幽ノ坂 冬火、託された想いを知る。
アズヴァーンには敵意が無いと分かり、しかも話が有益なので、いつの間にかドアドラ達やアルメヒにリチェ、私のパーティーは炎の化身アズヴァーンを囲んで話を聞いていた。
「でもさー、アズヴァーン復活した時、みんなを跪かせるって言ってたじゃん?」
シュカが唐突にアズヴァーンの言葉を掘り返し出した。
「そうじゃ!勿論我はそうするぞ。しかしそれは、災厄をもたらす者共を跪かせるという意味じゃがな。シノン達との約束であるからにな」
「ああそう言う事ね」
シュカは納得がいったと相槌を打った。
「まって、魔女の私や、あんたがここにいるせいで、その災厄をもたらす奴等が集まって来ようとしているんでしょ?永い眠りから覚めた者、強き血を受け継ぐ者達が集まるぞぉ!みたいな事も言ってたじゃない」
そうだ。突き詰めれば私がここに来たせいで、この都市は標的にされているのかもしれない……
ずっとそれが心に引っかかっていて、ここにいて良いのかな?って思ってたもん私。
「それは勘違いじゃぞ?それらがこの都市に目を向けているのは、この都市を守る為じゃ。その昔、予言の巫女シノンは世界の様々な存在を類稀なる力で救い、世界中に大層好かれておったのだ。なのでシノン達を知る者、恩を受け継いだ者共が、シノン達が託したであろう未来を守ろうと世界中からここに集ろうとしているのだ。我の古き気配と、我の封印を解いた、シノンに匹敵する理外の気配が、奴等に何かを思い出させたのであろうな」
アズヴァーンは草原の彼方を眺めるような仕草をしている。何かを探しているようだ。
「予言の巫女シノン達は世界中から愛されるような事を達成して、さらにその先に何を成そうとしたのですか?託したとは何かを成せなかったという事ですよね?」
ミゼリア王女は予言の最深部の核心を聞きたいのだろう。
「さあな。その時には我はもうランプの中にいたからな。しかし奴は己の命を犠牲にしてでも何かを成し、世界中にさらなる光を与えようとしていたはずじゃ。そしてそれが不可能だと予言で知りもしていたはずじゃ。それ故、其方等が制覇したダンジョンをいにしえの時代に召喚したりしていたのだろうな。当時は、何故こんな事をするのであろうと不思議じゃったが、今になって理解したわ。あの時既に、未来の其方等に託す事に決めていたのだろうな」
「試練の大迷宮は、予言の巫女シノンが召喚したモノだったのか……」
ソレイは何かが繋がったというような顔をした。
「達成出来なかった事か……長い災厄の象徴の魔女ルシシと異端の勇者ゼノロピと関係あるのかな?てか予言通りなら、魔女ルシシと異端の勇者ゼノロピは復活するって事だよね??本当に復活するの??御伽噺みたいな存在達が」
リチェが全然わかんなーい、とアズヴァーンに質問する。
「関係はあると思うぞ。奴等の存在は誠に異質であり、もはや一つの存在と言うより、世界の光を妨げる何かが形を成した存在達だからな。シノン達の目指す道を覆っていたとしてもおかしくない。そして予言は確かだ、間もなく奴等は目覚めるであろう、もしくはもう目覚めておるかもしれん。果ての海に住まう都市竜ヨルムンガンドの封印でも奴等を閉じ込めるのはそろそろが限界のはずじゃからな。シノン達は新しい時代に冒険者達が揃うまでの時間稼ぎの封印を奴等に施したのだろうな」
想像以上に過去の因縁が絡んだ話だな。少しデジャブ感があるのはなんでだろう?
そういうゲームのし過ぎかアニメの見過ぎかな?
予言の巫女シノン。遥か昔を生きたその女の子は一体何を見たかったんだろう?
その時――
不気味な声が西の草原の方角の遠い位置から聞こえた。
「来たな……」
アズヴァーンの炎の体の色が鋭く変わった。
私達全員は音の方に目を凝らす……
そこには遠目に見て30メートル程の人型の何かがいた。
災厄の骨の飛竜のように、体中が茨のような鋭く尖った骨に埋め尽くされている。
体の半分ほどの超巨大な杖を持ち、のそのそと感情無く歩いている。
そして、偶にお辞儀をする様に頭を下げては、頭部にある歯の無い口を見せて、ウォロロローンと悪魔にしか出せないような不気味な大きな声を上げ、草原を震わしている。
「あれは……魔王ゲドネオン!!!炎の化身!やっぱりあいつ、お前に誘われて来たんじゃねーのかぁ!!?」
勇者ガーデンがやっかみをかける。
「全く……我はあれが来る事を教えに来たのだぞ?お主らは話もマトモに聞かんかったが」
アズヴァーンがやれやれと呆れた様に答えた。
「……」
勇者ガーデンは返す言葉もなく、他の二体の魔王と遠くにいる魔王ゲドネオンを睨んでいる。
「どうしましょ……まだ結界の魔術書は解読出来ていないのに……このままだと都市が攻撃されてしまうわ……」
ミゼリア王女は至極慌てながらオロオロとしている。
「いにしえの都市を統べる王女よ、よく聞くのだ。遥か昔、シノン率いる英傑共が都市の四方にドデカい精霊の魔石を埋めておるのだ、未来の其方等の為にな。であるからに、それらの中心に位置するあの高き塔で、王家の血を受け継ぐお主が王命の秘術を唱えれば良いだけなのだ。さすれば、災厄の存在のみを妨げる不壊の障壁がこの都市を守り続けるであろうぞ」
アズヴァーンが王宮の手前にそびえる塔を指差して言った。
「……そう言う事だったのね……うん……完璧に理解したわ!!!ありがとうアズヴァーン!!!!!ピミミお願い、急いで私を王宮まで箒で乗せてって!!!」
「はいっ!王女様ー!!」
瞬く間に、ピミミさんの箒の後ろにミゼリア王女は跨り、私を乗せた時の倍の超特急のスピードで王宮に飛んで行った。
その間も、魔王ゲドネオンは不気味に巨大な杖を揺らしながらこちらに近づいて来る。
「あんな奴に勝てるのかな……」
私はその見た目に圧倒されて、不安な気持ちが言葉で漏れる。
「あのような雑魚に手間取っていては、世界中にはびこる災厄共には到底敵わぬぞ。魔女、魔王、悪魔、魔神、異星の来訪者、化身、堕ちた勇者、その中でも理外のレベルの奴等は、我ですら相手にならぬバケモノ共じゃ。今のお主らなら指先にすら触れられぬ。だがな……見込みが無い訳では無い。でなければこの我が、西の不死王ルタフィトや、北の海蛇王ビュテオルズなどの友に話を通すなどせぬぞ?力を見せろ。託された者共よ。我のメンツを潰してくれるなよ」
アズヴァーンの話は本当なのだろう。
何故なら、そのアズヴァーンが無意識に放つ狂った魔圧で、そこにいる全員が一瞬ふらつく程だったのだから。




