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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
3話 新しい彼女がすぐできました……ってわたし尻軽女じゃないですけど!
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わたしの元カノが恋愛リアリティショーで無双してる件

 最後の撮影は参加者全員で食事を囲んでいる状況からスタート。紅羽が逆転するにはどうしたらいいのかってわたしが悩んでるなか、早速蒼依のターンが回ってきた。

「あおいです。バンドでボーカルやってる。よろしく」

 蒼依が普段の気だるそうに軽く喋っただけで、その場にいる全員を惹きつけた。もちろん元カノのわたしも例外ではない。見えないはずのあおい(バンドマン)のテロップが容易に脳内再生できる。

「えっと、わたしの名前はさくらです。格闘家……じゃなかった、芸能界でマネージャー見習いやってます! よろしくです!」

 無難に挨拶をして席についたあと、隣の蒼依から耳打ちされた。

「百合嶋、なんでここに」

「実はかくかくしかじかで……」

 蒼依にここ最近の話をかいつまんで話すと『あの女狐め……』としろちゃんのほうを睨んでいた。

「そっちこそ、なんでここにきたの?」

「有栖さんから『日帰りのバイトで稼がせてあげる』って言われて。それと美味しいものも食べられるって、タダで」

「タダ飯目当てなんだ……。で、バイト代はいくら貰えるの?」

 蒼依に教えてもらった額は、わたしが事務所に貰う予定の額より高かった。こんな格差がまかり通っていいのか!?

「ところで、あんたの現カノジョさんめっちゃ困ってそうだね。”現カノジョ”さん」

「だから付き合ってないって何度言ったら……」

 2人で話していると、他の参加者から急に話を振られた。

「さくらちゃんは最近の恋愛経歴ってどんな感じなの?」

 いいタイミングだ。さっき蒼依からの嫌味にイラっとしたので、お返しとしてこっちも牽制を入れておくことにしようかな。

「わたし最近恋人と別れちゃって。なので新しいカノ……恋人募集中です〜〜」

 蒼依はムスッとした顔でわたしを一層強く睨んだ。とりあえず挨拶がわりの1発ってことで。しろちゃんが蒼依を使ってどんな手を打ってこようと、紅羽はわたしが護るんだから!


 こんな感じでわたしと蒼依がバチバチやっている間にも、撮影は本格的に進んでいった。これまでの撮影と明らかに違う点は、やはり蒼依の存在だろう。

 蒼依の美貌は芸能人だらけの参加者のなかでも群を抜いていた。唯一まともに対抗できるのは紅羽ぐらいだったから、男性陣が次々と蒼依にアプローチをかけるのも無理はない。

「あおいちゃん、好きな食べ物ってある?」

「う〜ん……煎餅とかかな」

 こんな感じで学校にいるときのノリで適当に喋っても、蒼依が男性陣全員を惹きつけているのは自明だった。男性陣の目からハートマークが見える。蒼依が降臨したことで、女性陣達は意中の相手にフラれたも同然だった。

 それまでリーダー格の女優さんが取り仕切っていた場が蒼依中心に回っていく。男性陣から立て続けに告白されたクライマックスパートを終え、いざ蒼依が返答を出そうとしたその時だった。

 企画内容的に考えれば勝ち確定でしかもよりどりみどりにも関わらず、蒼依はわたしが予想していなかった行動に出た。

「えーっと、突然ですがここでみなさんに演奏を披露したいと思います」

 この元カノはまたハチャメチャなことを言い出したのか。撮影の間中、蒼依が紅羽になにをしでかすのかわたしは警戒していたんだけど。それは杞憂に終わるかもしれない。

「そうだな……あんたアイドルなんでしょ、歌ってくれる?」

「え、私……?」

 急に指名されてぽかんとした紅羽。蒼依、もしかして紅羽を助けてくれるの?

「この曲わかる?」

「ええ、この曲なら歌えるわ」

「じゃあみんなが知ってる曲でいこうか。それじゃあ、セッション始めるね」

 蒼依が自前のギターを取り出して脚を組んで椅子に腰掛けた。ギターを弾く姿すら絵になる女。その横に立った紅羽がアカペラで歌い出した。真剣にギターを弾く蒼依の眼差し、美しく響き渡る紅羽の歌声。参加者達だけでなく制作スタッフ達も魅了されているみたいだった。演奏が終わると紅羽と蒼依はアイコンタクトをしてお互いに微笑んでいた。周りからは温かい拍手が送られる。

「すごいすごい! あおいさんもくれはさんも、演奏すごく上手だった」

 女性陣からの評価も上々で、紅羽がすっかり話の中心に戻ってきた感じだった。

 ナイス蒼依! 思わずわたしもガッツポーズしてしまった。孤立していた紅羽をこんな形で展開の中心に戻すなんて。蒼依のやり方はいつも強引だけど、だからこそ蒼依にしかできないことだとも思った。


 だけど、そう上手くはいかないのが難しいところで。

「はぁ……ここは恋愛する番組なの。歌を歌いたいなら音楽番組でやってくれない?」

 この撮影でリーダー格の女優さんからど正論すぎる反論が飛んできた。前回の撮影でも紅羽に悪態をついてきた人だ。

「くれはさん、あなたなんでこの番組に参加してるの? 全然自分から話しかけてこないし、何がしたいのかわからない」

 最後の撮影だからか、女優さんはあからさまに紅羽を攻撃しだした。もう隠すとか裏からとかでは一切なく、正面から堂々と。

「正直シンプルに邪魔だわ、どう扱っていいか困るっていうか。そもそも恋愛厳禁のアイドルがリアリティショーとかありえなくない?」

 このセリフはよく覚えている。前の撮影でも去り際にボソッと言っていたことだ。

「紅羽が自分から話しかけられないのは、あなたが……」

 邪魔してるからでしょとわたしが言いかけたとき、蒼依が口を挟んだ。

「あー、ちょっといいかな。あたしもムカつく人がいるんだけど、言いたいこと言っていい?」

「どうぞどうぞ!」

 女優さんはニヤニヤしながら手を差し出した。あんなにいい雰囲気のセッションをやった後なのに、ここで紅羽を攻撃するの? わたしが身構えていると、蒼依が『ムカつくやつ』に向かって指をさした。

「そこのさくらってやつ」

「……はい?」

 急にご指名されたわたしは素っ頓狂な声を出してしまった。

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