尾行の正体と放課後の道中
放課後。今日もいつもどおりにシノトは寮に向かって歩いていた。
しかし。
(またか)
シノトは、おもわずため息をつきたくなった。
シノトは、ここまでの道中、背後で隠れ、自分をつけている存在を感じていた。しかし、これは、今日だけの事ではなかった。この数日間にシノトは帰宅中に尾行されていたのであった。しかし、シノトはその相手を無視して気づいていないふりをしていた。理由は、自分自身の実力を出さないためでもあったが最大の理由は、相手がたいしたことがないからであった。
知らない相手と闘う時、相手の力量を見極めるのは相手の動き、構え、そして、相手から発せられる〝気〟である。
シノトは、相手の気配から実力を見極めて判断していた。
暫く、シノトは、尾行してくる気配を背中で感じながら道中を歩いた。しかし、ここで思わぬ事態が起こった。
「狐空さん」
シノトの前で自分の名前を呼ぶ黒髪の少女が立っていた。
「珠依さん」
その時、背後の気配が動揺したのを感じた。
(どうしたんだ。急に)
「狐空さん」
シノトがそんな事考えていると桔梗が向かって来ていた。
「どうしたんですか。いっ」
「下がって下さい!」
突然、シノトの言葉を遮るように言うと声を張り上げた。
「そこにいるのは誰ですか!出てきて下さい」
桔梗が言ったのが応えたのか、観念するように出てきた。
それは、シノトがまったく知らない人物であった。
「あなたは、誰ですか?」
学院の制服を着用して腰に刀を差した男子であった。髪を短く切り、どこか華族らしい雰囲気があった。
(うわっ、香水きつい!!)
シノトは、人より嗅覚が鋭いため彼から匂う香水におもわず鼻を手で摘まみそうになった。
「何故、あなたは、狐空さんをつけていたのですか」
そんなシノトをよそに鋭利な刃の如く男子生徒に桔梗は問いかける。
「・・・・・・」
男子生徒は、顔をしたに向け沈黙していた。
「何故、黙っているのですか」
「・・・何故だ・・・」
「えっ」
ボソリと言った彼の言葉に桔梗は訳がわからないといった表情を浮かべた。
「何故なんですか。珠依さん。何故、そんな奴なんかと一緒にいるんですか!」
突然、声を張り上げて男子生徒は、桔梗に聞いてきた。
「何で、何も取り柄もなく学院でも無能の烙印を押された奴となんかと」
シノトは、男子生徒を見た。今の男子生徒は、シノトから見て乱心しているように見えた。そして、シノトは気づいた。
彼が桔梗の事を好いている事に。しかし、桔梗の様子から見て彼女はそんな気はまったくないと見てとれた。
「私が誰と話そうが帰ろうが私の勝手です。あなたにとやかく言われる筋合いはありません」
ピシャリと言われた男子生徒は、何も言えずに唖然としていた。
そして、終わったとばかりに彼に背を向け、シノトの手を掴むと引っ張っていった。
「えっ、た、珠依さん」
「行きましょう」
シノトは、桔梗に引っ張られるがままその場を後にするのであった。
それから暫く、シノトは、桔梗に引っ張られる形で歩かされていた。
「えっと、珠依りさん。もう言いかな?」
「えっ」
振り返った桔梗は、直ぐ様、自分がシノトの手を握っていた事に気づいた。
「あ、あの、すいません!」
「大丈夫だよ。気にしないでください」
シノトは、顔を紅くして慌てる桔梗を宥めた。
「すいません」
落ち着いた桔梗は、再びシノトに謝った。
「何で珠依りさんが謝るんですか」
「私が、狐空さんに話すようになったからこんな事に」
「そんな事ですか。大丈夫ですよ。僕は気にしませんから」
「ですが」
「それよりも大丈夫何ですか?さっきの人にあんな事言って」
「あ、はい。大丈夫です。あの人は前にも同じように私の所に来て。私も今日のような感じで言ったので」
「そうですか。でも、気をつけた方がいいですよ。」
「はい、ありがとうございます」
その後。二人は、シノトの寮まで一緒に歩いた。
その時の桔梗は、頬を少し紅くしな笑顔であった。




