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幽ノ坂 冬火、魔王と戦う


私達は魔王ゲドネオンを取り囲みながら攻撃していた。


魔王ゲドネオンは体に纏う茨の骨を物凄い速度で伸縮させ、周囲に不可侵の棘のエリアを作っている。




アルメヒやドアドラやシュカがそんな中を飛び回り、骨を粉砕しながら奴の体へ辿り着こうとしている。


しかし、骨は粉砕された瞬間に即座に再生し、アルメヒ達はなかなか本体に到達出来ずにいた。


本体と言ってもどの部分がそうなのかは不明で、ソレイのアークデーモンが、魔王ゲドネオンにマグマの火柱をあらゆる部位に放っているが、ある程度まで骨を削ると非常に硬い部分があるらしく、そこを突破できずに瞬時に再生されている。


大幅な損傷か、ミミックの時みたいに内部から効くような攻撃しか受け付けないのかもしれない。




魔王ゲドネオンのあまりに素早い攻撃に、アルメヒ達は危うい場面もあったが、黒豹の魔王ニクルズが隠密の能力で彼女等の近くに潜伏し、不意を狙い攻撃しようとする骨を豪快に嚙み砕いて守ってくれている。


さらに宇宙人の魔王ホルーも流星のような弓属性の魔術を連射し、アルメヒ達に迫る鋭利な骨を、ほぼ確実に粉砕してくれているみたいだ。




ルヌは魔王ゲドネオンの杖を持たない方の腕に、千の目を持つ粘竜をへばりつかせ動きを抑制させつつ、全身のスタミナを吸収しているようだ。


その腕は骨の伸縮が出来ず、ぶらんと肩から下がっているだけになり、超近接アタッカー達が避けるべき危険な攻撃を大幅に減らしてくれている。




私も宝短剣ブリズディアを使用し、超絶氷で顕現した白蛇王を奴の体に纏わりつかせている。


白蛇王は虹の鱗と王冠を陽の光に輝かせ、魔王ゲドネオンの骨をもろともせず砕きながら、胴を締め上げて雄たけびを上げている。


魔王ゲドネオンはその圧迫がとても嫌らしく、必死にもがくあまり冷静な行動が取れなくなっているみたいだ。




白蛇王を顕現している私と、ゾディとラシ、ディーネはくっついて行動している。


ラシのバフの恩恵を受けながらの行動する為だ。




ゾディは心を落ち着かせ、勇者剣から噴出する暗黒属性エネルギーを上空に塊としてずっとチャージしている。




ディーネはそんな私達に襲って来ようとする鋭利な骨を、華麗に舞って全て斬り落としてくれている。


驚く事に、その速さは目で追えない時がある程で、音速以上あるのかもしれない。


助走も無しでトップスピードになるし、ジグザグとアクロバティックに方向転換できる事を見ていると、まるで慣性が効いていないみたいだ。


斬りも突きも速過ぎて、蒼いブレードが熱色になっているのがもはや異常だ。




「ディーネさん……強過ぎです」


ゾディが少し引き気味に言った。




「あっ、えっと……ごめんなさい。ちょこまか動くの邪魔ですよね。……ふふっ」


ディーネの無邪気過ぎる笑顔に私達三人は、とんでもないレベルの強さなんじゃないかと冷や汗を垂らす。




魔王ゲドネオンは狂ったように怒り出し、巨大な杖から眩い熱線を乱雑に連射し出した。


それがいにしえの巨大都市へ放たれる度に、後方で絶大な火柱が立ち、全てをかき消してくれる。アズヴァーンがいてくれて本当に良かった。




皆、奴の魔法陣が出る度に、すぐに場所を移動し回避するのを繰り返している。


この熱線は防御より回避の方が安全だとみんなはもう認識しているからだ。


さらには、ゲイドが単体で杖の先端の巨大な宝玉に百獣王の小手を使った、内部インパクト攻撃を執拗に食らわせ、魔術を阻害しながら宝玉を砕こうとしている。




そんな中、少し離れた位置にいたリオナは絶妙なタイミングを見計らって、螺旋の血槍をバカみたいな速度で放り投げ、魔王ゲドネオンの杖を持つ方の肩に突き刺した。


螺旋の血槍は刺さりながら強制的に旋回する。


あまりの威力によろめく魔王ゲドネオン。




それをチャンスと見極め、足元に静かに潜伏していた勇者ガーデンが特大の黄金剣を天に掲げ直視できない程に湧き立つオーラで輝かせ、思いっきり振りかぶっては、魔王ゲドネオンの片足に決め込んだ。


