第76話 あのときのあいつ。
ゾフィーの家へと戻り、みんなと合流する。
「おいーっす。調子はどうだ皆の衆。」
『調子も何もみんな荷物の整理してるだけよ』
「アキーラくんは、剣を無事に預けられたんだね。」
「おう。エルザに預けてきた。明日また来いってよ。」
『そう……それじゃあ、アイツ──邪神の神殿だけど。』
フレイヤの言葉にみんなが息を飲む。
『ぶっちゃけ、ワタシ知らないのよね。』
「は?」
いや俺しか声出してないけど、気持ちはみんな一緒だぞ多分。
お前が知らないって、じゃあ誰なら知ってんだよ。
『わかってるわかってる。アンタが言いたいことは……。だけど、知らないのは本当なのよ。で、その代わりなんだけど。』
どうやら、知らないで終わらせるつもりはないみたいだな。
「で、その代わりってなんだ?」
『レオ・クラインって覚えてる?』
「誰それ?」
『まぁアンタはそうよね。宿で泊まった時に会った男の子よ。いたでしょ?』
レオ?レオ……あ、あああああ!!
「あいつか!!ギルドでテンプレしてた奴!!」
『まぁアンタはそうよね。』
「なんだよ、合ってるだろ?で、レオがどうしたん?」
『──アイツは、ワタシの……そうね、駒なのよ。ある意味イケニエね。本人にその気はないけど。』
「は?」
生贄?レオが?
『訳わかんないわよね。あの子は、アンタを連れてくる前の、ちゃんとした意味での最後の転生者よ。』
「おい、俺がちゃんとしてねぇみたいに言うなよ。」
『アンタはイレギュラーなの。色んな意味で。……で、あの子は、ワタシの加護として、何度でも生き返るチートを渡してるわ。記憶は引き継げないけどね……。』
記憶は引き継げない。
ってことは……。
「だから宿で挨拶したのに、知らんふりされた訳か。」
『そういうことね。』
ん?いや待てよ。
「おい、それってつまり、レオは……。」
『何度も死んでるんだと思うわ。多分、邪神の手によって。』
エグすぎるだろ、それは……。
『ゴメンね。ワタシが頼りないせいで……。』
フレイヤが申し訳なさそうに頭を下げるが、今は責めても仕方ねぇ。
「まず確認させてくれ。レオが毎回やられてるってことは、つまりあいつは邪神の居場所を知ってるんだな?」
『そうね。多分転生して初めにお願いした邪神討伐をやろうとガンバってくれてるんだと思う。』
「わかった。じゃあまずはレオのところに行こう。もうあいつが犠牲になる必要はないだろ。」
『うん。ゴメンね、アキーラ。』
「構わねぇよ。背負うって決めたしな。」
でもあいつ今どこにいるんだ?とりあえずギルドか?
まぁ、行ってみればわかるか。
「ゾフィー、ちょっと行ってくるわ。」
「うん。行ってらっしゃい。余計なお世話だけど、気をつけてね。」
ゾフィー邸から出て、ギルドへと向かう。
レオ、すぐに見つかればいいんだけど。
「失礼しまーす。」
ギルドへとたどり着き、中へと入る。
昔は恐る恐る入っていた扉が、なんだかちっぽけに感じる。
俺も大人になったもんだね。
「えーっと……、いないか。」
入ってすぐの受付、酒場を一通り探すがレオは見当たらない。
外したか……。
とはいえここで油を売っても仕方ない。受付の人に聞いてわからんかったら宿へ行ってみよう。
とりあえず空いてる受付……は、ねーな。
どこでもいいから適当に並ぶか。
…………まだかな。
…………まだか?
…………おそすぎない?
先頭なにしてんの?
若干イライラしながら受付を覗くと、筋肉ムキムキマッチョマンが受付の女の子を口説いてる。
おい、お前後ろ見ろよ。
俺含めた全員が怒って……ないな。
なんで?
気になったので、俺の前の奴に聞いてみる。
「もしもーし?あいつ長すぎない?いいの?」
「ん?ああ、お前もリサちゃん狙いか?ならここで待つんだな。今はマチオマン様が口説いてるところだ。」
ああ?なんだこいつ。グルか。
っていうかリサちゃんって言った?あの子が?
気になってもう一度覗いてみる。
茶髪の前髪を下ろして、目元を隠してる。
雰囲気的に押しに弱そうで。強引に行けばなんとかなりそうなタイプ……、なのか?
それでマチオマン様に狙われてるの?
かわいそすぎるだろ。
「ちょっとさぁ、俺並んでるから、退いてくれない?」
「ああ?何言って──」
「邪魔だって言ってんの。」
しっかりと、目を見て言う。
こういうのは、ちゃんと伝えないとね?
「てめぇ、ナメてんのか?」
「ナメてんのはどっちだよ。俺は受付で聞きたいことあるんだよ。盛ってんじゃないよ。」
剣呑な雰囲気に気付いたのか、マチオマン様がリサちゃんとの会話を切り上げてこちらへやってくる。
「なんだぁ?てめえ新入りか?ここでのルールを知らんらしいな?」
「お前こそ社会のルール学び直して?嫌がる子無理やり口説いてんじゃないよ。」
「……上等だ。体に教えてやるよ、おらああああ!」
マチオマン様がムキムキな腕を振りかぶり殴りかかってくる。
きっと素のステータスは俺より高いんだろうな。
まあ今の俺は心眼ビンビン人間なので全然余裕で躱せる。
でも多分直撃すると痛い。
ピーキーな性能なんだよ俺は。
とりあえず、こいつのパンチかわしてー。
通り過ぎていくこいつの脇腹軽く殴っとこ。
「そいっ!」
「おごっ!」
脇腹を押さえながらうずくまるマチオマン様。
「て、てめえ!覚えてろよ!!」
「こちらこそー。」
マチオマン様を抱えて帰っていく取り巻きを見送る。
あいつらあれでギルド首になったりしないのかな。
それはそれで問題起こしそうなんだろうなぁ。
なんて考えてたら、受付の方から聞こえるお礼の声。
「あ、あの……ありがとうございます……。」
リサちゃん。
と言っても俺の知ってるリサさんじゃない。
まあ邪神だったしな、あいつ。
このリサちゃんが本物な訳だね。
「ああ、どういたしまして、えっと、聞きたいことあるんだけど、いいかな?」
「は、はい……。私にわかることでしたら……」
うーん、暗い。大丈夫か、この子。
「えっと、レオ・クラインっていう冒険者を探してるんだけど、居るかな?」
「レオ様ですね?毎日来られるのでわかります。えっと、今日はまだ来てないはずなので、多分そろそろ……、あっ、いらっしゃいましたね。」
リサちゃんの指差す方。
ギルドの入り口を振り返ってみると、懐かしのイケメン野郎、レオ・クラインが立っていた。




