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幽ノ坂 冬火、自分を思い出す。



前回の後、私達パーティーは、S級冒険者達と今後について、酒場で座りながら話し合っていた。


私は、こんな事態になってしまったので、きっとこの国の為に命を懸けて戦っているだろう先輩冒険者達に、私が魔法陣を踏んでこの世界に転移してきたところから今に至るまでを、事細かく全て話した。


そうすると、他の仲間達も私と同じように、自分達が何者なのかなどを包み隠さず話し出した。


S級冒険者達は、不思議そうな顔をし、神妙な顔もし、時には笑いもしながら、私達の話を聞いてくれた。


そして、全ての話が終わった時、私達が出会ってパーティーになったことはやはり偶然ではないな、と言うのがS級冒険者達と私達の結論であった。





「魔女、回復術師、刀王の末裔、勇者ルビエラの末裔……ですか、尋常じゃないですね……」


ミゼリアがそう言った時、S級冒険者達も満場一致で頷いていた。


どれか、一つの称号がパーティーにいるだけであっても、理解出来ない程に珍しい事らしい。






そんな時だった――




「そう言う事か!話は聞かせて貰ったぜ!俺も、そこに混ぜてくれ」


そう言って、私達のテーブルに大口を開けて笑いながら、近づいて来たのは、以前、アネヌーヴァ超個体との戦闘で、命懸けで守ろうとしてくれたA級冒険者の赤髪のリーダーの男だ。




「あなたは!口の悪い冒険者さんじゃないですか!」


ゾディがむーっと睨み、声を荒げだした。




「すまねぇなチビ。でもあれは事実だろ?ハハ」


からかうようにゾディに突っかかる赤髪の男。




「よせ、ゲイド。とりあえずそこに座るんだ。あと、あんまりその子をからかってやる」


アルメヒはやれやれと言う顔をしている。たぶん、いつもこんな調子なんだろう。




「あいよー。チビ、よろしくなっ!」


ゲイドはゾディに握手を差し出した。




「ふんっです」


ゾディはそっぽを向く。




「話を戻すと、冬火、君は賢者の禁術によって、この世界に転移し、魔女の力が覚醒したんだね?」


ソレイが冷静な顔で要約した。この吸血鬼青年は、きっと私が以前居た世界なら、一流の男性アイドルすら及ばない人気を博していただろうと思う程の風浪だ。


男興味無いけど。




「そだよー」


私はふんふんと頷く。




「軽っ!ふふ」


リチェが掌に顎を乗せて、私を吟味しているかの様に眺めている。


蠱惑的なシーフって感じ、ゲームでよく使ってたキャラみたい。




「その賢者は一体何者なのだろうね……」


ソレイは少し怖い目をした。




「でもまずはお礼を言わないといけませんね。忌まわしき遠吠えの魔王ゲドネオンが送りし、災厄の飛竜を退治して頂き、誠にありがとうございました。国民に代わり、王女として心からの感謝を申し上げます」


ミゼリアが私に向かって、目を閉じて厳粛に一礼した。




魔王ゲドネオンってなんだろ……?


あの骨の飛竜ですらただの手下だったわけ……?




