調査2
次の日、シノトはいつものように机に突っ伏していた。しかし、頭の中では昨夜の辻斬りと辻斬り達が入っていった屋敷について考えていた。
(あの辻斬りの顔、どこかで・・・それにあの屋敷、高い位だ。たぶん〝華族〟だな)
華族ー。それはこの国、日本でもっとも位の高い者達の総称である。英国でいう貴族のような存在だ。
「おい」
「うん、なんだアキトか」
「何がうん、だせっかく、友達がゼロに等しいお前に話しかけてやってるのによ」
「やめて、心が崩壊するから」
「ま、冗談はさておき。シノト、今日の新聞見たか?」
「新聞?」
シノトは首をかしげた。
「なんだ、見てないのか」
そう言うとアキトはバッグから新聞を取り出すとシノトの机に投げた。
「読んでみな」
言われたようにシノトは新聞を見た。直ぐ様、最初の一面に目が止まった。
『辻斬り、ついに華族を襲う!』
「なんだ、これ?」
シノトはおもわず呟いていた。
「どうもこうもない。ついに華族を手にかけたんだぜ。大事になるぜ、こりゃ」
シノトはその記事を読むとその華族は昨夜、街の街灯のある通りで襲われたと書かれていた。その時は護衛が何人か居て、事なきを得たとも書かれていた。さらにシノトを驚かせたのは襲われた華族が見た辻斬りの姿についてであった。
辻斬りの姿は、口を布で隠し、ジーンズで黒いシャツで黒いジャンバーを着ていたと書かれていた。
(この服装は、昨夜の僕の服装だ。)
驚くと同時にシノトは理解した。
「なるほど」
「何が、なるほどなんだ?」
「えっ、いや、なんでもない」
シノトの頭の中では辻斬り事件の真相ができてきていた。
(昨夜の一件で顔を見られた辻斬りの華族は逆に利用して自分が被害者になり、殺せなかった人(僕)を辻斬りとしてでっち上げたというわけか)
「さて、どうしよう」
「気になるのですか?」
「えっ、うん?」
新聞から顔をあげると珠依 桔梗がいた。シノトは驚いた。アキトも同様に驚いていた。
「そんなに驚かなくてもいいじゃないですか」
「すいません。あまりにも珍しくて」
「しっかし、あなたが話しかけてくるとは珍しいですね」
「二人とも失礼じゃないですか」
桔梗は憮然とした表情を浮かべた。それでも彼女の美しさは損なわなかった。
「それ、辻斬りの事ですか?」
「うん、そうですが」
相変わらずの丁寧な口調、しかしそれにより大和撫子らしさ引き立たせていた。
「ひどいものですね」
「ああ、ひどいもんだろう」
桔梗の言葉にアキトが答える。しかし、二人の顔には許せない表情をしていた。
(これ以上は野放しにできないな)
二人の顔を見てシノトは密かに気持ちを引き締めた。
「そういえば、昨日は大丈夫でしたか?」
「え、えーと。はい、大丈夫でした。ありがとうございます」
「なんだ?お前ら、昨日二人でなんかあったんか?もしかして、デートか?」
「な、何いってんだよ。お前は」
「そ、そうですよ。何言うんですか」
「ま、詮索はしないどくよ。しかし、気をつけろよシノト・・・」
言葉を切ると耳元で囁いた。
「彼女のファンの奴らに殺されんなよ」
シノトの表情が強張った。
桔梗は学院でも上位の生徒でその美しさと剣の腕でファンが多くいる。ついこの前もシノトはそのファンの集団に袋叩きにされた事が記憶に新しい。
(本当に殺されちゃうなあ。今度は)
シノトはそう思った。
「狐空さん」
「はい?」
「こ、今度、また立ち合っていただけませんか?」
そう言う桔梗の顔は少し紅くなっていた。
「はい、まあ機会があれば」
できれば、あまり使いたくないんだけど。
「あ、ありがとうございます!」
桔梗はそう言うと自分の席に戻っていった。
「おい、どういうことなんだ?」
アキトの顔が意地悪い笑みを浮かべていた。
「どういうことって?」
「昨日、何があったんだ」
「何にもないよ」
「ほんとか?」
「しつこいなあ」
「まあ、頑張れよ」
「何を?」
そう答えるシノトにアキトは苦笑した。
一方、自分の席に戻った桔梗は内心、困惑していた。
(ラグレスさんは何てことを言うんでしょうか)
もしかして、デートか?
その時のアキトの言葉に桔梗は困惑とは別の感情が存在していた。その感情は今まで経験したことがない感情であった。決闘の時の緊張感とは違う胸の疼きと鼓動がトクトクとはやく脈打っていた。
(デートか、)
考えていると、学院では見せないシノトの姿が浮かんだ。するとより胸の鼓動がはやくなった。
(私は、何を考えているんでしょう)
それでも桔梗の頬は紅くそして熱を帯びていた。
(でっ、でも今はそれどころではありません。)
桔梗は振り払うように思考を変えた。その顔は学院の生徒が憧れる焔の巫女であった。




