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幽ノ坂 冬火、跪く。



「もーーー!!!心配したよゾディゾディゾディイ!!!(ぶちゅぶちゅぶちゅ)」


私はゾディに抱き着き何回も頬に吸い付く。




みんなは、先程の戦いの反省や、ゾディに「ありがとうな」など言いながら、獲得した二つの宝箱を開けて、さて、どうするものか?と迷っている。


ラシは、みんなとそうこうしながらも、ミゼリア王女に貰った魔術書を立ちながら熱心に読んでいる。




「わかりましたって冬火さん。もう大丈夫ですから私!!!これみよがしにチューし過ぎです!!!」


ゾディがくっつく私を、うーうーと唸りながら引き離そうとしている。




「よくやったぜチビッ子。にしても、お前あんな技まで使えたのか?」


ゲイドは報酬で獲得した獅子王の小手を手に嵌めている。プラチナのような輝きに獅子の顔と牙が美しく彫刻されている逸品だ。




「いえ、気づいたら出来てました。新しい感覚の扉が一気に開いたような妙な感じです」ゾディは中型の勇者剣を腰から引き抜き、不思議そうに眺める。




「わかるー、限界みたいな気持ちの時に一気に出来るようになる時ってあるよね」


私はゾディの頭をなでなでして、うーん大好きと抱き着く。


過剰では無い。この子は誰よりも怖がりなのに、それを乗り越えみんなを救ったんだから。




「ゾディは私達の事を、気持ちが限界を超える程、大切に思ってくれていたんだね。本当、助かったよ……ありがとう」


アルメヒもゾディの頭を優しく撫でる。




「はい……仲間なので」


ゾディは頬を真っ赤に染め、俯いては地面の小石を蹴っ飛ばす。


アルメヒはそれを見て穏やかな笑みを浮かべている。




「えらいえらい……」


ルヌがゾディの肩をキツツキみたいにツンツンと突っつきまくっている。




そんな時、まるで流れ星みたいな速度で、シュカが私達の隣まで、点々と宙を蹴り飛んで来た。


「見てくれよこれ!!!貰っちった!!!」




シュカの腕には、透き通る緑色のブレスレットがついている。表面には文字と言うより絵が描かれている。




「へー、変な文様だね」


私は、目を凝らして見る。




「ミゼリア様曰く、精霊の言語らしいよ。風の精霊だって!」


シュカは凄く嬉しそうに宙を蹴って飛ぶ。相変わらず飄々として自由気ままだ。


発色の良い緑の髪と抜群のスタイルのせいで、超自然的な存在にも見える。


風属性の黄金の秘刀だけでも、シュカの速度は信じられない程向上したけど、純粋な風の祝福の腕輪なんて付けたら、一体どうなっちゃうんだろうか……




上空を見上げると、一瞬だけシュカの気配が本当に無くなって、黄金の煌めきだけがキラリと光っていた。まるで黄金の麦畑に風がそよいだような静かな速さだった。




すると、ミゼリア王女がこっちに来て、他のみんなもぞろぞろ集まって来た。


ミゼリア王女の手には古い石板がある。




「皆さん、ちょっと手伝って欲しい事があるのだけれど」


ミゼリア王女はみんなを見渡し恥ずかしそうな表情でソワソワしている。




「どうしたんだい?ミゼリア」


アルメヒが、はて?と聞き返す。




「宝箱に入っていたこの石板はね、恐らく、いにしえの存在との契約書なんだけれど、どうも雰囲気がおかしくってね……。まるで王命の魔術書みたいなニュアンスで書かれている箇所もあるの。例えばね、「選ばれし者達を背後に従えろ、この力は其方の王格によって決まる」みたいな事が書いてあるわ……だから……その……」


あぁ、そう言う事か。私に跪いてってキャラじゃないもんね。


というか、ミゼリア王女は神獣契約だけじゃなくって、この地にまつわる古い存在との契約も出来るってことか……さすが王女様だ。




「みんなやろう。もしかするとこれはミゼリアだけに許された非常に強力な契約かもしれないからね……」


ソレイが、考古学者の様に石板をあちこちみている。




「いいぜー何処座ればいい?」


ドアドラ、ノリ、軽……


跪くんだよ?何座ろうとしてんのよ。




「やろうやろう!ミゼリアなら絶対大丈夫!さっさとやっちゃお!なんかあったらみんなで守ってあげれば良いし」


リチェはミゼリア王女に絶対の信頼を置いている。


どういう経緯で出会ったのか偶に気になる。




ラシは話を聞きつつも、例の魔術書を読んで頭を悩ませた顔をしたり、ハッとした顔をしている。薄ピンクのロング髪をわしゃわしゃ掻いて、困惑している姿がかわいい。




「おーいシュカ!!遊んでないでこっちこーい!!」


私は、一人だけ飛び回るシュカを大声で呼んだ。




「ほーい」


シュカはささっと戻って来て、なんの話?とゾディに聞いている。




「取り敢えずみんな、ミゼリアの後ろへ集まってやってくれ」


アルメヒがそう言うと、みんな続々とミゼリア王女の後ろへ回り跪き始めた。




「ルヌ逆だよ」


私は、一人だけ違う方向に跪くルヌに言った。




「ふふっ……」


あーボケだったのか。本気だと思った。




「ちょっと……これ恥ずかしいわね……」


ミゼリア王女は顔を真っ赤にし、私達にお辞儀した。


この場において、いやいや跪く者などおらず、これはいにしえの巨大都市の民もそうなんだろうなと私は予想が出来た。





そして、ミゼリア王女は艶やかな水色の長い髪と、細い背中を私達に向け、古風な響きの呪文を唱えだした。


その最後辺りに「……プランセス・オルデイナ」と言って、手に持つカラフルな文様が入った長いロッドを大きく掲げた。改めて見ると、王家に受け継がれしロッドって感じだ。


すると、先端のクリスタルの宝玉から四方八方にプリズムの光が伸び、フロアの地面を照らしたと思えば、輝く湖面のような空間を顕現し出した。




あまりの神秘的な光景に、一同全員、息を呑む。




だが、驚くのはまだ早かった。




そこからは、百体程の存在が顕現したのだ。


先程戦ったナイトの軍勢に似た、古い文様が鎧に刻まれた黄金の強兵達。




「……いにしえの兵……」


ミゼリア王女がそう言った後、ミゼリア王女の目の前に、更なる存在が現れた。




将軍のような出で立ち。


プリズムが輝くクリスタルの鎧を纏い、真紅のマントたなびかせた存在。


手には、とても大きな刃が前後についた宝大槍を持っている。




ミゼリア王女は、緊張した声で強兵達に何かを言おうとして、手をかざす。




すると、その手の先にプリズム色の薄いバリアのような物が現れた。




それを見た、目の前のクリスタルの将軍は、ピタッと止まりミゼリア王女を凝視した後、宝大槍を地面に二度打ち付けた。




次の瞬間、百のいにしえの黄金強兵達と、歴戦のクリスタル将軍はミゼリア王女へと息を揃え機敏に跪いた。




沈黙がフロアに宿る……




「これでいけるね最下層」


ソレイが珍しく、ふふっと笑った。



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