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百合△から逃げられない!?  作者: りんきり
2話 未経験でアイドルのマネージャーなんてムリでしょ!
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12/37

アイドルの仕事って普段は思ってたより地味なんですね

 動きやすい格好に着替えたわたしはいよいよ初出勤となった。

「それじゃあ百合嶋さん、これから色々説明するから。紅羽はそろそろレッスンでしょ?」

「いけない、もうこんな時間! マネージャーさん、あとはよろしくね。さくらちゃん、頑張ってね」

 朝比奈さんはウインクしてわたしの横を通り抜けていった。

「全部説明すると時間がどれだけあっても足りないから、わからないことはその都度紅羽に聞いてね」

 そうしてわたしはマネージャーさんから色々と業務について説明を受けた。スライド資料にまとめられた説明をひたすら聞いて、気づけば1時間弱ぐらい経過していた。

「大体こんな感じかな。改めて、これからよろしくね百合嶋さん」

「こちらこそ。お世話になります」

 わたしはお辞儀してから談話室を後にした。それから朝比奈さんが行っている同じビル内の別フロアにあるレッスンルームに行き、アイドル達の練習を邪魔しないように隅っこで見学していた。

「あなたが今日から入ったっ紅羽の付き添いの人?」

「あ、はい。よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくね」

 時折こんなふうに『片想いラプソディ』のメンバーの人達に声をかけられた。

 わたしにとって彼女達は、これまでは画面や観客席からしか見ていなかった憧れの存在。それが今やほんの数メートル先で他のファン達は絶対に拝めないような貴重なレッスンを惜しげも無く披露してくれている(※わたしに見せてくれているわけではない)。

 わたしの顔ニヤけてないだろうか。ファンにとっては垂涎ものなのは間違いなく『片想いラプソディ』が大好きなわたしが、仮にも見習いとはいえ仕事の立場で接することができているか心配になる。

 他のメンバーまで拝める貴重すぎる機会といえど、今は大事なお仕事中。今回のクライアントである朝比奈さんからできるだけ目を離さないようにしないと。

 普段見せる穏やかな感じとはまた違う、汗を流しながら真剣な表情でレッスンに取り組む朝比奈さんはカッコよかった。ああ、今日も推しが尊い。

 朝比奈さんが真剣に練習している間、それを見守りつつも同時に別のことも考えていた。この事務所の間取りだったり、他メンバーの立ち振る舞い、アイドル達以外のトレーナーさんやスタッフの方々などなど。朝比奈さんを護衛する上で役立ちそうな情報は少しでも仕入れる必要があったから。


 そうこう考えているうちに時間はあっという間に過ぎていき、本日のレッスンは終わったようだった。メンバー全員疲労困憊で汗まみれって感じ。わたしは隅っこで体育座りして見学してただけなんだけど。

 レッスンが終わりそうなタイミングを見越して、自販機で買ってきたスポーツドリンクを手渡した。

「お疲れ様でした、朝比奈さん」

「ありがと」

 朝比奈さんはペットボトルを受け取ってごくごくと飲み干した。

「ぷはっ……。じゃあシャワー浴びてくるから、ちょっと待ってて」

 朝比奈さんは同僚の子達と談笑しながらシャワー室に向かっていった。わたしは先に更衣室に戻って制服に着替えた後、ビルの玄関前で朝比奈さんを待っていた。15分ぐらいしてから私服に着替えた朝比奈さんがやってきた。

「お待たせ。じゃあいこっか」

 ここから朝比奈さんを自宅に送るまでが今日のわたしの仕事になる。行きは車だったけど、帰りは電車に乗って帰る。

「どうだった? はじめての事務所は」

「思ってたより地味でした」

「でしょ。ライブとか撮影とか大きな仕事がない日は大体こんなものよ」

「でもアイドルのレッスンを拝めるのは貴重でしたね」

「それはよかったわ」

 疲れていたからか朝比奈さんはあまり多くを話すこともなく、しばらくすると朝比奈さん家の最寄駅についた。そこから数分歩いてマンションのエントランスまで到着した。

「ここまででいいから。ありがとう」

「お疲れ様でした」

「さくらちゃんもね。それじゃ、また明日」

「また明日。おやすみなさい」

 朝比奈さんはにっこりと笑って手を振りながら、エレベーターのなかに消えていった。その後1週間近くは、わたしも仕事を少しずつ覚えながら毎日が過ぎていった。

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