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幽ノ坂 冬火、空を飛ぶ。



「なぁ、これここにぶっ刺していいか?」


ドアドラがコックピットの細長い鍵穴のような所に、いにしえの宝剣を突きつけている。


この男は、一つ気になるとそればかり考えるタイプだと思われる。




「やっちゃいなよ。どうせこのままじゃどうにもならないし!」


リチェがポンポンと船体を叩く。




「でも、爆発とかしませんかね……」


ゾディがオロオロして後退りする。




「ここまで来て大爆発エンドは流石に笑えるよ」


ソレイが珍しく笑いながらツッコんだ。




「よし!じゃあやるわ!」


ドアドラは我慢できず、いにしえの剣を細長い鍵穴へ差し込んだ。





それは一瞬の出来事だった――


飛空艇は、瞬時に機械音で唸りだし、コックピットのボタンが点滅し、モニターに色が付いて起動し出した。


まるで、息を吹き返したみたいだ。




「うおおおお!すげーーー!]


ゲイドがドアドラに駆け寄りハイタッチした。ドアドラは鼻を擦って得意げになってる。




「飛びそう……」


ルヌが私の袖をちょびっとつまんだ。よしよしと頭を撫でてあげる。




ミゼリア王女がモニターをじーっと見て言った。


「この点は、いにしえの巨大都市じゃないですか?」




ミゼリア王女がその点をタッチした瞬間――


ウィイイイイイイン!!!!!


飛空艇は飛行魔術のように静かな音で浮遊し出した。




「お、おい!ミゼリア何した!」


ドアドラが叫びながら船体につかまる。




「きゃーーー知りませーん!王都っぽい所をタッチしただけですぅーーー!」


ミゼリア王女は頭を抱えてしゃがむ。




「滅亡です!!!滅亡するのです!!!」


ゾディの極端な悲観思考が始まる。




「滅亡はいやーーー!!!」


ラシも巻き込まれ思考が発動する。




「お、落ち着け……君達」


ソレイは微妙にビビっている。




そんな中、飛空艇は高らかに空を駆けあがり草原が遠くに見えだした。


その光景はまるで天空の塔にいるみたいで、普段見渡せない景色が360度終わりの無いように広がっている。


いにしえの巨大都市を遥か超えて、砂漠、密林、山岳地帯、枯れ果てた大地、それら目に入る果ての無い光景に、ここにいる全員の世界観が変わっただろう。




「きれい……」


ディーネがレモンイエローの瞳を輝かせ胸に手を当てて言った。




「こんなに広いんだ……世界」


リチェが吹きすさぶ天の風に漆黒の髪を揺らす。




ミゼリア王女は手で口を押さえ、その光景にポロポロと涙している。


アルメヒがその肩を抱く。


そして、飛空艇はどんどん王都に近付く。




「やべぇ、王都にぶつかるぜっ!!!バ、バ、バリアとか言ったな、押すぞ!?」


あまり速度も速く無いのに、ドアドラがテンパりながら勝手な行動を取ろうとする。




「やめたまえ適当は!!!」


アルメヒが手を伸ばす。




ポチ――




「……押しちゃいましたね」


シュカが変な顔で腕組みをして言った。




「滅亡なのです……」


ゾディは予言者みたくそう言って、ラシと抱き合いながら小刻みに震えている。




「だっ、だって!!!」


ドアドラがそう言った瞬間……




フィン―――


飛空艇の周りに、ミゼリア王女のバリアに酷似したバリアが飛空艇を覆った。




「そう言う事か……」


ソレイが再び、再びそのボタンを押すと一瞬でバリアは解除された。




「これ、めちゃ凄くないですか!?」


私がみんなに言うと、幾人かは恐怖しながらも感心している。




「めちゃって何……?」


ルヌが私の袖を何回も引っ張り、その度に一人で「めちゃ」と繰り返している。




「じゃ、じゃあこっちも押すか!?」


ドアドラがもう一つのボタンに手をかけた瞬間――




「ダメです!!!!!そっちは攻撃と書いています!!!!!」


ミゼリア王女が珍しく怒り、ドアドラに抱き着いて止めた。




「おっおう……」


は?ミゼリア王女に抱きしめて貰って頬赤くしてやがる。


しでかして怒られてんのに嬉しそうなん、頭おかしいだろ!


ドカッ――


アルメヒがドアドラの肩を軽く殴り睨みを利かす。


「よく考えて行動しろ!!!馬鹿者!!!」




ドアドラはソレイに助けを求めたが首を振られている。




「ご、ごめんなさい」


灰髪のデカいチンピラ吸血鬼はペコリと頭を下げ、しょんぼりする。




「よく謝れまちたねー」


リチェがポンポンとドアドラの頭を撫でた。


妖艶なスタイルとその行動の合わせ技は、私もいつかやって欲しいなと心から願った。




そうこうしている内に飛空艇のスピードは落ち、高度を下げながら王都の目の前へと近づいている。




「自動運転だったね」


私がそう言うと、ソレイが「なにかなそれは?後でじっくり聞かせてね」と寄って来たので、ちょっとめんどくさくなりそうだ。




そして飛空艇は、いにしえの巨大都市の真ん前で静かに着陸した――




「はぁー!楽しかった!また乗りましょっ」


シュカがグラビアのポーズのように大きな胸を反らし伸びをする。




「そうね!でも、今から忙しいわよ!?」


ミゼリア王女がみんなに言う。




「ん……?」


私は首を傾げる。




「まずは、試練の大迷宮の制覇をみんなで盛大に祝いましょう!お祭りなんか開いてもいいかもですね!それに、ダンジョンで拾ったアイテムの鑑定も山積みです!


あ、お風呂に入りたい人、たらふくご飯が食べたい人は自由に宮殿を使って下さい、大歓迎致します!とにかく皆さんお疲れさまでした!今からは休息タイムです!!」


ミゼリア王女が白い指をピンと立てて、あざとくみんなにウインクする。




そっか、アイテムあったんだ。


私はポケットにある、中層のボスから貰ったオリハルコンっぽいギザギザの鉱石を握りしめた。




その時だった――




「やるよ」


ドアドラが、私にユニコーンの角を差し出している。




「え、なんで?欲しかったんでしょ?」


私は突然の出来事に困惑する。ドアドラの顔が少し赤い。




「別にもういいわ……全員無事で帰れたしな……」


ドアドラは頭を掻きながら恥ずかしそうにする。




「あ、ありがとうドアドラ!」


私がにっこり微笑むと、ドアドラはしきりに鼻を擦り、ぷいっと背を向けて街へ消えて行った。




「珍しいな。ドアドラが女性にプレゼントを渡すの、初めてみたよ」


ソレイが学者のように言う。




「そういうの言わない」


リチェが呆れたようにソレイに言った。

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