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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
2話 未経験でアイドルのマネージャーなんてムリでしょ!
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えっ、恋人になってくれって本気ですか? ってフリ!?

「どういうことですか、彼女になるって! わたしがやるのはあくまで演技の相手ですよね?」

 わたしは思わずテンパってしまい車内で絶叫してしまった。ストレートにそう言われると顔が熱くなってしまう。

「彼女って言ってもフリだから。っていうか動揺しすぎじゃない?」

「フリぃ!?」

 私の彼女になってよ。それこそが朝比奈さんの元カレを詰めたあと彼女から提案された『根本的な改善策』だった。

「見た? 私がさくらちゃんに抱きついたときのカオ。すごいびっくりしてたね」

「誰のこと言ってるんですか?」

「あの子でしょ? さくらちゃんの元カノ。黒髪ロングの……森薗蒼依さんだっけ?」

「ーー!」

「そのカオはビンゴって感じかな?」

 朝比奈さんはウインクしてニコニコしている。え、いつの間にバレてたの!?

「さっきから『いつ気づいたの?』って顔してる。わかりやすかったよー、さくらちゃん」

「こ、こ、こ、根拠は何ですか! わたし、蒼依が彼女だったなんて一言も……」

 我ながらニワトリの鳴き声みたいなテンパり方だった。

「だってさくらちゃんの見る目が他の女の子のときと全然違うもん。私含めてね」

 額から嫌な汗が吹き出して、背中も汗が滲んでくるのがわかった。冷たい水で喉を潤したい気分。

「すごいですね、朝比奈さんの観察力」

「そんな大したものじゃないよ。親が転勤族だったから、人間観察力が人より少し秀でてるだけ。周りの顔色伺うのが得意になっちゃったから」

 わたしはしばらく黙り込んで、その後ようやく口を開いた。

「……そうですよ、わたしの元カノは蒼依です」

 わたしの元カノが朝比奈さんにとうとうバレてしまった。

「やったー、当たりーっ!」

 車内でぎゅっと抱きつかれる。

「ねぇ、せっかくなんだから恋人らしいことしない? まずは形からっていうし」

「デートとか言わないでくださいよ。そりゃわたしだって朝比奈さんと遊びに行きたいですけど、こっちも仕事溜まってるんですから」

「うーん、ならまずは朝途中まで一緒に登校するとかから始めてみる?」

「それぐらいだったら、まぁ」

 別に蒼依ともやってたことだし。

「じゃあ明日から早速迎えにいくね。途中まで一緒に行こ?」

「了解です」

 推しに毎日会えるのは最高とはいえ、ただでさえ学校の友達との付き合いも悪くなってるのにこれ以上放課後が忙しくなるのか。わたしはこの程度で故障するようなやわな鍛え方はしてないけど、普通の女子高生にはそろそろハードに感じる領域に入ってきた気もするなぁ。

 それよりも問題はメンタルの方だ。わたしの精神はこの仕事中保てるのだろうか? 推しの煌めきに尊死するとか、マネージャーのバイトが激務すぎて病むとか。頼む、お願いだから持ってよね。そう願いながらわたしは今日も今日とて事務所の車に運ばれていったのだった。


 ***


「さくちん、最近付き合い悪くないかにゃあ」

「え〜っ、そうかなぁ」

 陽ちゃんから疑惑の目を向けられたとある平日の休憩時間。わたしは水筒の水で喉を潤す。

「もしかして恋人ができたとか……?」

「ぶーっ!」

 口に含んだ水を思わず吹き出してしまった。

「ちょっと陽ちゃん!」

「やったねさくら、リア充じゃん」

「マコちゃんまで……」

 普段は読書して1人の世界に没頭しているマコちゃんが何故だか今日はノリが良かった。一方で蒼依は不機嫌そうにめっちゃ睨んでくるし、しろちゃんは教室の後方で笑いながら高そうな扇子を片手でバキバキに折っている。そのコントラストがすごい。

 蒼依としろちゃんから向けられる視線に冷や汗を浮かべながら、昨日の朝比奈さんとのやりとりを思い出す。

 あくまで演技の延長線上だけど推しと恋人関係になる、かぁ……。恋人関係かぁ、なんだか蒼依に申し訳ない気もするなぁ。別れたとはいえすぐに新しい女の子と恋人になるなんて(※朝比奈さん曰く”フリ”だけどね)。

 いやいや、蒼依のことはこの前完全に諦めたんだからもう関係ないでしょ。

 それより気になるのはここ最近ずっと抱いてる違和感のほうだ。朝比奈さんがリアリティショーに向けて努力してるのは伝わってくるし、近くで見ていて本人なりに頑張っているのもよくわかる。

 だけど本当にこのやり方でいいのかな。わたしの知ってる恋愛って、こんなにあれこれ手順とか方法を考えてやるものだったのかな。でも朝比奈さんが今取り組んでいるのは本当の恋愛じゃなくて、視聴者にそう錯覚させるエンタメ番組なんだし。

 やっぱり素人のわたしにとやかくアドバイスできることなんてないんじゃないかな。う〜んと悩みながらその日の授業の間ずっとあれこれ頭を悩ませて、その日は終わった。

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