幽ノ坂 冬火、試練の大迷宮へ行く。
私達パーティーとS級冒険者達とゲイド単体で、とうとう試練の大迷宮にやって来た。
試練の大迷宮へは、以前ハンドレッドゴーレムと戦った神殿の隠し通路から地下に降りて入れた。
各階層を制覇すると、入り口から最下層まで直線で繋がるショートカットの階段の道と、その階層が繋がるように出来ているらしく、中層までは敵が出ず、ごく短時間で進めた。
しかし、中層以降の先への道は、巨大な魔術結界が施された石壁が階段の行く先を閉ざし、行き止まりとなったので、私達はそのまま中層のダンジョン内へと足を踏み入れた。
ボス前のようにやけに静かな幾つかの小道を抜け、曲がりくねった階段を降りた先に巨大なフロアが現れる……
中層、大空洞――
学校のグランド程の大きさと、高い天上のその場所は、見るからに中層ボスフロアのようで、既に敵がわんさかいた。
私達は通路の陰からそのフロアの様子を伺う。
全身が回転する鋭い歯車で出来たような、三メートル程の機械みたいな剣士が100体以上いる。
さらには中央に、全身が真っ白なぬいぐるみのような見た目の、歯車特大剣を持った二十メートル程の未知の剣士が一体いる。口だけはありゴーゴーと宙に火炎を撒き散らかしている……
「久しぶりですね、ここ……」
ミゼリアがまさに王女様らしいロッドを抱えて言う。ロッドには古風な幾何学文様が描かれており、その上をカラフルな光が脈打っている。
他のS級冒険者達は頷く、とても真剣な顔だ。
ここまでしか進めてないという事は、ここで一回敗北したんだろうから当然だ。
暗い過去があるのかもしれない……
「相変わらず太々しい見た目だぜ」
ドアドラが中央の巨大剣士を見て言った。
ドアドラの背中の翼膜には、血色の稲妻が走っている。
「腕が鳴るぜ」
ゲイドは体中から白いオーラを放ち、両手には輝く玉のようなエネルギーを溜めている。
ソレイが私達に体を向けて言い出す。
「冬火達は、とにかく僕達の戦い方をみながら出来る範囲で動くんだ。四人でかたまり、とにかく冬火を死守する事が現状一番安全だ。ラシはなるべく広範囲に回復魔法の光円を広げ、いつでもメンバーをサポート出来るようにし、シュカは地も宙も含め自分達の範囲に入った敵を瞬時に退け、ゾディは盾で冬火を守りつつ、勇者ルビエラの暗黒属性剣で大胆に目の前の大群を薙ぎ払うんだ。冬火はさらに広い範囲で敵を見て、遠隔攻撃の敵を最優先に、次に敵の塊が多い場所、緊急時は目前の敵と、リズムよく盛大に凍結させていってくれ」
私達は熱心な生徒のように、力強く頷いた。
「まっ、リラックスしながらやりなよ。あんた達の技を見るに焦らなくても十分通用するだろうしね。逆に焦って乱れるとしくじるわよ。私達も、あんた達の事をちゃんと見て動くつもりだからね!とにかく落ち着いてけ!」
リチェは、小型ナイフに魔術で生成した毒のようなものを塗り付けた。
その瞬間ナイフは、とても不穏な気配を漂わす……
まるで、邪竜の牙だ……
「とにかく生き残る事を考えろ、慣れぬ内は無理をしてはダメだよ」
アルメヒがそう言った時、アルメヒの片方の瞳は竜の様になっていた。
更には、特大の大剣の形がまるで黒龍のかぎ爪のように変化し、刃から焦げ臭い火花を散らし出している。
ルヌは空間に半透明の黒いジェルのようなモノを出現させ、その中に無数の大小の目玉を出現させた。そしてボソッと言った。
「大丈夫、ちゃんと見てるからね……」
大量の目玉が私達を見る。
「きゃあ!」
シュカはかつて腕を拘束されたそれに、悲鳴をあげる。
「ちょっとシュカ!声でかいって!!」
リチェがそう言った瞬間には、歯車剣士は一斉にこっちを見ていた。
「じゃっ、行きましょうか……」
ミゼリアが静かにそう言うと、一斉にS級冒険者達はフロアに飛び出して行った……




