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笛吹き狐と乙女達

桔梗達が駆けつけるとそこには異様な光景が広がっていた。

銀行を荒らした男達が武器を持って一人の人物に向かっている。しかし、その攻撃の中心になっている人物はその攻撃を全て避けていた。まるで舞を踊るかのように美しく避けていた。


「すごいです」

美穂は状況を忘れてその光景に思わず感嘆していた。

桔梗も同じであった。


(あんなに沢山の攻撃をああも避けるなんて)

しかし、感心とともにその人物の姿を見て驚いた。

その人物の顔には狐の面があったからだ。

「あれが噂の笛吹きの狐ね」

隣で雪奈もそれに気づいたのか呟いていた。

当の笛吹きの狐ことシノトは攻撃を避けながら桔梗達の方を見ていた。


(まいったなあ、珠依さん達が追いついちゃったかあ。早めに終わらせないと)

そう思うとシノトは行動を起こした。

今まで避けていたが、今度は避けると同時に手首や首辺りに手刀を叩き込んでいった。

その場でバタバタと男達は倒れていった。それから数秒後には全員やられていた。

残った笛吹きの狐ことシノトは倒した男達に目もくれず走り出そうとした。

しかし、そうは、いかなかった。

それはシノトの周囲が白く染まり始めていたからだ。

「逃がさないわ」

雪奈が右手を突き出しながら言った。

シノトを足止めしたのは雪奈であった。


(まいったなあ。あの人は厄介だからなあ)

シノトは、少しため息をついた。

「申し訳ないが、見逃しては頂けないか?」

シノトは仕方なくばれないように声色を変えて話しかけた。

雪奈達はこっちから話しかけてきた事に多少驚いていた。

シノトはそんな三人の姿を見て面の下でおもわず笑っていた。

「何を驚いているのか。狐だって時には喋りますよ」

「普通、狐は喋りません。あなたは何者ですか」

桔梗が律儀に抗議してきた。そして三人を代表して聞いてきた。

「私は、狐。それ以上でもそれ以下でもない」

「ふざけているんですか」

「気を悪くしたのなら申し訳ない。〝炎の巫女〟よ」

桔梗は、ますます警戒心を持ったのか腰に差している刀に手を掛けようとしていた。

(うわあ、ちょっと調子乗り過ぎたかなあ)

面の下で冷や汗が垂れる。

シノトは少し後ずさった。

「一つ、聞いてもいいかしら」

今まで黙っていた雪奈が声をあげた。

「何でしょう」

「あなたは、何のためにこんな事をしているの」

「悪を裁くためと言っても自分勝手な考えと思われてしまうでしょう」

「そうね。だから、あえて言わせて貰うわ。狐さん、今ここで、捕まってくれない」

雪奈は、率直に聞いてきた。

「それは、困ります」

速答した。

本当に困る。色々と。


「じゃあ、力づくで捕まえるわ」

雪奈は、刀を抜いた。


狐と彼女達の夜は、こうして、始まった。

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