幽ノ坂 冬火、新武器をゲットする。
私は、いにしえの巨大都市近くの草原で一人、新武器の威力と使い心地を試している。
骨董品店の店主に加工を頼んでから、ほぼ二日で完成すると言う圧倒的スピードで驚いたが、それがドワーフの世界では普通の事らしい。
特にダガーなど、よく流通する物の加工パターンは決まっているので、あまり時間がかからないんだとか。
みんなにも一緒に見て欲しかったけど、ラシは例の回復術師の魔術書を熱心に読んでいるし、シュカは久々に自由な時間が欲しいと街をぶらついてるし、ゾディは男同士の恋愛小説という珍しい作品が発売したからと、おめかしして本屋に並んでいる。
ディーネはまだ色々な事が曖昧なので、気持ちを整理したいと言っていたのでそっとしといてあげた。
よって私は、この宝短剣ブリズディアの扱いの練習を草原で一人しているのだ。
この大層な名前は、加工したドワーフが名付けてくれたらしく、なんと骨董品店の店主は私が白銀の魔女だと当たり前に知っていて、この都市を守る魔女の武器を作ってくれとドワーフに頼んだらしい。
ドワーフはそれを名誉と喜び、もしよければこの名前で武器を呼んで欲しいと言ったらしい。
勿論、呼ぶよ。嬉しいからね、そう言う気持ちは。
で、この宝短剣なんだが思ったより大きかった。
持ち手と刀身を合わせて25cmくらいの長さで、幅も15cmくらいある。
ありがたい事に、皮のベルトとセットで渡してくれたので、腰辺りに横向きに差して、常時素早く出せるようにしている。
刀身は淡い黄金色に輝くオリハルコン製で、刃先へ向かうほど透明感が増し、グラデーションが美しい。
刀身中央の稜線には、精錬されたユニコーンの角から生み出された七色の宝玉が埋め込まれている。
宝玉から刃先へ向かって濃い虹色の導線が走り、魔力を伝導する回路を形成しているみたいだ。
持ち手は、ユニコーンの角を削り滑らかな棒状にしたうえで、オリハルコンの宝飾をうえから被せ、耐久性と芸術性を兼ね備えた感じだ。
この逸品は、私なんかが持っていて良いのかな?と思うぐらいの秘宝感がある。
「取敢えず太刀!!!」
私は、誰もいない草原でテンション高めな声を放つ。
私が太刀をイメージした瞬間、ブリズディアの刀身に眩い無垢白に燃焼する絶氷が巻き付くように現れ、瞬時に太刀の形を作った。
はやっ!!!!!
以前も遅くは無かったが、段違いの速さで七メートル程の巨大な刀が生成された。
そんな速さで作られたのに、純度の高い絶氷で、強力な属性でも凍結出来そうな雰囲気を醸し出している。
無垢白に磨きがかかり、ユニコーンの宝玉のように七色に燃焼しているオーラも時折出ている。
これは、ユニコーンの強い聖属性が付与されている可能性が高いかもね。
骨董品店の店主のオジサンもそんな事言ってたし。
禁術レベルや膨大なエネルギー量の属性魔法以外は、簡単凍結させて斬り捨てて無効化できるかもしれない……
「よし、良い感じ!!!次は盾だ!!!」
私は、ブリズディアが巨大な盾に変形するイメージをした。
それは太刀が出来た時と同じく瞬時に変化した。
六メートルの幅の厚さ持つ巨大な魔氷の壁。高さはミミック戦と同じぐらい。
「おお!!!ミミックの時より倍の幅じゃん!!!」
しかも盾にした途端、七色のオーラが強くなっている。
守るって言う意識から、付与された聖属性が強化されているのかもしれない。
という事は、呪術的な面倒な魔術も防げる???
これ大きいじゃん!!!みんなをより守れるかも!!!
「じゃあ次は、あれだな……」
私は、ブリズディアを氷で包んで空に飛ばす。
よし、変化――
「聖氷の大槍!!!!!」
私の無垢白の焔は、シューシューと悲鳴を上げるように渦を巻いて瞬時に変化した。
以前、中層のボスを貫いた、神族が扱うような荘厳な槍が再度顕現する。
しかし、その見た目は依然とは比べ物にならない程で尋常では無く、何もかも貫くドリルみたいな破壊的回転と、天衣のようにヒラヒラとしたオーラが幾重にも重なり、七色の十字閃光を無数に浮かべ続けている。
「やば……」
「ええじゃあ勢いに乗って大蛇!!!」
またもや、無垢白の焔は渦を巻いて変化し出す。
ちなみにだけど、私の中で、極氷、絶氷、超絶氷のランク付けだ。
白の純度が高まる程に威力が上がる。それを通り越すと揺らめきに銀味が増えて輝きがより強くなり、さらに威力は増す。
さらにさらに、澄んで半透明な部分が増え煌煌となると超強力で、絶氷という相手の属性すら凍結するレベルになる。
この辺は自分の感覚だから曖昧だが、そんな感じだ。
そうしている間に、私の目の前にここにいてはいけないような存在が顕現した……
白い大蛇の王。片方の瞳の位置にブリズディアがある。
かつて、S級の討伐モンスターすら超える災厄の骨の飛竜を、燦燦と月に輝いて轟きながら圧倒的な力で締めあげ倒した理外の存在。
あの驚異の召喚はさらに進化し、鱗が全て虹色になり、王冠を被ってしまっている……
草原のモンスター達は一斉に何処かへ消え、いにしえの巨大都市の上空で箒に乗った魔術師集団がこっちの様子を伺っている。
「ごめん……せっかく出てきてくれたのに……みんな怖いみたい」
私は白蛇王にそう言った。
白蛇王は頭を私に近づけてきたので、よしよしと撫でた後、霧散させた。
この感じだと、間近で見た災厄の骨の飛竜も再現出来そうだけど、流石に問題になりそうだからやめておこう。
恐らくは、私の心に強く残って、尚且つ仕組みが分かり、大き過ぎないモンスターなら形には出来るんだろう。
しかし、その強さは私が心底納得して作っているだとかの微妙な心の相性によってかなり変わるのだと思う。
私は蛇がとても好きで、小さい頃図鑑などでよく見ていたし、マスコットもカバンに付けていたぐらいだから、あれ程の力を発揮したんだと思う。
何はともあれ、新武器は本当に作って良かった。
上手く行けば、倍ぐらい強くなったかもしれない。




