放課後、見舞いに行く
「お見舞いなんて行っても大丈夫かな」
下校中のシノトは、どうしようか、と考えていた。
シノトが考えている事。
それは、桔梗のお見舞いだ。
教室で彼女は、家にいるというのは伝えられていた。そこで行こうと考えていたのであった。
しかし、問題があった。
それは、相手が地位の高い華族であることであった。高い華族程、相手を慎重に考える。つまり、まわりの評判を気にするのだ。
シノトのようなどこにでもいるような少年は追い出される可能性が高かった。
「まあ、行くだけ行ってみるかな」
シノトは、そう言って彼女のいる屋敷の方へと歩いていった。
桔梗の屋敷前。
「相変わらず、すごいなあ」
シノトは目の前の門に呆然と呟いた。
そして、門に付いているインターホンを押した。
『はい?』
女性の声が出る。
「あの、珠依さんのクラスメイトである。狐空 志野飛といいます。珠依さんは大丈夫でしょうか。学院に頼まれた物を届けに来たのですが」
慎重に言葉を選びながらシノトはインターホンにむかって言う。担任から渡してほしいと言われた物は事実のため嘘ではない。
しばしの沈黙。
シノトは、ダメか、とあきらめた時。
『どうぞ』
という言葉がインターホンから聞こえ、中から門の扉が開けられた。
シノトは、ホッと胸を撫で下ろし、屋敷へと入っていった。
屋敷に入ると二人の人物がシノトを出迎えた。
一人は、シノトの祖父と同じ位の老人。もう一人は、女性であった。
「ようこそ。屋敷へ。自己紹介させてくれ。わしは、珠依 妙水。こっちは、ここで働いている奉子じゃ。」
そう老人に紹介され女性はお辞儀をした。
「は、はい。こちらこそ。狐空 志野飛です」
緊張した面持ちでシノトも自分を紹介した。
「ほお。思っていた以上に礼儀がいいようだな」
桔梗の祖父は、シノトの行動に感心するように頷いた。
「はあ」
シノトは正直。何が何だか理解に苦しんでいた。
それからは桔梗の祖父に連れられながら屋敷の中を歩いていた。
シノトはあまり目立たないように屋敷の周りを見た。
そこには立派と言うしかない日本庭園が広がっていた。
「気に入ったかね」
突然、妙水が声をかけてきた。
「え、あ、いえ、何がでしょうか?」
「家の庭の事じゃ」
シノトはその言葉に驚いた。
(後ろを向いていないのに)
シノトは、桔梗の祖父の技量を感じた。
「はい、綺麗だと思います。僕は、好きですよ」
あくまで平静を装いながらそう答えた。
そして、妙水は、「そうかね」と微笑みながらそう返すのだった。




