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幽ノ坂 冬火、S級冒険者に詰められる。


魔法のランプから、火の星の王子アズヴァーンを復活させてしまった後、私達四人は


顔を真っ青にし挙動不審になりながら、いにしえの都市の酒場へ帰った。




テーブルを囲み、とりあえずジュースを頼んで話し合う私達。




「永い眠りから覚めた者、強い血を受け継ぐ者達が集まるって言ってたね……やばくない?永く眠ってる奴等って大概やばい感じがするんだけど……」


シュカはコソコソと、口に手を当て喋る。




「あの炎の化身、みんなを跪かせるとか言ってましたね……きっとみんな、毎日跪きながら、私達を睨みますよ」


ゾディは、終始キョロキョロとしながら言った。




「だってだって!!!知らなかったんだもん!!!私的に、もっと紳士的でそこそこの強さの便利な召喚が出て来るって思ってたのに。あんな、火山の中のプールで泳いでから、勇者や魔王にガン飛ばすのが日課です、みたいな奴だと思わなかったよ!逆に裏切られたよ!!!」


私は大袈裟にジェスチャーして、みんなに理解を募った。




「月底の魔女ルシシと異端の勇者ゼノロピに封印されたって言ってたね……私、その名前、言い伝えの絵本で読んだ見たあるの……」


ラシは淡い黒目を意味ありげに細めている。




「ど、どんな内容だったの!?あの炎何したの?」


私は、ツインテールが一周するぐらいの勢いで前のめりになってラシに聞く。




「炎の化身の事は書いてなかったんだけど……その二人は長い時を生きる災厄って感じで描かれてたわ、私が呼んだ本ではね。それで、魔王も勇者も神獣も王の軍勢も関係なく協力して封印しましたって終わり方だったと思う……」


