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幽ノ坂 冬火、モンスター討伐する。


私とラシは、現在ギルドにいる。




「お二人は、初めての討伐と言う事で、Eランクのミルクスライムがおススメです!」


受付の親切なお姉さんが言ってくれた。


ミルクスライムって、なんか美味しそうな名前だな、凍らせて舐めてみたいな。




「どうする冬火?私はこれでいいと思うんだけど?」


ラシが、黒いお目目をパチパチさせて言う。




「うん、なんでもいいよ。私戦闘経験とか皆無だから、ラシに任せる」


本当は一回あるけど……そういえばあのワニゾウさん、氷溶けたかな?




「じゃあこれにしましょ!でも、心配しないでね冬火、あなたの事は私がちゃんと守るわ。これでも田舎で、ゴブリンネズミ倒すの得意だったのよ!」


おう、頼もしい……のか?




「うん。ありがと!私、運動音痴だし、ホント助かる」


きっとラシがいれば大丈夫だ。みるからに魔法使いのなりをしているし。


如何にも、RPGのヒロイン顔だから弱いはずが無い。


ラシは、ちょっと得意気な顔で私を見ている。




受付のお姉さんが言った。


「では、E級のミルクスライムで登録しますね。あ、後ですね、ギルド協会から冒険者様達に緊急のお知らせがありまして……最近草原で、原初の魔術の痕跡が確認されているそうです、恐らくは魔女の仕業かもしれません……もし、見かけたらすぐさまその場からお逃げ下さい。C級のラビアスタ巨体種が、極めて稀な氷結状態で見つかったとの事ですので……」


受付のお姉さんは、ブルっと寒気を感じたように身震いして言った。




え……なんか身に覚えがあるような……


いやいやいや……でも、氷属性魔法とかこんな世界ではあるあるだろうし……




「ままままままじょ!!!!ですか!!!」


ラシは魔女と聞いて卒倒しそうになっている。




「どしたのラシ?ラシみたいな魔法使いの人となんか違うの?」


魔女も魔法使いも同じ感じがするけど……




「全っ然違うよ!!!魔女と女神は、一流の魔法使いとかより数段次元が違うんだから!!!例えるなら、勇者とか魔王の上に位置する存在だよ!!!」


ラシはプルプル震えている。


なんかこの子、ビビりで可愛いな。


てか、そんなレベルならやっぱ勘違いだよね。




「へー、やっぱラシ物知りだね!でも、大丈夫だって、魔女がモンスターでもない冒険初心者の私達なんて絶対相手しないしない」


私は、体をくねらせ、ラシの肩をモミモミとする。


ラシは、戦闘に行く前から泣きそうになってるから。




「……うん、そうだよね」


ラシは、不安そうに涙目になりながら笑った。




「へーい!しないしない!」


私は、腕をクロスさせバッテンを作って微笑んだ。






巨大都市の外れ、草原――




ここは私が、最初転移した場所の近くだ。


相変わらず懐かしいような匂いで、勢いのある風が吹き、青々とした草が何処までも続いている。




「あ、冬火!あの木の陰に、ミルクスライムがいるわ!」


ラシは空間から、ぼろっちい木の杖を魔法で出現させた。




ちょっと想像と違うな。


私んちにあった布団叩きの方が、性能良さそうだ。


でもきっと、すごい魔法とか放てる、わかる人にはわかる一品なんだろうな。




「じゃ、じゃあ私どうすればいい?」


私は、パーティーでの戦闘が未体験過ぎて、ツインテールを揺らしてテンパるしかできない。




「冬火は、私の後ろに隠れてて絶対守るから!!」


ラシはかっこよく眉を吊り上げた。


可愛らしいラシの顔がシャキーンって変わって、ちょっとウケた。




でもさ、目の前にいるのって……


デザートみたいなもんじゃない?




「ありがと!じゃあ任せる」


でも、もしかしたら危険かもだから、先輩に合せよう。それができる後輩ちゃんの使命だ。




私とラシはミルクスライムに近付く。






そして私は次の瞬間、衝撃を受ける事になる……




「えーーーい!」


ラシはそう言って、あろうことか魔法では無く、まだ駄菓子屋のおばあさんの杖の方が威力がありそうな杖を掲げて、ミルクスライムを叩きに行った。




物理……




ミルクスライムは、微妙に遅いラシを簡単にかわし、ラシの背中に向かって、ジャンプ体当たりした。


ラシの背中はミルクだらけだ。




「きゃーーー!」


ラシは転んで尻もちをついた。




ラシよっわ!!!!!!


命の恩人にそんな事思いたくないけど、ラシよっわ!!!


てか、助けなきゃ。




「フユカちゃーんキーーーック!!!」


私は助走をつけて、セーラー服のスカートをアイドルのように揺らし、ミルクスライムに、盛大な素人キックをぶっかました。




ミルクスライムは瞬く間に、輝く結晶に変化した。




「フ、フ、フユカーッ!!!すっごーい!!!」


ラシは転んだまま、目を見開いている。


リアクションが、伝説のドラゴン倒したそれなんだよな……




でも、強いも何も、ただの運動なんだけど……とは言わなかった。




「いやー!ラシが危ないって思ったら、あーしの足が怒りを抑えられなくってね!!必殺出ちゃったよ」


なんだそれと自分でツッコむ。




「やだ、フユカかっこいい!私本当は、パーティ全滅するかもって思っちゃったの……そう考えたら凄く怖くなって、足が震えて立てなくなっちゃって……守るとか言ったのに、ホントごめんね」


ラシは、艶やかなピンクの髪を陽に煌めかせて、悲しそうな顔で言った。




「ううん、全然大丈夫だよ。ラシが怖い時は私頑張るから。だってそれがパーティでしょ?」


私は、ラシに手を差しのべた。


ラシは、唇を噛み締めて凄く嬉しそうな顔で、私の手をとった。




そんなこんなで、私達はモンスターの結晶化と言う珍しいアイテムをゲットし、


ギルドへ帰還した。


討伐代と、ミルクスライムの結晶の換金代合わせて、5日分の宿代ぐらいになって、二人で万歳し、市場で夕飯を沢山買い、盛大に初仕事達成を祝った。

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