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1Kの大家さん、実は世界を救う立場でした〜訳あり亜人と紡ぐ、俺だけの再生ファンタジー〜  作者: HANA
第一章:『異世界で大家はじめました 〜鳥人の少女と始まりの1K〜』
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第6話:目標は100Pt! 大家の野望【大浴場】と福利厚生アパート計画

一部修正しました( ;∀;)


「ん……ふぁ……」


  101号室の畳の上で目を覚まし、ゆっくりと体を起こした。まぶたをこすり、自分の両手を握ったり開いたりしてみる。


 身体が軽い。昨日まで俺を苛んでいた鉛のような倦怠感も、倒れそうだった激しい衰弱感も、嘘みたいにスッキリと引いていた。


 思い返せば、昨日リッカからアパートに家賃(魔力)が流れ込んだ瞬間からだ。


  頭の中で『アナライズ』を開き、現在の数値を呼び出してみる。 昨晩リッカの部屋を作り、彼女の感謝によって還元された分を含めて、表示は【75Pt】となっていた。


  ようするに、俺の身体はアパートと連動しており、魔力が多ければ健康でいられるが、少なくなれば体調が悪くなる。そして、リッカがいればもう今後は安泰かと言われると、さすがにそれは虫が良すぎるだろう。


 アパートを維持し、安定して魔力を増やしていくには、新しい店子を増やすか、設備を充実させていくしかなさそうだ。ま、アパート経営の基本だな。


  ……これは、のんびり引きこもっている暇なんてないな。


  身なりを整えて廊下へ出ると、ちょうど隣の102号室からリッカが出てくるところだった。


「あ、大家様! おはようございます!」

「おはよう、リッカ。翼の具合はどうだ?」

「はい! 久しぶりにゆっくり眠れたおかげで、痛みもだいぶ落ち着きました!」


  添え木を当てた翼を慈しむように触れながら、ホッとしたように微笑むリッカ。その横から、ぷかぷかと浮かぶ白いチビトカゲ――シルヴァが欠伸をしながら現れた。


「ふぁぁ……よく眠れたのじゃ。朝っぱらからなんじゃ、突っ立って」

「ちょうどいい、全員揃ったな。これからの生活について少し相談したいことがあるんだ。101号室に入ってくれ」


  ◇


「まず、現在のアパートの状況なんだが……」


  畳の上に車座になり、俺は頭の中の『アナライズ』で確認した数値を二人に説明した。


「アパート全体の魔力は現在75Pt。で、この建物の状態を維持するために最低50Ptが必要らしい。なぁシルヴァ、改めて確認なんだがこの大樹の魔力は『感謝と信頼』でしか回復できないんだよな?」

「うむ、その通りじゃ。ほかに手段はない」

「そうなると、もっと家賃――魔力を集めるために新しい店子を迎えたいわけだが……問題は誰を連れてくるかだな。もし間違えてあの魔狼みたいなヤツを入れてしまったらとんでもないことになる」


  俺の懸念に、リッカが真剣な表情で首を横に振った。


「大家様、違います。あいつらは会話も通じない理性のない『魔物』で私達にとっても恐ろしい敵です。でも……私のような亜人や異種族の中には、言葉や心を持つものがたくさんいます。そして、その多くは争いを望まず、ただ力がないばかりに、魔物や人間に追われて居場所を奪われてしまうんです……」


  どこか切なげなリッカの言葉に、世間から爪弾きにされ部屋に引きこもっていた頃の自分を重ねた。


  言葉も心もあるのに、力がないからって理不尽に追い詰められて居場所を失う――前世の俺と全く同じじゃないか。


「なるほどな。……よし、俺がこのアパートに迎えるのは『話が通じて、ルールを守って一緒に暮らせるヤツ』限定だ。そういう困ってるヤツなら大歓迎する」

「はいっ……! ありがとうございます、大家様!」


  方針が定まったところで、ふと俺の頭の中にひとつの「切実な欲求」が浮かんできた。

  異世界に来てからというもの、まともにお湯に浸かれていない。汗と泥を拭っただけじゃ取れないこの不快感――日本人として、今すぐ湯船に浸かりたいという強い衝動だ。


「……なぁ。103号室を『風呂(大浴場)』に改築しないか?」

「ふろ……?」

「なんじゃその『ふろ』というのは?」


  首をかしげる二人に対し、俺は目を輝かせながら熱弁を振るい始めた。


「風呂ってのはな! 温かいお湯がたっぷり張ってある大きな湯船に、肩までドボンと浸かるんだ! 立ち込める湯気の中で手足を伸ばせば、疲労もストレスも全部お湯に溶けて消え去る……人類最高の癒やし空間なんだよ!」

「ぜ、全身で温かいお湯に……!?」

「ぬ、ぬおお……! 聞いただけで身体がポカポカしてきそうな響きじゃな……!」


  圧倒的な熱量に押され、ゴクリと生唾を飲み込む二人。未知の「お風呂」という文化に、すっかり心を奪われている様子だ。

  だがその時、シルヴァがハッと我に返ったように前足を突き出してきた。


「……って、騙されるところじゃったぞ! ズルいぞおぬし! 我の『黄金の龍宮城』は速攻で却下したくせに、自分がその『ふろ』に入りたいからって103号室を改変する気か! 職権乱用じゃーっ!」

「バカ言え。これは無駄遣いじゃない。『アパート共通の福利厚生(投資)』だ」


  フッと不敵に笑い、堂々と言い放つ。


「ふ、ふくりこうせい……? なんじゃそれは?」

「考えてみろよ。今後新しい店子をスカウトした時、『このアパートは温かいお湯にいつでも浸かれるんです』って言ったらどうだ? 住人の満足度爆上がりで、家賃がっぽがっぽの先行投資なんだよ!」

「た、たしかに……! 毎日温かいお湯に入れるなら、どんな困っている方でも大喜びします……! 私もぜひ入ってみたいです……!」

「ぐぬぬ……! リッカまで丸め込まれて……! いやしかし、確かに魅力的ではあるが……」


  リッカの援護射撃もあり、シルヴァもぐうの音も出ず黙り込んだ。勝利を確信した俺は、『アナライズ』で事前に算出した数値を提示する。


「よし! 大浴場化に必要な魔力は【100Pt】! 今使えるのは25Ptだから、目標はあと75Pt……いや」


  一瞬考え直し、頭の中の数字を修正する。


「余裕を見て、100Pt稼ぐつもりで行こう。ギリギリまで使い切ると、また何かあった時に困るからな」


「お、おぬし、妙に計算高いのじゃな。昨日はノリと勢いで山まで作っておったくせに」

「うるさい。あの時はあの時だ。俺は本来、慎重派なんだよ」

「なーんか丸め込まれてる気がするんじゃが……まあ、よいか! その話、乗ってやろう!」


  こうしてモチベーションが最高潮に達した俺たちは、意気揚々と玄関へ向かって歩き出した。


  100Pt。数字にすればそれだけだが、その魔力を満たしてくれる「誰か」は、どこにいるだろうか。


  風呂の湯気を思い浮かべながら、俺は森の奥へと視線を向けた。

何度か出てきてる『店子』ってなに?って思う方もいると思いますが、これは「たなこ」と呼び、家を借りている人、すなわち「入居者」の事です。


江戸時代に生まれた借家人や借店舗の呼称らしく、私も知りませんでした( ゜Д゜)

使う機会はそうそうないと思いますが、豆知識としていつか使えるかもしれません笑

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