吹き狐は、男に詰め寄る。
「!」
突然、吹笛吹き狐は、跳んだ。
そして、雪奈を左腕で抱えると背中に差していたお祓い棒に手を伸ばした。
そしてそれを振るった。
その直後、キンッ!キンッ!という金属音が響いた。
「なるほど」
着地した笛吹き狐は地面に落ちている物を拾い呟く。
その手には細い金属製の針があった。
「これが、彼女達を倒した。正体か」