「あぁ……どういたしまして……まぐれですが」


私はツインテをくるくる回しながら言った。




「まぐれか……恐ろしい子だな」


アルメヒが、ふふっと笑う。




「戦闘経験皆無で僕等でも討伐困難な災厄の飛竜を倒し、1000年級の封印をあっさり解くとは……」


ソレイは頭を抱えて信じられないと笑っている。




「そんなレベルなのにコイツは究極的な馬鹿だぜ。きっとそのうちマジでヤバイ事しでかすに金貨2枚賭けても良い。もうしでかしてるけどな。ハハ」


ドアドラは、未だにちょっと突っかかって来る。




私は、ドアドラのせいで伸びた服の箇所を見て、ラシにコショコショと「ちょっとウザいね」と言った。勿論ドアドラに聞こえるように。


ラシも「ちょっと女の敵感あるよね」と私にコショコショと返した。


そして二人揃って、ドアドラを半目でじっと見た。




ドアドラは頭を掻いてやりずらそうにしている。




「好かれてよかったね、お兄さん、よっ男前!男前!」


シュカはドアドラの肩を笑顔で叩いて踊る。




「叩いちゃダメ……」


ルヌがシュカを見ると、シュカは急いで口笛を吹いて誤魔化した。




すると突然、ラシが想い出したかのように言い出した。


「そう言えば、アルメヒさんがさっき言ってた予言て、どんな予言なんですか?」




「ああ、そうだね、君達は知っておくべきだ。あの予言は、このいにしえの都市にまつわる古い言い伝えでね……『長き災厄が再び現れる時、あらゆる理外の者は、その剣を同じ虚空へ向ける。闇を貫けよ、選ばれし者共よ。その果てに、未だ何者も見ぬ世界が訪れるであろう。そこには、真なる光が宿らん…』……というモノだ。私は、君達がこの予言の鍵を握っているのではないかと考えている」


アルメヒは、琥珀色の瞳を鋭く光らせそう言った。




「壮大ですね……」


ラシは拳を握り、とても真剣な目をしている。




しかし私は、実感などあるはずが無く、とても他人事に聞こえる。


でも、一応しでかした事を反省してる雰囲気は出そう……


いつだって私はそうやってきた。


でも、本当にそれでいいのかな……?


「私に出来る事あったら言ってもらえば……」




自分の言葉はいつだって、無責任で嘘っぽい。




「あります!!!」


「あるね」


ミゼリアとソレイが、ほぼ同時に言った。




「あちゃー言っち待ったな」


ゲイドはフハハハと笑う。




「言っちまったな……」


ルヌは、ゾディの砂糖入りミルクを勝手に飲みながらゲイドの真似をする。


ゾディは注意出来ずにモジモジしている。




私はえ?何?とキョロキョロする。




ミゼリアは待ってましたと言わんばかりに、目を大きく見開き、嬉しそうに口角を上げ喋り出した。




「予言通りであれば、いずれこの都市はあらゆる存在に狙われるでしょう。


ですが、予言に記されている、試練の大迷宮を制覇する事で、それらの理外の存在達と対等に渡り合える力を得られるらしいのです。今までは私達でも中層までしか敵わなかったのですが、あなた達と協力すれば、きっと制覇できるはずです!」


ミゼリアは、えっへん!と立ち上がり私達全員を見渡した。




えーーー……試練……大迷宮……


並んじゃいけない二つ並んでるじゃん……




「協力ってなんだ!?こいつらはほぼD級だろ?どうやって協力すんだよ?」


ドアドラは、訳分かんねーと手を大きく広げる。


ここまでラフな吸血鬼ってのも二次元含めても初めて見た。




「そこは、私達S級冒険者の腕の見せ所なんじゃない?」


リチェが、口をにーっと開けてドアドラを嘲笑った。




「おこちゃまのおもりなんてしてられっかよ、魔王ゲドネオンすら責めてくる寸前なのによお」


ドアドラがさらにやってらんねーと言う感じで溜息をついた。


イヤな感じ。ムカつく。




「確かにおこちゃまだが、目の前で、あの理解出来ない魔術を見た俺が保証するぜ、このパーティーは今の所、魔王ゲドネオンを倒せる唯一の可能性があるってな」


ゲイドが誇らしそうに私達を見て言った。


買い被り過ぎだよ……




「私達にそんな力が……」


ゾディが自分の手を見る。




「おめーはまだまだだ、チビ」


ゲイドは乾いた笑いを上げた。




「あんた、ひど」


リチェがすかさず言った。




「あなた嫌いです!!」


ゾディは顔を真っ赤にして席を立ち、ゲイドに突撃してポカスカ叩いている。


もしかしたら逆に仲が良いのかもしれない。




「えー……じゃあまとめると、私達は試練の大迷宮と言う、S級冒険者達が制覇不可能なダンジョンを最下層まで攻略しつつ、魔王ゲドネオンも倒さないといけないって事ですか?」


