再始動したガールミーツガール!!
櫻咲くれはちゃんと運命的な出会いをした翌日の放課後。授業も全部終わって帰宅しようとしていたところ、ポケットの中のスマホがけたたましく鳴り出した。
「げっ」
わたしは着信をすぐに切った。ラインを確認すると、1つのアカウントから大量に通知が来ている。わたしは既読をつけずに注意深く確認し、スマホをポケットにしまった。
これが百合嶋流剛柔術、未読スルー!
百合嶋流は常に進化し続ける流派。現代において情報戦は非常に重要だからこそ、百合嶋流ではSNSでの闘い方なども常にアップデートしている。
この間も現当主と共に新しい技の研究開発に勤しんでいた。SNSの火消し方法からバズり方まで。情報を制するものが戦いを制する! 武術の鍛錬に終わりはないのだ。
そうこうしているうちにまたスマホが鳴った。「反社」と表示された発信者からのコール。わたしはスマホの電源をオフにした。
「なんなのもう……」
下駄箱に到着するとローファーを取り出している蒼依とばったり鉢合わせた。
「あっ……」
わたしが思わず声を出すと向こうも気付いたみたいだった。
「あのさ、百合嶋……」
蒼依が何か言いかけたそのとき、右腕がぐいっと引っ張られる感覚になる。
「さーちゃん、もう帰るの? なら一緒に帰りましょう?」
「しろちゃん」
「あの、あたし百合嶋にちょっと用事があるんだけど」
「あら、森薗蒼依じゃない。どうしたのかしら、さーちゃんはわたくしと大事な用があるのだけれど。1人で寂しく帰ったら?」
また始まった。この2人本当に仲が悪いんだよね。といってもしろちゃんが一方的に蒼依を目の敵にしているだけで、蒼依は困惑してるんだけど。しろちゃんがわたし達と同じグループにいない理由、それは蒼依がいるからなんだよね。
「いきましょ、さーちゃん」
勝ち誇ったような表情で蒼依を一瞥するしろちゃん。ちょうど蒼依とすれ違ったそのとき、反対側からも腕を引っ張られた。
「だから百合嶋に用があるって言ってるでしょ。有栖さんはどうせ一緒に帰るだけなんだから、ちょっと待っててよ」
「あら、わたくしの時間はあなたと違って1分1秒が貴重なのよ。あなたのためにわたくしが待たないといけないなんておかしいわ」
両サイドから言い合いの応酬が続いて辟易していたとき、校門を出たあたりで1人の女の子が立っているのが見えた。この学校の制服ではなく赤い私服を着ている、三つ編みで眼鏡をかけた女の子。
わたし(の横にいる女の子)達が騒がしくしていることに気づくと、女の子がわたしに手を振りながらこっちに向かってきた。
「百合嶋さ〜ん」
ん、あれってもしかして。
「くれはちゃん!?」
「百合嶋、知り合いなの?」
「誰よこの女。わたくしの『さーちゃんのこれまで出会った人データファイル』には載っていないはずなのだけれど」
データファイルってなに、データファイルって。しろちゃんの気になる物言いにツッコむ暇もないまま、くれはちゃんはわたしの両側にまとわりついている女達を丁重に払い除けた。
「ごめんね〜、ちょっと通してね〜」
いきなり第三者が現れたからか、しろちゃんも蒼依も目を丸くしながら手を放してしまった。
「じゃあ百合嶋さん、乗ろっか」
気づくと目の前に軽自動車が停まっている。もちろんしろちゃん家の自家用車ではない。
「え、ちょっと待ってください。一体何を……」
「だから〜ちょっと付き合ってよ。私との”デート”」
「ででで、デート!?」
くれはちゃんは戸惑うわたしを強引に車に乗せ、ドアを閉めた。
「というわけで。ごめんね、ちょっと百合嶋さん借りてくね〜」
「あんた急に何言って……!」
「ちょっと、あなた待ちなさい!」
しろちゃんが手を伸ばすも時すでに遅し。その手を振り切るかのように車は発車してしまった。車がスピードを上げると、バックドアガラスから眺めるしろちゃんと蒼依はどんどん小さくなっていった。2人が米粒ぐらいの大きさになってから、くれはちゃんがわたしに距離を詰めた。
「ねぇ、早速なんだけど。私の専属マネージャーになってくれない?」
「ままま、マネージャー〜〜!?」
このときのわたしはまだ気づいていなかった。たった1人の女の子との出会いで、わたしの運命が大きく変わっていくことになるんだってこと。蒼依と別れて終わったと思っていたわたしのガールミーツガールは、こうしてふたたび動き出したのだった。




