第78話 モヤる
「っと、まぁそんな感じだな。」
レオと別れた俺は、ゾフィーの家に戻り、みんなに情報を共有する。
「ふむ、もはや死兵だね。」
話を聞いていたゾフィーが、そんな言葉を漏らす。
紙幣?
『……そうね。』
ゾフィーの言葉にそう返答するフレイヤ。
「そこまでの覚悟とは、殉教者ですね。」
そして変な言葉で追いかけるフレイ。
準強者?ちょっと失礼じゃない?
「アキーラくん、意味わかってる?」
「わかってると思う?」
「私は思ってないよ。」
『ワタシも。』
「私もですね。」
「お前ら俺を仲間外れにして楽しいか?」
お前らの血は何色だ?おい。
「あはは、ごめんごめん。つまり私が言いたいのは、彼は捨て駒になることを理解してアキーラくんを待ってたんじゃないか、ってことだよ。」
「捨て駒?なんで?」
『申し訳ないけど、レオじゃ邪神には勝てない。でもその代わり、負けることもない。』
「そうだね、なぜならいくら殺しても次の日には復活するから。あ、もし宿屋が破壊された場合はどうなるんだろう?」
『その場合は、その前の地点からの復活ね。』
「なら、彼を殺し切ることは不可能に近い。」
なるほどね。
つまり何度も殺される前提で、邪神に体当たりしてたわけね。
……いや、ゲームじゃないんだぞ?しかも、その記憶はないんだろ?怖くならないのか?
『あの子は、本当にワタシとの約束を守ってくれたのね……。』
「ああ?約束?レオとフレイヤが?」
『うん、ワタシ死にかけてるじゃない?』
言い方軽いなぁ……。
『まぁ、それで半ば絶望してたのよね。アンタのときは振り切ってたけど。あのときはまだ力も残ってて、それでも勝てなくて、いい加減ヤバいって思ってて、それで、かなりぶつけちゃったのよね。無茶なお願いを。』
なるほど。
約束したから、ね。
『そこからアンタを呼んで、アンタを見守ってる間も、邪神の足止めをしつづけてくれた。会ったらお礼言わないとね。』
そうか。
「じゃあ今度は、俺らがレオを助けないとな。」
『そうね。頼むわよアキーラ。』
よし、頑張るか。
「あ、そうだゾフィー。木剣貸してくれよ。」
「ん?庭の倉庫にあるから、好きなだけ使っていいよ。何するの?」
「素振り。」
「……アキーラくんは、相変わらずだねぇ。」
「落ち着かねぇからな。なんかやらねぇと。んじゃ、庭も借りるよ。」
みんなの期待が乗っかってるからね。
ちょっとでも何かしないとやってられない。
ゾフィー邸の庭は広い。
つーか久しぶりなのに芝生も生え揃ってるな。
さすがゾフィー。これが金持ちか。
「って、言ってる場合じゃねぇな。やることやろっと。」
倉庫から持ってきた木剣を正眼に構える。
何度もやってきた基本中の基本。
「ふぅーーー……。」
大きく息を吐く。
全部、全部。
空っぽになるまで、不安も、期待も全部だ。
「すぅーーー……。」
そして吸う。
背負う。受ける。俺が選んだんだ。
大丈夫だ。やれる。やる。
「はぁっ!!」
乾坤一擲。気合の入った振り下ろしは強烈な風を生み出し、草木を揺らす。
ダメだ。
まだ足りない。
もっと。
「はぁっ!」
もっと。
もっと研ぎ澄まさないと。
この一振りで、一体どれだけの経験値が入っているのか、もうわからない。
確かなのは、剣術Lvは100に到達してること。
そして、それは邪神も同じということだ。
どうやって勝てばいいのか、糸口が見えないまま闇雲に剣を振るう。
結局俺は、邪神に勝てるのだろうか。
あいつも俺がここにいることに気付いているだろう。
こうしている瞬間にも、後ろに現れるんじゃないか。
きっと邪神はそんなことをしない。
つまらないから。
俺はあいつに、生かされている。
「くそ、考えが悪い方に行ってるな。」
誰に言うでもない独り言は、誰にも聞かれないまま風に流れていく。
何とかする。
何とかなる。
必ず、きっと、多分。




