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令嬢将軍はやり直したい【連載版】  作者: Altemith/あるてみす
第1章

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第5話 腕試し

「アリス君、陸軍士官学校から知らせが届いているぞ」


「本当ですか、オイゲン様。すぐに受け取りに行きますわ」


 数日が経過した後、私の手元には試験の結果がもたらされた。

サヴォイア公の待つ居間へと降りると、そこには一人の将校が立っていた。

彼は手に封筒を抱えており、そのなかには合否通知が入っている。


「私は陸軍近衛歩兵第2連隊所属のヴィクトル大尉という。本日はアリス殿の試験の結果を伝えに来た」


 近衛歩兵連隊、それれは皇帝を直近で守護するエリート部隊だ。

本来であればこのような任を帯びることはないが、いったいなぜ――。

私はそう思うが、ヴィクトルは何食わぬ顔で紙を取り出した。


「皇帝陛下の名のもとに、ゲルマニア帝国陸軍士官学校への入校を認める」


「拝承いたします。命を賭して、軍の教えと国の名誉を守り抜くことを誓います」


「……貴官は女性ゆえに苦労する場面もあるだろうが、軍では性別のことを言っている場合ではない。死ぬ気で臨むように」


「――その言葉、肝に命じさせていただきます」


 私はヴィクトルから任命書を受け取り、敬礼する。

その敬礼にヴィクトルも答礼し、これにて合格通知はあっさりと終了した。

彼は真剣な目でこちらを見ていたが、少しするとふっと目元が緩んだ。


「ヴィクトルよ、随分と様になっているではないか」


「オイゲン少将閣下、そう言っていただけると幸いです。しかし閣下のような軍人になるにはもう少し時間がかかりそうです」


「当たり前だ、そんな急に抜かれてたまるものか」


 さっきの空気とは一転し、和やかな談笑が繰り広げられる。

どうやら会話から察するに、サヴォイア公の知り合いのようだ。

私が不思議そうな顔で眺めていると、彼がヴィクトルとの関係を説明してくれた。


「私とヴィクトルは昔同じ連隊に所属していてね。その時の連隊長が私で、彼が中隊長だったのだよ」


「少将閣下は先の戦争で、防衛線を崩した素晴らしい指揮官なのです。今でもその姿は私のあこがれであり、誇りです」


「……昔の話さ。それよりもアリス君、軍は君が思っている以上に過酷な場所だ。あの試験を通過したのだから資質は認められていると思うが、今一度覚えておくように」


 その日はヴィクトルも交え、ささやかな祝賀会が行われた。

明日からは士官学校の宿舎での生活を営むことになる。

せっかく荷物を移動させたが、しばらくはこの家とはお別れとなる。


 その日の晩、私は士官学校で必要な最低限の物だけを荷物に詰め込んだ。

用意された濃紺の軍服は、すぐに着ることができるように準備されている。

こうして、短いサヴォイア家での生活は終わりを告げた。





 合格通知の翌日。

私は再び陸軍士官学校の門を、今度は軍服を身にまといくぐった。

――そして、そんな私に最初に向けられたのは疑惑の目であった。


 新入生から7か月遅れでの中途入学。

そのブランクは、先に入学している同期や上級生から冷ややかな目を向けられるのに十分だ。

中には、私がコネで入学したと考えているものもいるだろう。


 前世で鍛え上げた、戦略眼と士官としての立ち振る舞い……。

それらを全て動員し、私はこの学校でやっていかなければならない。

祖国を、ガリアをこの手で救うためにも。


「この者は、本日より諸君らと寝食を共にするアリスだ」


「私の名前はアリス、サヴォイア公オイゲン退役少将の推薦をいただき、編入する運びとなりました。学業において貴官らと半年ほどの差がありますが、それを埋めるのが私の義務であると考えています」


 端的に自己紹介を済ませると、教室にいた生徒たちはざわついた。

そのざわつきのほとんどは、サヴォイア公の推薦を受けたという言葉に対してのものだ。

女である私を、統一の英雄が推薦する――彼らが疑問に感じるのも当然であった。


 自己紹介の後、私は他の生徒と同じように授業を受け、校内の案内をその合間に受ける。

そして一日の全てが終わり初めて寮に向かおうとしたところ、他の男子生徒たちに囲まれた。

彼らは私より身長は低く、私を見上げる形で話しかけてきた。


「貴官はあの英雄の推薦を受けたとのこと。よければ我々にその実力を見せてくれないか?」


「……射撃か、戦術かどちらで?」


「もちろん射撃だ。併設されている射撃場で勝負したい」


「……受諾しますわ」


 私がそう答えると、男子生徒たちはニヤリと笑った。

射撃とは無関係そうな私に勝負で勝ち、悪く言えば新人いびりをしたいのだろう。

……だがその思惑は崩れ去ることになると、彼らは知らなかった。


 射撃場につくと、私はボルトアクション式の銃を手渡された。

それと同時に、5発の弾薬が付いたクリップも同時に渡される。

私はボルトを引いて薬室に弾丸が装填されていないことを確認し、クリップを用いて5発の弾丸を給弾した。


「勝負は200m先の的の中心にどれだけ近く当てることができるかだ」


「そう。では始めましょう」


 200m先の的に向けて、私はアイアンサイトだけで照準を合わせる。

そして引き金を引くと、薬莢が飛び出すと同時に銃弾が発射された。

一発、また一発……薬莢が落ちる音と同時に遠くの的には穴が開いた。


 別の生徒が的を持ってきて、的のどこに当たっているのかを確認する。

その結果――


「……アリス君、君の勝利だ。疑ってすまなかった」


「動く赤鹿を撃ってきたもの、これぐらい当たり前よ」


「……私の名前はルードヴィヒだ。これから同期としてよろしく頼む」


「ええ、こちらこそ」


 ――後日、この対決の話は士官学校中に広まった。

その為、私はその後何度か射撃対決をすることとなる。

そして、その対決は思わぬ人物を引き寄せることになるのであった。


「……面白い」

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