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幽ノ坂 冬火、泣く。



「皆さん、ようやくここまで来れましたね……」


ミゼリア王女は、試練の大迷宮の最終ボスを見上げて言った。




「にしても派手だね。如何にも最後のボスっぽい」


リチェも見上げながら笑う。




「竜か……」


アルメヒのオーラが変色する。一歩前へ出た。




「きっとあの大きな棺みたいなのが最後の報酬ですよ!!!絶対勝ちましょ」


シュカがはしゃいで、最奥にある夜空の星のような彩の棺を指差した。




「やっか」


ドアドラは多くを語らず、ただ見上げている。


その背中はいつしかRPGで見た、勇者そのものだ。




「ボクは正直……ここに来れるとは思ってなかったんだ……でも間違いだったよ。


ただの思い込みだった……良い間違いだったけどね」


ソレイの顔は清々としている。




「ここまできたら、勝つしかねー!!!以上だ!!!」


ゲイドは背負った者達の為に、並々ならぬオーラを放ち出した。




「私、絶対皆さんを守りますから」


ラシは既にバフと回復の光円を出現させている。


その瞳は私と同じく、新たに広がる世界に、動揺しながらも待ちきれない目だ。




「こわ……くないです。皆さんがいますから」


ゾディは勇者の剣を握り、剣から赤黒い暗黒エネルギーをビュインっと放出させた。




「みんなと戦うの楽しい……」


ルヌが強大な存在を見ながらも、嬉しそうな笑みをこぼしている。





私は仲間全員を誇らしく見た――







あれ……




私、なんで今こんな状況なんだっけ?




あっちの世界では何も上手くいかなくて、いつもふざけて誤魔化してばっかで……


挙句の果てに、変な魔法陣踏んじゃって……




でも、この世界のみんなは優しくしてくれて……


私なんかを信じてくれたりもして……




毎日が楽しくて、夢とかも出来たりして……




いつの間にか、みんなが大好きになって……




これって、あれだよね。




負けちゃダメな奴じゃん。




心の底から、今、私生きてんじゃん。





「みんな……ありがとう」


私は、まだ勝ってもいないのにお礼を言った。




みんなが私に視線を向ける。


私の事を見て笑っている。


しかし……


その笑いは、前の世界のクラスメイト達がしてきたようなモノでは無かった。


嬉しくて、胸が高鳴り、体が熱くなるような、仲間だけがくれる笑顔だった。




「泣いてんじゃねーよ冬火っ!!!行くぞ!!!」


ドアドラがそう言った瞬間、私達の前に君臨する存在は、破滅的な雄たけびを上げた。





オパールのような鮮やかな色の鉱石で出来た至極硬そうな体。


三十メートルはある、塔みたいな長さの巨体。


それは、体を自由自在に虚空に泳がせる蛇竜だった。


長き眠りから覚めたように、体と同色の七色のブレスを狂ったホースみたくあらゆる方向に吐きまくっている。





「うん……私…………うんっ」


私は誰よりも前に出て、全力で魔氷の壁を生成した。

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