彼女との初デート(※わたし達付き合ってないですけどね!?)
休日の午後、繁華街の駅近くにある時計台の下で待ち合わせていると集合時間の5分前に朝比奈さんがやってきた。
「お待たせ〜〜」
「うわ、わたしの推し可愛すぎでは?」
「心の声漏れてる。……嬉しいけど」
三つ編みメガネで控えめなのは相変わらずだけど、いつもより私服に気合いが入っている。あまりにも可愛すぎてアイドルバレしないかヒヤヒヤした。
「じゃあいこっか」
朝比奈さんはわたしの手を軽やかにとって握った。ヤバい、可愛すぎて手汗が止まらないんですけど。
まずは街中を歩いてショッピングを楽しんだ。ファッションとか雑貨とか女の子が好きそうなお店を一通り見て回る。
「この服しろちゃんに似合いそうだな。ああでも、しろちゃんはこんな安い服着ないかな?」
アパレルショップで真っ白な服を見つけて独り言を呟いていると、朝比奈さんがムスッと頬を膨らませていた。
「あれ、どうしました?」
「……別に?」
「お腹すいたんだったら、先にお店入っちゃいますか?」
「空腹に対して怒ってるわけじゃないんだけど!」
朝比奈さんがぷんぷんした足取りでお店の外に出て行ったので、わたしもすかさず追いかける。
一旦は朝比奈さんの気が済むまでショッピングを続けた。その間中朝比奈さんはずっとわたしに腕を組んでいたので、周りの人達からチラチラ見られた気がして照れ臭くなった。
朝比奈さんが歩き疲れたからと、最後に入ったのはスイーツショップだった。
「すみません、このケーキをカップル割で」
カップル限定のメニューを堂々と頼む朝比奈さん。店員さんも仲良しな女子高生2人がイタズラ感覚で注文したと思ってそうだなぁ。
「ちょっと朝比奈さん、そういう冷やかしは……」
「ごっこだけど今は私が彼女でしょ。それにいざとなったらキスぐらいできるよ? ほっぺにだけど」
やがて運ばれてきたいちごムースと紅茶のセットは本当に美味しかった。インスタ映えするし、それなりの値段がするだけあるクオリティで大満足だった。
いちごムースを口に運んでいる間、そういえば蒼依ともこういうお店に来たことあるなとふと思い出した。
あのときの蒼依も朝比奈さんみたいに堂々としてたっけ。蒼依が真顔でカップル用のメニューを頼んだのだけど、店員さんは茶化したり訝しんだりせずに対応してくれたんだよね。
そういえばその日の別れ際に蒼依としたキスはブルーベリーソースの味がしたんだっけ……。
「ちょっと、心あらずに見えるんだけど?」
悶々と当時の記憶を掘り起こしていると、朝比奈さんの人差し指で頬を押された。
「すみません、蒼依と付き合ってたときのこと思い出して。あのときもこういうお店来たなぁって」
「むぅ……」
なんか朝比奈さんが不機嫌だなぁ、どうしたんだろう。
「あの、不満があるなら教えてくれませんか? どうせわたしが悪いと思うので改善したいんですけど」
「別に? ただ付き合ってる彼女とは違う女のこと話してたら、彼女からしたら気分悪いでしょって思っただけ!」
それを聞いてわたしは思わずハッとした。
「朝比奈さんってもしかしてめんどくさい女だったりします?」
「……その”めんどくさい”って言い方、嫌いだわ」
キッとすごい目つきで睨まれる。
「あ、いや。観客席から見ててもわからないアイドルの素顔と言いますか。すごく新鮮で」
朝比奈さんはティーカップにスプーンを入れてクルクル回していた。
「放置すると構ってと言ってくるし、朝比奈さんって意外に嫉妬深い感じなんですね」
朝比奈さんはプルプルと震え出した。
「さくらちゃん……だから森薗さんと別れたのかもね」
「それ今言いますか!」
こんな感じで、朝比奈さんとのデートを楽しく(?)満喫できたのだった。そしてこのデートを経て、2回目の撮影に挑むことになる。




