↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神に騙され異世界へ!貰ったチートは欠陥品の詰め合わせでした。〜雑魚い俺には努力が必須ですが、大成するのは間違いなさそうです〜  作者: ゴローさん
第六章 シュタット再訪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/86

第79話 約束。

必死に素振りをしていたからか、背後から近寄る存在にギリギリまで気付かなかった。

ここの家主、ゾフィーだ。


「アキーラくん、精が出るね?」


「ゾフィー……、はは、そうなら良かったんだけどな。」


「違うのかい、邪神に勝つためにやってるんだろう?」


柔らかく微笑みながら、ゆっくりと話すゾフィー。

それはそうだ。

俺だって、負けたい訳じゃない。

だけど。

そう思い、再び素振りを始める。

素振りをしながら、今の思いを吐き出していく。


「正直言って、今の俺が勝てると思えない。あいつが何してるのか、今でも全然わかんねぇ。斬っても斬っても倒せる気がしない相手に負けたら終わりの一発勝負なんざ、正気の沙汰じゃねぇと思う。それでも、やらないといけない。何とか、俺が何とかしないといけない──」


「アキーラくん。背負いすぎだよ。」


「へ?」


素振りをやめて振り返ると、少しだけ苦笑いをするゾフィーと目が合う。


「アキーラくん、君はとっても強くなった。もう私が全力を出しても、きっと傷一つ付けられずに抑え込まれてしまうくらいには。だけど、それでも君は、ただの人なんだ。」


「ただの、人……。」


「そうさ。君にとっては何の関係もないこの世界のために、そこまで自分を犠牲にする必要なんてない。……君にとって大事なのは、なんだい?」


俺にとって大事なもの?

そんなもん決まってる。

ゾフィーにエルザ、フレイヤにフレイ。

ガルドさんだってそうだ。

俺が世話になった人が、悲しむ世界にはしたくない。

みんなが笑える世界であってほしい。


「何か、感じたかな?出来れば、その中に私がいると、とっても幸せだよ。」


「はは、最前列で手を振ってるよ。思わずファンサしちゃうくらいにな。」


「よくわからないけど、それなら良かった。」


嬉しそうに笑うゾフィーを見て、ドキリとしてしまう。

こいつこんなに可愛かったっけ。


いや、いかんいかん。

うつつを抜かす余裕はないのだ。

今は邪神に集中しないと。


「ねぇアキーラくん。」


「……ん?なんだゾフィー。」


「全部終わったらさ、どうするの?」


「どうする、って……何も考えてねぇなぁ。」


「私は色々考えてるよ。やりたいこともたくさんある。」


「おお、そうなん?」


プレッシャーだな。

わざとか?


「そう。ふふ、だから、よろしくね?」


わざとだな。


「しゃーねぇ。やりたいことリストでも作って、整理しとけよ。」


はは、負けられない理由が増えたな。


そんでもって、大切なことに気付かせてくれた。


素振りも大切だけど、こっちも大事だ。

俺の戦う理由。


確認しに行かないと。


それに気付かせてくれたゾフィーに感謝しないとな。


「すまん、ゾフィー。ちょっと行ってくるわ。」


「うん。気をつけてね。」


ゾフィーの館から出て、街を歩く。

足は自然とエルザの工房へと向かっていた。


今日は終わったのか、もう鉄を打つ音は聞こえてこない。


まぁ、いないならいないで、出直してくるしかないけど。


意を決して、ドアをノックする。


「エルザー!おるー!?」


もしもーし!!


しばらくすると、ドアの鍵が開けられて、中からエルザが出てくる。


「アキーラ?どうしたんだい?明日じゃなかったの?」


「すまん。でもちょっと、確認したいことがあってな。……入ってもいい?」


「…………そ、それって、その。」


「ん?出直したほうがいいか?」


「い、いやっ!全然大丈夫!は、入って!!」


「いつもごめんな、急で。」


「いつもだろ!慣れたよ。ほら、こっち。」


「おう、おじゃまします。」


エルザの工房へと足を踏み入れる。

相変わらずの鉄の匂いに、少しだけ安心しながら。


「……で、どうしたの?剣じゃないよね?」


エルザが入れてくれたお茶を飲みながら、何から話せばいいかと考える。


「あー、何を話せばいいのか、正直わからないんだけど……。俺実は、邪神と戦わないといけないんだよね。」


「はぁ?あんた、何言って…………本気、なの?」


冗談だと思ったのか、初めは眉間にシワを寄せていたエルザの顔が、俺の顔を見て少しずつ変わっていく。


「本気だよ。」


「……そ、それって、もし、負けたら……。」


「死ぬだろうな。」


「……それで、戦う前に最後の別れって、こと?」


「いや、違う。帰らないといけない理由を、ちゃんと自覚しようと思ったんだ。」


「……帰る、理由?」


「そ。どうなるかわからんけど、それでも、ギリギリで踏ん張れるとしたら、それがあるかどうかだと思ったからな。」


ジッと俺を見つめるエルザ。


「ホントだね?」


「俺は、そのつもりだ。」


「……わかった。それじゃあ、私はここで待つよ。ずっと。」


「ず、ずっとぉ?」


重くなぁい?


「ずっとだよ。あんたが戻ってくるまで、ずっと。おばさんになっても、おばあちゃんになっても、あんたをずっと待つ。」


「お、おう……。」


「だから、絶対に帰ってきてね。約束だよ。」


目尻に涙を溜めながら、俺にそう言ってくれるエルザの存在がとんでもなく輝いて見える。


「ああ、約束だ。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。