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幽ノ坂 冬火、自由を満喫する。


「ひゃっほーです!ぶーーーん!」




私は異世界の大草原を、一人ハイテンションになりながら、疾走している。


自分が、現代の日本から別の世界へ来た事を肌で認識してからは、ずっとこの調子だ。


快晴よりまだ気持ちの良い、青が幻想的な空。


それに浮かぶ雲は、天空の世界すらあるんじゃないかと想像させてくれる。


青々と陽の光で輝く草原は、何処まで続きそうだし、寝転べばフサフサ柔らかい。




「あぁ、わたし幸せ……うっふふー」


映画で見たお姫様の真似をしてみた。




あのまま通学してたら、きっと今、数学とか歴史とかの授業受けてたんだろなー……


例え私が、一生何かの勉強をしても、この世界の感覚は会得できなかっただろうね。


やっぱ、あったんだよ。私達の知らない幸せな世界が!


ゴーゴー未知!!いいぞいいぞ未知!


魔法陣……踏んでみるもんだね!




私は、高めツインテールをゆさゆさ揺らしながら、草原の上を、腕と腰をシェイクしながら小躍りする。




「あ、そだ。今何時かな?」




スマホを取り出した。


52:89……


バグってんじゃん!通信も繋がってないし!


もはや、いらなーい!ぽーいだ。


私は、スマホを草原に放り投げた。




「さて、これからどうしましょっかねー……」




無駄に女の子らしい体だから、体力全然無くって、走って疲れちゃったし。


もっと、勇者みたいなゴリゴリの体力お化けの肉体が良かったとか偶に思う。


まぁ……でも、生んでくれたママに感謝だね。




あ、そっかママにももう……




……




まっ、いつか帰れるでしょ!


宝くじ当てたのに落ち込むのは馬鹿だよね。そう馬鹿馬鹿!


至高の土産話を沢山持って帰ってあげたらよいのじゃ!のじゃのじゃ!




てか、はしゃぎすぎてお腹空いた。


お昼のお弁当食べちゃおっかな?


でも、よく考えたら私の持ち物、お弁当と教科書、財布(200円)だけなんだよね。


食料、後、半日分じゃん……


……


でも、どうにかなるよね!異世界だもん!




ここまで余裕をこいてるのには、一つ理由がある。


感じるのだ。


私の中にあった力が解放されたのが。


あの、腕沢山おじさんが最後に言ってた意味が、体の感覚として理解出来ている。




「とりあえず、私の能力ってなんなのかな?……よしっ物は試し!とりあぜずやっちまおう!さーて、何が出るのかなぁー?ふんふんふん」




私は、両手を前に出し、掌を上に向けた。


意識を集中し、鮮明にイメージする。


自分の中に燃える何かを顕現するように……




次の瞬間――




メラメラと粘着質に燃える、白い炎が現れた。


でも、炎っていうのとは全く違くって、氷より冷たい何かが、激しく燃焼してる感じだ。


結構自由に操作できるし、剣や盾みたいな形にも出来るし、まずまず広範囲にも放出できる。


私自身は冷たくないけど、これに触れた草が、瞬く間に氷の世界みたくなって、氷結しながら激しく燃焼している……




これを見るに、モンスターや暴漢が来ても、ある程度は大丈夫かもしれない。


赤目で真っ白な肌、冬火フユカという名前、白銀の焔。


なんか、運命感じちゃってます私。ふふふ。


イェイイェイイェイ!私、魔法少女になっちゃったかもしれませーん。





気のせいか、この能力を使うと、草原にいたモンスター達が、避けるように何処かへ消えて行く。


まるで私が暴走族でもあるかのように……


ブンブーンだぜベイベー、お菓子寄越せー!!なんてね。




あ、そだ。


この世界、滅茶苦茶モンスターいます。


異形と言っても良いんだけど、この世界のそれらは、ゲームとかで見るモンスターにかなり寄ってるので、やっぱりモンスターと呼ぼう。


でも、可愛らしいモノでは無く、結構大きくて迫力がある奴が多い。


例えば、私を食べようとして少しずつ近寄ってる奴は、ゾウにワニを混ぜた様な感じの大型モンスター。まるで、海外のB級ホラー映画さながらな見た目だ。


ここで食べられてエンドなんて絶対ヤ!




私は、そいつに近寄る。


堂々、スタスタと。


そいつは巨大な口を開け、針山みたいな無数の歯を私に見せ、鼓膜が震える雄たけびを上げてきた



あー五月蠅いな!静かにしてよ!脳筋!


私、ちょっと怒った。




「冷たい炎いかがですか!?」




私は反射的に、高出力で能力を放出した。


その凍てつく白焔、思いの他尋常では無かった。


周囲の大気が、シューシューと悲鳴を上げて渦巻き出し、近くの木々も、目の前のモンスターも、私自身も、一瞬で全て飲み込んだ。


それは、神秘的に輝く白銀の絶界のような景色だった。




……うぅ……ちょっと、やばいやつかも。




「ご、ごめんなさいっ!!ワニゾウさん!きっと今日は天気だから、すぐ溶けるよ!じゃ、じゃねー!」


私は、そう叫び、すぐその場から退散した。





ふー危なかった、行商人に見られなくて良かった……


と言うのも、先程から、ほぼ人っぽい存在をたまに見るのだ。


髪色や背丈が違うが、もはや人だ。


そのみんなは総じて、さっきから見えてる、あの宮殿がある王国みたいな所へ向かっている。




「私も、あそこ行って見るか」




よくあるギルドみたいなのもあるかもしれないし。


お弁当食べてから。




私は、お弁当を食べた後、ツインテールを高く結い直し、草原の綺麗な花を摘みながら、ルンルンと王国へ向かった。




ハイキングかよ私。




でも、もし、パーティーとかが出来るなら、優しい人達がいいな。


私は、荘厳な雰囲気の、いにしえの巨大都市を前に、これから始まる物語に、思いを馳せていた。

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