ラシは私達三人を見て、何かを遠回しに伝えたいような顔をした。




「それじゃ、あいつは悪者に封印されたって事?悪者が悪者を封印したの!?どう言う事??」


シュカは頭を抱え、あー分からないと唸る。


微妙にスタイルが良くて露出が多いので、グラビアのポーズみたいに見えた。




「悪者すら引くレベルの荒くれ者か、悪者が危険視した良い者だったんでしょうね……」


ゾディは砂糖入りミルクを飲みながら金眼を光らせ、大人みたいな表情をした。




「お願いです!!!良い者であって!!!でなきゃ……私……私……究極の間抜けとして絵本で語り継がれちゃうから!!!」


私は、テーブルの上で手を組んで、ああ神様と祈った。







その時だった――




見るからにS級冒険者達であろう桁違い強そうな連中がこちらに向かって勢いよく歩いて来た。酒場でよく見かける吸血鬼っぽい見た目の集団だ。


灰色のボサッとした髪で長身の、黒い翼膜を生やした男と、同じくその系統で見目麗しい小柄な女の子、そしてこれまた同じ系統の中ぐらいの背の涼しい瞳の青年。


その三人はいずれも、太陽を知らない様な真っ白な肌で、血色の赤目だ。




長身の男が私達のテーブルの前に来るなり、私を見て鬼の形相で、私の胸ぐらを掴んで引きずり立たせてきた。




「きゃあっ!!!」


ラシが悲鳴を上げる。




他の二人は一瞬の事で唖然としながら、その男を見てる。




「うぐぅ……」


私は、男に初めて大胆に扱われた。




「なんて事しやがったんだ、ウスノロ!!!!!訳も分からずとんでもねぇバケモノ召喚しやがって!!!」


男は口が裂けそうな程に開いて怒鳴り、血走った目で私を睨む。


力が強すぎて全然動けない……




「や、やめろ!セクハラだぞ!」


私の隣に座るシュカが止めようとして手を伸ばす。




「ドアドラの邪魔しちゃだめ……」


ハーフアップで大きな赤いリボンを着けた小柄な女の子が、無表情でシュカに言った。


次の瞬間、シュカの手首にドロドロのジェルに小さな目玉が沢山ある魔術の手錠がかけられた。




「ぎょええええ。誰かとってぇーーー!」


シュカは拘束された腕を振り回し暴れて、ゾディに近付く。




「うわあああ、き、きもちわるいです!」


ゾディは、対面に座るシュカの手首を見てひえぇぇぇと声を上げてのけ反った。




「ルヌ、気持ち悪いって言われてるよ。ふふっ」


中背で中性的なストレートマッシュの髪型の青年は、一人だけ落ち着いたようにそう言った。




「ソレイうるさい……」


ルヌと呼ばれた少女は、仲間の中背の青年を静かに睨んでそう言った。




「いてててて、ホント痛い!とりあえず離してよ」


私は、ドアドラと呼ばれた男の手をグーグーと引っ張る。




「お前が得体の知れねー封印解いたせいで、何もかもおかしくなってんだこらぁ!!!反省してんのかぁ!!!」


ドアドラは一層力強く服を掴む。




「やめて!!!ホント服伸びるよ!!!」


ラシが立ち上がり、ドアドラを睨む。


威勢とは裏腹にちょっと視点が違う物言いに、全員が一瞬固まる。




「ふふふ。服が伸びるときたかヒーラーちゃん。君達のせいで古代遺跡が各地でざわめきだし、深層ダンジョンの未知のモンスター達が地上に上って来て、あらゆる何かがこの都市に不穏な目を向けてると言うのにね……」


ソレイと言う青年は優し気に語るが、その目はとても冷ややかだ。




私達四人は、その言葉に反論出来なかった……






「やめるんだ、ドアドラ」


そう言って現れたのは、金髪ロングの大剣を持った背の高いお姉さんだった。


優し気な瞳ながら、魔圧が滲み出ている程に圧倒的な鋭さでドアドラを睨んでいる。


その傍らには、同じくお姉さんで、目がぱっちりとした優しそうな水色の髪の魔法使いの女の人と、黒装束で黒髪のシュカ並みに露出度の高い、活発そうなショートパンツ姿のシーフのお姉さんがいる。




「あ……?アルメヒ、お前こんなとんでもぇ奴の肩持つのか?こいつのしてる事はお前達と正反対の事だろうがよ?」


ドアドラは未だに思いっきり私の服を掴んでいる。


背中に食い込んで、そろそろ本当に痛い。


私はちょっとだけ、奴の腕を掴む手の爪を食い込ませて反撃した。


そして、即行睨まれた。


……大人しくしてよ。




「そうだな……だが今回は、私達S級冒険者達の監督不行き届きが招いた事態でもありはしないか?このような事が起こる事は、皆、予測出来たはずだろ?」


アルメヒと言う女性は私を見て、物憂げな感じながらも微笑んでくれた。


ちょっとお姉ちゃんに似てる……雰囲気が。




「こんなバカの考え予測できるかよ!」


ドアドラが吐き捨てるように言った。


確かに……過去に誰かに全く同じセリフを言った。


給食当番で、スープを運ぶのが重いから、仲庭にちょっと捨てて見つかった時だったか……?




「でも、あんた達もその子達を尾行してたんなら止められるぐらい出来たでしょ?まさか魔女だから怖気づいて止められなかったとかじゃないよね?クハハ」


シーフの女性は、ソレイの頭をポンポンと叩いた。




「リチェ、そろそろ距離感の常識ぐらい理解してよ」


ソレイは、リチェと呼ばれたシーフを、目を笑わしながら睨んだ。




「まぁまぁ……とにかく起きてしまった事は仕方ないわ。私達同じ王国の同じギルド内の仲間同士で揉めてはいけませんよ。こんな時こそ協力です!」


水色の髪の魔法使いの女性は、慈悲深い優しい顔で前向きな事を言ってくれる。


なんか神秘的な人だ……




「ミゼリアの言う通りだ、もしかしたらこれは予言の通りかもしれないぞ?


仮にそうなら、私達はこれを乗り越える事で、あらゆる災厄を終わらすチャンスかもしれないしな」


アルメヒは、私達パーティーを見渡して言った。




「予言……」


ルヌが小さく呟いた。




「まっ、ミゼリア殿下がそう言うなら仕方ないね、ドアドラ離してあげようよ?」


ソレイが、パッと切り替えて言う。




え……殿下って、この人……王女様?




「チッ……」


ドアドラは私をドサッと押し離した。




「痛いな!えっち野郎!」


私は、痛かった反撃につい悪い口癖が出た。




「あぁっ!!!」


ドアドラは私を睨む。




「えっち野郎だって!ウフフ。ドアドラ言われてんの、クハハ!」


リチェがそう言うと、ドアドラ以外はみんなクスクスと笑い出し、ドアドラの真っ白な顔が真っ赤になった。




「ざけんなっ!服しか掴んでねーよ!」


ドアドラの自己弁護の声が酒場中に響き渡り、笑いの渦が巻き起こった。

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