恐らく、勇者ガーデンは溜め攻撃が得意なタイプなんだろう。


その威力の凄まじさたるや、魔王ゲドネオンは跪いて地に手をついている。




その直後に、ゲイドは地に落ちた杖の宝玉に隕石のようなスピードの跳び蹴りを食らわせ見事杖の宝玉は粉々に砕けた。




これは間違いなく奴を追い込むチャンスだと私は理解し、白蛇王を霧散させ、宝短剣ブリズディアをいつでも使えるように手元に戻した。




同じくチャンスを感じとった、私の傍で暗黒属性エネルギーをチャージしていたゾディは、「今だぁっ!!!」とこんな時でも可愛いらしい声を出し、魔王ゲドネオンの頭程に巨大化した赤黒いエネルギーの塊を、奴の背中に破滅の到来の如く叩き落とした。




魔王ゲドネオンの体は、重力を帯びた信じられないエネルギーの塊によって草原の地にのめり込まされる。


それを受けた魔王ゲドネオンの背中はクレーターのように凹んでいる。




すかさずシュカが、上空から一筋の光のように静かに落ちて来て、何か途轍もない事が起こるような静けさを漂わせた後、背中の骨の砕けた部位に特大な十字閃光を放つ刀王の居合を叩き込んだ。


万華鏡のように様々な十字の光が飛び交う。




魔王ゲドネオンのクレーターには大きなバツ印がつき、堅牢な骨は粉砕され内部にほぼ到達している。




すぐさまリチェがその場所へ移動し、大型の毒短剣を多数差し込んだ。


魔王ゲドネオンの十字の傷から激しく煮立つ毒沼が吹き上がり、リチェはムーンサルトのように飛びのく。




魔王ゲドネオンは突っ伏したままあまり動かなくなったが、次の瞬間、怨讐に満ちた声をウォロロローンと発して、這いながらも尋常では無い速度でいにしえの巨大都市へ向かった。




その時――


都市にある最上の高さの塔から巨大な鐘の音が三つ鳴り、都市の周囲にはプリズム色の薄いバリアがウィンっと一瞬で展開された。




私達は全員で顔を見合わせて頷き合った。きっと思っている事は一緒だろう。


ミゼリア王女は成し遂げてくれたんだ。




それでも魔王ゲドネオンは進むのを止めない。


私は魔王ゲドネオンの足元にアイススケートのような絶氷を出現させる。


魔王ゲドネオンは巨体を滑らせ盛大に転び、途轍もない怒りの声を上げて私に向いた。


そして、腕を大樹のような太さの一本の大槍に変え、私を貫こうと恐ろしい速度で伸ばす。




だがそれは、アズヴァーンの放った轟轟と燃焼する火球によって阻止され、魔王ゲドネオンの腕は私から逸れる。


私は宝短剣ブリズディアを特大太刀に変形させ、魔術エネルギー由来の渾身の一閃をその腕に決め込んだ。




魔王ゲドネオンの腕はあられもなく宙を舞い吹き飛ぶ。




それを見たアルメヒとドアドラは、双対のようならラッシュを魔王ゲドネオンの全身に叩き込む。


七色の宝石が砕け散るような鮮やかな残光が、足元から時計回りに輝いた。


激しさの頂点のような血色の稲妻は、足元から半時計周りにビカビカ光っている。




魔王ゲドネオンの全身の茨の骨はほぼ全てが砕け散った。


同時に、頭にある口からは、リチェの毒沼のような色の液体が天に向かって大噴出された。




そして、それを囲むように地面から二百程の古代文様が美しい黄金強兵と、以前より倍程の体格になった宝大槍を持つクリスタルの将軍が、真紅のマントたなびかせ現れた。


これを見るに、ミゼリア王女の王格はまた上がったのだろう。




「お待たせみんなっ!!!うまくいったわ!!!」


上空でピミミさんの箒に跨るミゼリア王女が、ピースサインをして至極嬉しそうにウインクしている。


みんなは、やはりこの笑顔が近くに必要だというような安心した顔をしている。




そして……


いにしえの黄金の強兵達は魔王ゲドネオンに一斉に群がり、クリスタルの将軍は魔王ゲドネオンの背の上を悠々と勇ましく歩いて、その中心に立った。




魔王ゲドネオンはもう動かない。




クリスタルの将軍はミゼリア王女を一瞥し様子を伺っているようだ。


ミゼリア王女は王格を示すような勇ましい表情で頷いてから手をかざす。




クリスタルの将軍は、宝大槍を魔王ゲドネオンへと突き刺して大きく腕を上げる。


黄金の強兵達も同様に高々と腕を掲げた。


金属の鎧が嬉々とこすれ合う音が平和な草原に響いた。




どうやら魔王ゲドネオンは、私達いにしえの巨大都市によって討伐されたみたいだ……




いつの間にか私の隣にいたアズヴァーンが言う。


「世界は広いぞ、冬火よ?」




「うん……でも、行ってみるよ」




私、幽ノ坂 冬火は引きこもる為に生まれた訳じゃ無いんだから――



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