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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
2話 未経験でアイドルのマネージャーなんてムリでしょ!
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完全に諦めた、わたしの初恋

 恋愛リアリティショーの1回目の撮影があった週末の日、芸能事務所ではなくアングラ感満載のライブハウスにしろちゃんと2人でいた。今日は個人レッスンだけだから休んでも良いと朝比奈さんに言われたので、堂々と蒼依のライブを見に来たってわけ。

 なんの真似なの、蒼依。元カノのわたしに歌を聴きにこいだなんて。白ちゃん経由でライブに誘われたあの日の放課後、最初は嫌がらせか何かだと思った。

 だってそんなの苦しいに決まってるじゃん。わたしはまだ蒼依のこと忘れられてないんだよ? 本当は今だって……。

 そんな不安定な気持ちのなか蒼依達の演奏が始まった。別れて以来一度も見なかった蒼依のライブは随分と久しぶりに感じられた。

 やっぱりステージの蒼依は眩しい。キラキラ輝いていて見ている人の心を揺さぶる。客席のわたしはいつまでもこんなに燻ってるのに。わたしは泣きそうになるのを必死に抑えながら、ステージの蒼依だけを見つめていた。

 気のせいか、セットリストは付き合っているときにわたしが好きだと言った曲ばかりだった。演奏はどんどん進んでいき、その度にわたしは蒼依の歌声にのめり込んでいった。


 会場のボルテージが最高潮になったところで幕間にMCが入った。マイクで語るのはヴォーカルの蒼依。

「みんなありがとう。次が最後の曲です」

 えーっ! とお決まりの嘆きが客席から聞こえる。

「今日はわたしのわがままで参加させてもらいました。メンバーのみんなも巻き込んでごめん、この場でも謝っておくね」

 他のメンバーは『いつものことでしょ』って感じで各々微笑んでいた。

「あたし、最近失恋しちゃって。ずっとそれを引きずってました」

 ざわざわとしだす客席。横目で見ただけだから気のせいかもだけど、しろちゃんが一瞬こっちに振り向いた気がした。

「今日演奏させてもらった曲は恋人が好きだった曲達です。だから最後の曲は、あたしの好きだった人が一番好きな曲をやらせてもらいます」

 蒼依は目を閉じて深呼吸した。

「今でも好きかはわからないけど、それでもその人に聴いてほしいと願って歌います。聴いてください……『My First Time』」

 曲名を聞いて、思わず口元を押さえる。ずるいよ蒼依。セトリのラストにわたしが一番好きだった曲を持ってくるなんて。そんなエモいことやめてよ。

 ステージから聞こえるのは、好きだ好きだと殴りかかるように訴えてくる曲。わたしが初めて蒼依のライブで聴いた、蒼依に憧れるきっかけになった曲。

 さっきMCで言ってたじゃん。『好きだった人』って。わたしはもう蒼依にとって過去の存在なんでしょ? もう今は好きじゃないんでしょ?

 お互いきっぱり忘れて自分の道を進めって、蒼依からのメッセージなのかな。

 蒼依の声だけが会場で響き渡る。いつもは低い声のくせに、歌うときはすごく高い音になるあの声。普段は何考えてるかわからないポーカーフェイスのくせに、歌い出すと身体の奥から何か引き摺り出してるような凄みを感じるあの声。

 演奏中、蒼依と目が合った気がした。ううん、間違いなくわたし達の視線は交錯した。

 汗がスポットライトの光で反射して、ステージ上でキラキラと輝いている。

 そっか、これは蒼依からのメッセージなんだ。私達は綺麗さっぱり別れたんだから、これからはお互い違う道を歩んでいこうっていう別れのメッセージなんだね。

 わたしと蒼依はもう完全に復縁することはないんだと、言葉ではなく音で訴えられてようやく理解できた気がした。

 ああ、やっぱりわたしはこんなにも、どうしようもないぐらい……。

 今までは泣くのを堪えていたけど、いよいよ我慢の限界だった。

 もう無理。わたしの両の瞳からは涙が氾濫し、溢れて止まらなかった。蒼依のことを忘れようと思ったのに。絶対に蒼依より素敵な恋人を作って見返してやろうって思ったのに。

 曲が終わると蒼依は全部出し切ったという感じで清々しい顔をしていた。客席のボルテージも最高潮のなか蒼依達のステージは終わった。

 スポットライトで真っ白な光に包まれるステージは、わたしのぼやけた目では全然まともに見えなくなっていた。涙は一向に止まってくれそうにない。

「……ちっ」

 しろちゃんはわたしに聞こえるぐらいの音ではっきりと舌打ちしていた。

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