幽ノ坂 冬火、居場所を作る。
アネヌーヴァ超個体を撃破した後、私達はA級冒険者達に護衛をしてもらいながら洞窟を後にした。
赤髪のリーダー以外のA級冒険者達の話を聞くに、やはりゾディが一人で突っ込もうとしていたから、それを止めさせて追い払う為に、リーダーの男はきつく言っていたらしい。
災厄の勇者とかなんとか言ってたのは、そういう強大な存在のせいで両親を亡くした子供達の世話を孤児院でしているから余計過敏に反応してしまうのだとか……
悪い奴じゃないから許してやってくれと言われた。
悪い奴どころか超良い奴じゃん。
物事は断片的には分からないもんだよね。
まぁ、そんなこんなで、A級冒険者達がギルドに話をつけてくれて、面倒な報告は一切不要のまま報酬として金貨10枚を貰った。
受付のお姉さんは私の給料何か月分よーーー!と叫んでから、今度なんか奢ってね!と泣きながら私達に支払いしてくれた。でも、みんな無事でホントよかったわ!とママやお姉ちゃんみたいな言葉を添えてもくれた。
ちょっと貰い過ぎって?
うん、でもあの個体は超珍しい未知の寄生種族らしく、王国としてはかなりの利益になるらしい研究対象との事だからなのだ。
でも私達メンバーは相談して、私達4人とA級冒険者達6人で10枚の金貨を1枚ずつ分けると言う決断をした。
A級冒険者達は無報酬だと思ってたので飛び跳ねて大喜びし、リーダーの男は孤児院の子供達にたらふく美味い物が食わせられると頭を下げてまで礼をして来た。
別れ際、A級冒険者達はみんなで、何かあったらいつでも言ってくれよと私達パーティーに言ってくれた。
私達4人もその後、金貨1枚ずつをゲットした事にみんな有頂天になりながら、何買おうっかなーっとみんなでいにしえの巨大都市の市場を大腕を振って歩き、万々歳な結果となった。
その時のゾディは終始私達の顔を見ながら、とても楽しそうな顔をしていた。
それともう一つ。
宿屋一泊が銅貨二枚なのだが、この都市では金貨10枚あれば、まぁまぁ広い家を購入できるらしく、私はいつかそれを手に入れてやろうと考えている。
パーティーのみんなで住めるような巨大な家が買えたらいいなって、想像するだけで内心凄くワクワクしている。
ラシに返す分と家を購入した後の生活費を考えると金貨15枚稼げば私の心に描く幸せな生活が実現出来そうなので、私は頑張って稼ごうとやる気の炎をメラメラ燃やしている。
前の世界では自分の為にしかお金を使っていなかったから、こんな発想が浮かぶのは結構驚きだ。
ギルド前、酒場――
「うーむ……魔女様、回復術師様、刀王様ですかー……中々の凄まじいパーティーさんですね……」
ゾディは子供みたいな顔で大人みたいな反応をする。
あれからと言う物ゾディは、「やぁ皆様こんにちは」と、ギルドや酒場で不自然な程に会うようになった。
もはや、待ち伏せしている気もする。常になにか言いたそうにクネクネしてる。
「ゾディは誰かとパーティー組まないの?」
私は不意にド直球に聞いてみた。
なんとなく答えは分かっていたのだけれど……
こんな可愛くて素直な子が一人パーティーなんてきっと訳アリだ。
「はい……組めないと言った方が正しいですね、A級冒険者の男が言った通り、
世間では私は、災厄の勇者の末裔として認知されています。そんな私をパーティーに入れるとそのパーティーまで世間から白い目で見られますので、誰も私を仲間には入れてくれませんでした……申し訳なくて入りたいと言い出せなかったと言うのもありますが……それで、いつしか探すのも辞めて、一人で強くなってやろうと思い今に至ります」
ゾディは、あどけない少女のような見た目に反し、かなり辛い半生を送ってきたのかもしれない……
もしかすると、同い年ぐらいで彼女に偏見なく接した私達とパーティーになりたくて、でもそれは許されないと思ってクネクネしていたのかもしれない……
私達三人は、どこか自分達と同じ雰囲気のゾディを見ながら顔を見合わせて各々考えに浸る。
すると突然、シュカが相変わらず派手な黄緑髪を大きく振り乱して言い出した。
「じゃあ私達のパーティーに入りなよ!!私も似たようなもんだけど、この二人はそんな偏見なんてせず接してくれるよ!?ねぇ二人共いいよね!??それに私達のパーティーだって、災厄の勇者クリオネの末裔が加わったら、きっととんでもないチームになれるし!」
わざとか……?ボケか……?