シュカは目をパチクリとして聞いた。




「そうだね。でなきゃ、予言の成功ルートは消滅し、いにしえの都市は暗黒につつまれるだろうからね」


ソレイは淡々とそう言った。優しい顔して残酷な男だ。




「お前等のせいでな……」


ルヌはすかさず追い打ちをかけてくる。




「そんなぁ……」


私は愕然とテーブルに突っ伏す。




「違うぞルヌ、彼女達が封印を解いたのは事実だが、ここ数百年、このいにしえの都市はずっと災厄の前兆に晒されてきたんだ」


アルメヒがそう言うと、ルヌは当てつけのようにゾディの牛乳を一気に飲み干した。


ゾディは、金色の瞳を潤ませている。


ウチのバブを泣かせやがって。




私達四人は、とうとう沈黙して俯いた。




「そんな暗い顔をするな君達。何も君達だけでやれって話じゃないんだ。お互いに出来ぬ事を協力し合い、守り合いながら共に進んで行こうと言う話だ」


アルメヒが私達を安心させる風に言う。




「あー……マジで先が思いやられるぜー。そもそもこいつらにやる気あんのかよ?」


ドアドラは私と同じようにテーブルに突っ伏す。




「この王国は、いつだって先が思いやられていました。ですが今、奇跡的に眩い光が射しこんだのです。これは本当にすごい事じゃないですか!」


ミゼリアは興奮した様に言った。




「まーねー」


ドアドラは、チラッと私を見た。


ふんっだ。




「王女へなんて態度してんだよ」


リチェがドアドラに呆れる。ドアドラは真っ黒な翼膜をバサッと動かして返事する。




「だから皆さん、どうかよろしくお願いします、これはあなた達、選ばれし存在にしか出来ない事のです!!!」


ミゼリアは私達パーティに熱い視線を向けた。




「選ばれし存在ですか……」


ラシは王女にそう言って貰った事に反応した。




「そうです!!!選ばれし存在なのです!!!」


ちょっとだけ、セールスマンのような追い込み方だったが、私達はミゼリア王女直々のその言葉に表情が変わっていく。




いつだって、厄介者扱いや、誰にも必要とされない孤独な存在だった私達が、王女様にストレートに選ばれし存在と言われたら、やっぱり素直に嬉しい。




「勘違いじゃないですか?」


シュカが確認する様に聞く。




「いいえ!他にはいません!」


ミゼリアは笑顔で答える。




「もしかして……私でも勇者になれたり……?」


ラシが自信なさげに聞く。




「ええ!勿論なれますよ!」


当たり前です!とミゼリア。




「頑張ったら、みんなが褒めてくれるって事ですよね王女様?」


ゾディが恥ずかしそうに言う。




「ええ!何世代もその勇姿が語り継がれる事でしょう!」


ミゼリアは素敵なイメージをするように虚空を見上げた。




思えば、前の世界で私は、どの道将来なんて、フリーターかニートだろうな、と


自分そのものを適当に冷笑して、あらゆる事に真剣に向き合わなかった。


でも、心の奥底には、大切な一回の人生を振り絞って、誰にも出来ない事を成し遂げたいと思っていたんだ。




そうだ……今、それを思い出した。




私は弱い自分を周りに直視され笑われるのが怖くて、最初からギャグばかりしてふざけて誤魔化す性格になったんだっけ……


もうそれが染みついて分かんなくなっちゃってた。




今……


変わるチャンスなのかな?




「私が動けば、何か変わるのかな……?」


私が俯きながら、いきなり真剣なトーンでそう言うと、みんなが静まり返った。




ミゼリアは言った。


「ええ、あなたは全てを変えられる可能性があるわ」




私が顔を上げて周囲を見渡すと、そこには誰一人、私を笑ってはいなかった。




……




「私……やってみます」


その時には、一切のふざけのない、心の奥底の言葉が自然と私から出ていた。

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