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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
2話 未経験でアイドルのマネージャーなんてムリでしょ!
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盗撮は犯罪行為なんですけど……っていうかサカってないし!

 朝比奈さんの彼氏の一件が終わった次の日、わたしはあのときの不快感がいまだに拭えずにいた。窓の外をぼうっと眺めるぐらいしか何かをやる気力が湧かない。

 教室で陽ちゃんやマコちゃんが談笑していても全く入っていく気分になれなかったから、お手洗いに行くと適当に用事を作って離席した。すると教室を出てしばらく廊下を歩いた後にぐいっと腕を引っ張られた。

「うげっ?」

 振り返ると蒼依が顔を引き攣らせてわたしを睨んでいた。

「百合嶋、ちょっと話があるんだけど」

「どうしたの? めずらしいね、森薗さんのほうから声かけてくれるなんて」

 蒼依はなんだかそわそわしていて、何か渡したそうにしていたように見えた。

「要件の前に……百合嶋、最近なんであの三つ編みの子と仲良いの?」

 蒼依はあからさまに不機嫌な声でわたしを問い詰めた。この感じだと放課後に校門前で朝比奈さんと頻繁に会っているのがバレているみたいだった。

「あの子って誰のことですか? それにわたしが誰と仲良くしたっていいじゃないですか」

 しらを切ろうとするわたしに蒼依は挑発を続ける。

「あたしには言えない事なんだ?」

「何を言って……。なんでいちいち森薗さんに言わないといけないんですか?」

「これ、どういうこと?」

 蒼依はスマホを取り出して写真を見せてきた。スーツ姿のわたしと朝比奈さんが2人で笑いながら歩いている姿が写っている。これって休憩時間に一緒に買い出しに行った時の写真か。

「友達と歩いてるだけですけど。別にやましいことなんか何も……」

 そう言いかけた瞬間、頭にある考えがパッと思い浮かんだ。

「森薗さん、もしかして焼いてるの? ……はっ!」

 言った直後に後悔。しまった、最近わたし失言多すぎでしょ。

「ばっ……や、焼いてなんか!」

 蒼依は耳まで真っ赤だった。普段はすました顔してるくせに、時折急に子供っぽい反応をするというか。そのギャップがたまらなく可愛いんだけども。

「べ、別にあんたが誰と付き合おうがあたしには関係ないんだけど!」

 蒼依は腕を組んでむすっとした表情のままだ。だから付き合ってないって言ってるじゃん! ”恋人ごっこ”をやってるのは事実なわけで、その辺りはもどかしかったけども。蒼依は続けてこう言った。

「でも、付き合ってた元恋人が別れてすぐ別の恋人作るような尻軽女だったら気分悪いって思っただけ」

 久々に本気でカチンときた。そこまで言われる筋合いなくない? わたしもムカついてきたので言い返してやった。

「仮に付き合ってたとしてもいいでしょ。わたしが尻軽女でも森薗さんには関係ないじゃん」

「じゃ、じゃあ……あたしに彼氏ができて、その彼氏とえっちしてたら百合嶋はどう思うんだよ!」

「はぁ!? なんでそうなるの!?」

 だから蒼依はいつも話が急に飛躍しすぎなんだよ! どうして毎回極論に走るのさ? っていうかあなたは私と同じで同性が好きなはずじゃ……。

「どうなの!?」

「そりゃ……その、えっと……」

 普通に嫌だけど。モヤっとするし。そんなこと絶対に口にしたくなかったので、歯切れの悪い感じでずっと口篭ってしまった。

「馬鹿馬鹿しい、もう行く。ふん」

 蒼依は欲しいお菓子を買ってもらえなかった子どもみたいに頬を膨らませた。美人の顔が台無しだ、と思いきやこれはこれで子供みたいで可愛いんだけども。キミ本当にJKか?

「……バカさくら」

 蒼依は何か呟いた後、廊下の先に消えていった。

「なんだったんだよ一体……」

 別れてからまだ1ヶ月ぐらいだからか、お互いずっとよそよそしい態度だった。

「関係ないとか言ってるけど、思いっきり関係あるじゃん! バカ!」

 わたしの渾身の捨て台詞は誰にも届かなかった。


「痴話喧嘩はもう終わったかしら?」

「げっ!?」

 しろちゃんが少し離れた位置で壁にもたれて腕を組んでいた。いつの間に?

「な、何か用でしょうか?」

 しろちゃんはわたしをじっと見つめていた。圧が怖いんだけど。ん、そういえば…。

「もしかして蒼依が持ってたあの写真、撮ったのってしろちゃん?」

「よくわかったわね。”元カノジョ”として森薗蒼依にはさーちゃんの今のサカり具合を知る権利があると思っただけよ」

「サカり具合ってなに!? 」

 やっぱり、ったくこの幼馴染ってやつは!

「どうせ篁さんに撮らせたんでしょ? わたし達の跡をつけさせて」

「ええ、そうよ」

「盗撮は犯罪だよ? しかもしろちゃんは不法侵入もしてるしツーアウトでしょ」

「森薗蒼依があまりにも惨めだったから、同情して奉仕してあげただけよ。ボランティアと言ってちょうだい」

 ダメだこの幼馴染。これ以上話しても話が通じないと教室に戻ろうとしたとき、しろちゃんは言い忘れたことがあるようだった。

「待ってさーちゃん。あの女からの伝言よ。『ライブを見にきてほしい。これが最後でいいから』だって」

 しろちゃんはポケットからチケットを2枚取り出してうち1枚をわたしに渡した。もしかして蒼依が言ってた用事ってこれのこと?

「あの女、一番重要な目的を伝え忘れたみたいね。本当にアホなのだから」

 正直行くかどうか迷ったけど、最後ならと思ってわたしはライブを見に行くことに決めた。

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