クリオネの勇者ってかわいいじゃないか。
「災厄の勇者ルビエラです!!!あ、間違えた。災厄はいりません!!!」
ゾディは、もちもちと白い頬っぺたをムッと膨らましツンと怒るもんだから、切り揃えた前髪も相まって、とても子供っぽい。むしろ赤ちゃん……
この感じで、金髪金眼だから天使っぽいと言われるのは当然なんだろうね。
「そうよ!偏見なんてゴミ箱にぽいっだよ!ゾディお願い、パーティーに入って!あなたみたいな礼儀正しい剣士さんがパーティーに入ってくれると、とても安心できるわ!それに私……すごく妹欲しかったのよ!盾持ってる妹ってかわい過ぎだわ!」
どういう萌えだよ、盾妹萌えって!
ラシは、パーティーというか妹が欲しい気が……
でも、私達のパーティーって、私=魔法、ラシ=回復、シュカ=忍者、だから、盾役とか正統派剣士って超重要なポジションなんだよねー。
そのポジションを埋める相手として、これほどまでに運命的な相手って今後現れないだろうし。
「妹じゃありません!私は大人な剣士なのです!はぁ……なんか皆さん個性的ですね……あ、ミルク一つ下さい砂糖多めで」
ゾディがそう言うと、ウェイトレスが「可愛いお嬢さんね」と言ってキッチンへ向かった。
妹っていうかやっぱ赤ちゃんじゃん、バブ味爆発してんじゃん。
「ゾディが私達のパーティーに入ってくれたらホント大助かりなんだけどなー、だって見ての通り私達のパーティー盾役とか正統派ナイトいないもん。バランス的に絶対必要だし。って言っても誰でも言い訳じゃなくて、なんとなく私達はゾディがいいなって本当に思ってるんだよ」
私がそう言うと、他の二人もうんうんと頷く。
「イヤではないのですよ……むしろ命を救われた恩を返したいし、皆さんみたいに優しくて楽しいパーティーなんかに加入出来たら夢のようだとも思います。ですが……私は忌み嫌われた一族の者ですから、皆さんに想像以上に迷惑かけるかと……」
ゾディは私達三人を見て浮かないかをした後、誤魔化すように笑った。
「それは気にしないでいいと思うよ。さっきも言ったけど私も同じ感じで、どこ行っても煙たがられるし、パーティーになったら結構迷惑かけるだろうなぁと思ってたけど、それでも無理矢理入ったし。でも、この二人と一緒にいたいって気持ちの方が不安より全然勝ったって感じさ」シュカは得意げに言った。
「うんうんぜんっぜん気にしない。むしろ、ゾディちゃんの入った新しいパーティーでの冒険を想像するとワクワクが止まらないわ!」
ラシは心の底からの歓迎の言葉を口にする。
「皆、似た者同士なのかもね。迷惑はみんなで仲良く掛け合って助け合えばいいじゃん!ゾディの居場所、私達の所で作っちゃいなよ!」
私は立ち上がり満面の笑みでゾディに握手を差し出した。
同じくラシやシュカもゾディに握手を差し出す。
「私の居場所……」
ゾディは、私達を見上げて金眼に光を宿した。
上から見下ろす私には、天に祈る純粋無垢な天使の剣士に視えた……
「うん、ここが君の居場所だよ、さぁ行こ」
私は、天からそう言いなさいと言われた気がした。
ゾディは、震えながらも徐々に手を伸ばす……
差し出された三つの手と、自分の手を何度も見比べる。
「……本当に、いいんですか?」
私達は誰も手を引かなかった。
その時ゾディは何かが変わったように、一気に私達の手をまとめて掴んだ。
「こんな沢山の幸せ一気に掴んでいいですかね……ふふっ」
私達の手を握ったゾディの瞳は潤んでおり、私達はその瞳を見て三人で安心し微笑む。
だって、その涙はきっと、悲しさ以外から出ている良い涙だったからだ。




