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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
3話 新しい彼女がすぐできました……ってわたし尻軽女じゃないですけど!
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2回目の撮影、このラウンド落とすとかなり厳しいんじゃ……

 初回の反省を踏まえて臨んだ2回目の撮影。前予想では今回はかなりイケるのではないかとわたしは考えていた。正直わたしなんかとデートしたところで付け焼き刃ぐらいにしかならないけど、イケると思った理由は他にある。

 朝比奈さんの元カレ達数人が”諸事情により”番組を降板したのだ。どこかのバカなマネージャー見習い(※わたしのことです)が圧をかけたからなのかな。あれ、これって脅しじゃない? わたしはただ朝比奈さんに謝ってほしかっただけなんだけど。この変化は朝比奈さんにとってはプラスになるはずだった。

 なのに蓋を開けてみれば、2回目の収録もガタガタだった。練習の成果も虚しく、1回目のときよりむしろ状況は悪化しているかもしれない。

 朝比奈さんのコミュニケーションに落ち度はないはずなのに、男性陣達からは話をふられないどころか暗に敬遠される始末。おまけに1回目から人間関係はより強固になっていて、朝比奈さんが立ち入る隙がさらになくなっていた。

「あのアイドルの子、なんか動き良くないね」

 撮影中にプロデューサーがそう言っているのをわたしは聞いてしまったし、正直かなり崖っぷちだ。

 これで残すところ撮影はあと1回だけ。3回目の撮影で結果を出せなければ今回の仕事は明確に失敗の烙印を押されてしまうだろう。

 なんで朝比奈さんはあんなに萎縮してしまっているんだろう。やる気がないわけじゃない、練習にも真面目に取り組んでいるのはわたしも分かっている。だけどいざ本番になると、動きがいつもより目に見えてぎこちなくなってしまう。

 彼氏がいなくなれば朝比奈さんも立ち回りしやすくなるのではないかと思っていた。だけど実際にあの彼氏がいなくなっても状況はさほど変わっていないどころか、時間経過と共に悪くなっている。

「はぁ、あのアイドル本当にやり辛いわ。メンバー変えてほしい」

 撮影が終わった直後の去り際に、リーダー格の女優さんが吐き捨てた。

 なんなの、あの人。あからさまに朝比奈さんに悪意を向けている。わざと本人に聞かせてるみたいに。

 あの人か、朝比奈さんの邪魔をしてるのは。

 撮影中に観察していると、あの女優さんが中心メンバーとなって場をコントロールしていた。それに妙に撮影スタッフとも親密な関係みたいだし。

 リーダー格の女優さんと朝比奈さん以外は芸能人としての経歴は新米同然だったから、その場を取り仕切りやすかったのかもしれない。


 そんなふうにモヤモヤしていると、朝比奈さんが戻ってきた。

「やっぱり友達とデートしたぐらいじゃ上手くいくわけもないかぁ」

 わたしがあれだけ悩んでいたのに当の本人はケロッとしていることに肩透かしを食らった。

「あのデートは一体何だったんですか……」

「あら、大好きな推しとタダでデートできたんだからこれ以上ない喜びでしょう?」

「そうですけど!」

 朝比奈さんとの距離が縮まったのは素直に嬉しいけど、目の前の問題は依然として解決されていない。前の撮影のときは『わたしの推しに変な男が寄ってこないでほしい』なんて思っていたけど、朝比奈さんの仕事が失敗するのは当然困るわけで。

 もしかして例の彼氏が変なウワサを流していて、それが尾を引いてるとか? だけど今回の撮影はリアリティを求めているって制作陣は言ってたから、多少のゴタゴタがあってもカメラは止まらないはず。だから制作側からの助けは期待できないだろう。

 なんで朝比奈さんがアプローチしても効果がないんだろうとわたしが考えていると、朝比奈さんがサラッと重い話をした。

「わたしね、中学の頃クラスの女の子達からハブられたことがあるの。そのときのこと思い出しちゃった」

「急に何の話を……」

「わたしのこと好きになった男の子がクラスの人気者でね。女子達のリーダーだった子もその人のこと好きだったから、逆恨みされたの」

 リア充女子ならではの悩みというか、妬まれるなんて経験はわたしの人生のなかで一度たりともなかったから全然想像できない。あれ、もしかして。

「まさか、あの女優さんが朝比奈さんの彼氏を好きで……」

「ええ、だから嫉妬したってことなのかもね。彼はモテるから」

「……なんでもっと早く言ってくれなかったんですか?」

「芸能人じゃないあなたに言ったところでどうなるっていうのよ。あなたは何かできるの?」

「それは……」

「……ごめんなさい、今のは言うべきじゃなかったわ。あなたは十分仕事をやってくれてるんだから」

 朝比奈さんが背を向けて離れていこうとする。

「どうするんですか? 撮影はもうあと1回しか……」

「できなくてもなんとかするの。今までだってずっとそうしてきたんだから……」

 朝比奈さんのその後ろ姿は小さく感じた。

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